連載コラム【音楽のある風景】 Vol.13

2013.05.27

グリーンレーベル リラクシング のBGMを選曲されている、
選曲家の橋本徹さんよりコラム【音楽のある風景】が届きました。
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どうぞお楽しみください!

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5月の選曲は新緑と風、「頬に夜の灯」を感じて
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若葉の頃、新緑の季節。
気持ちのよい天気が続きますが、最近は少し暑いほどですね。
五月晴れ、という言葉も、昔は梅雨の合い間の快晴を指したものですが、
すでに日常の会話・挨拶では飛び交っています。
“今日もいい天気~”という「サザエさん」のフレーズと共に。

選曲の仕事でスタジオに入るときも、普段ならボルヴィックかヘルシア緑茶の僕でさえ、
ライムを輪切りにして冷たいペリエに浮かべたくなるほど。
もちろんそんな気の利いたことはかなわず、昨日はアイスコーヒー片手に夏の扉を開けて、
セレクションに取り組みました。

GWや週末の休日も好天に恵まれ、5月は僕も東京から多摩川を渡り西へ、
神奈川県内ですごすことが増えています。
「気分は5月の風のように」、少し陽に灼けた肌にネイヴィーブルーの麻のボタンダウンシャツを羽織り、
新しいスニーカーをおろす。
そうなると大切になってくるのはドライヴ・ミュージックです。
学生の頃の自作テープのように、佐野元春のマイ・セレクトCD-Rを作ってみたりもしました。
くちずさみソングNo.1は「週末の恋人たち」。
よく聴いていたハイティーンの日々以来30年近く経って、
その曲の一節“波の音だけが週末のConversation”の念願をかなえてみたかったのです。
あのハウス・ミュージックのフロア・アンセムに倣うなら、まさに“Sweetest Day Of May”。
もっとも、興奮や熱狂とは正反対の穏やかな午後を満喫したわけですが。
そう、与謝野晶子のような「五月礼讃」。

先月紹介した『Twilight FM 79.4』や、昨年の夏に編んだ『Seaside FM 80.4』といったコンピCDも、
こうした東京~神奈川を行き来するときに重宝しています。
ご好評をいただいていることに感謝して、次のコンピレイションの選曲コンセプトも、
“アーバン・リゾートFM”に決まりました。
今月だけで横浜・山下公園を3回も訪れている僕は、
思いきってジャケットのモティーフをベイブリッジにしてもいいのでは、と思うほど気持ちが高まっています。
都会的でメロウでブリージンな名曲をたっぷり集めた最高の一枚にする心づもりです。

その次作コンピの構想を練っている最中に思いだした、
自分がかつて手がけた“フリー・ソウル・ドライヴ”シリーズを今回は推薦しましょう。
読んで字のごとく、グルーヴィー&メロウな70年代ソウル周辺アーティストを
ドライヴ・ミュージックという観点で編集したもので、これまでに4タイトルがリリースされています。

その第1弾はミスターAORことボビー・コールドウェルで、
“青い眼のスティーヴィー・ワンダー”というテーマを設けて、
ブルー・アイド・ソウルマンとしての彼の魅力にフォーカスしました。
今のところ最新作であり、僕自身とても気に入っているのはメイズで、
マーヴィン・ゲイと並び称されるリード歌手フランキー・ビヴァリーの、
恍惚とするようなシルキーな歌声を堪能することができます。
ちなみに湘南へのドライヴでは、「Special To Me」「Love Won’t Wait」と軽快にスタートして
大ヒット「風のシルエット」が待ち受けるボビー・コールドウェルを行きに、
人気の「Silky Soul」をハイライトに絶品のメロウ・グルーヴが連なるメイズを帰りに、
カーステレオにセットすることをお薦めします。
特に、夕闇に映えるメイズの「たまらなく、アーベイン」な素晴らしさは筆舌に尽くしがたく、
僕は先日、『Twilight FM 79.4』の惹句にした“灯ともし頃のFMステイション”という言葉を思い浮かべました。

実はこの“灯ともし頃”という響きを僕は最近ひどく気に入っていて(雰囲気のある言葉だと思いませんか?)、
仲間内のちょっとした流行語のようにもなっています。
もともとは吉田美奈子の「頬に夜の灯」の歌いだし“灯ともし頃ならば、街もはなやいで”に
インスピレイションを受けたのですが、浅川マキのアルバム・タイトルにもなっていますし、
ユーミンには「Up townは灯ともし頃」という曲もありますね。
そんな話をしながら、“街の灯がやがて瞬きだす”(「中央フリーウェイ」)とか、
“街の灯りは遠くなびくほうき星”(「埠頭を渡る風」)などと懐かしい歌をくちずさんだりするのが、
夕暮れドライヴのいちばんの歓びなのかもしれませんね。


追記:
この連載コラムの原稿を書きながら今、久しぶりにクレモンティーヌの
『カフェ・アプレミディ』と題したベスト盤を流していました。
サンジェルマンで生まれ育った生粋のパリジェンヌらしい、“午後のコーヒー的なシアワセ”を感じさせてくれる
ボサノヴァ~サロン・ジャズのフィーリングが心地よい名作集ですが、僕の脳裏によみがえったのは、
1999年5月に、アルバム『Couleur Cafe』(制作コンセプトは“シル・ヴ・プレ・ボサノヴァ”でした)の
レコーディングでパリを訪れたときのこと。
彼女の家からほど近い、リュクサンブール公園の脇にあるカフェで、
白い花を咲かせたマロニエの木々の緑を眺めながらランチを楽しんだその時間、
その風景のサウンドトラックとして、これ以上のCDはありません。
カフェオレとクロワッサン、ボーダーのTシャツや籐のバスケットが似合う、フレンチ・カジュアルな音楽。
“Sweetest Day Of May”の記憶、風薫る5月を感じる一枚としても、推薦します!


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5月の選盤

スティーヴィー・ワンダーへの憧憬を映すグルーヴィー&メロウなブルー・アイド・ソウルという視点で
橋本徹さんが選曲した、ボビー・コールドウェルのベスト・コレクション『Free Soul Drive with Bobby Caldwell』
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マーヴィン・ゲイへの憧憬を映すシルキーで官能的なアーバン・メロウ・グルーヴという視点で
橋本徹さんが選曲した、メイズのベスト・コレクション『Free Soul Drive with Maze』
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“午後のコーヒー的なシアワセ”というテーマでフレンチならではの心地よいボサノヴァや
サロン・ジャズを橋本徹さんが選曲した、クレモンティーヌのベスト・コレクション『Cafe Apres-midi』
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橋本徹 (SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。
サバービア・ファクトリー主宰。
渋谷・公園通りの「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。
『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』シリーズなど、
選曲を手がけたコンピCDは240枚を越える。
USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」を監修・制作。
著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。
http://apres-midi.biz
http://music.usen.com/channel/d03/

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