連載コラム【音楽のある風景】 Vol.16

2013.08.27

グリーンレーベル リラクシング のBGMを選曲されている、
選曲家の橋本徹さんよりコラム【音楽のある風景】が届きました。
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どうぞお楽しみください!


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8月の選曲は、潮風がメロウな音の波を優しく包むように。
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南の島への憧れ。
どこか遠くの浜辺で、黄金色に輝く海や夕陽に染められた波しぶきを眺めながら、
何もせずぼんやりとひと夏をすごせたら──30代を迎えた頃から、そんな憧れが僕にはあります。
エンドレス・サマー。
もし実現することができたら、そのときは、いつか読んでみようと思っていた
フォークナーの「八月の光」のページをゆっくりと繰ることもあるでしょう。
果たして今年の夏は…… もちろんそんな夢は2013年もかなうことはありませんでしたが、
シーサイドやプールサイドで仲間たちとDJをしながら、それなりに楽しい日々を送っております。

とはいえ、やはり潮風がメロウな音の波を優しく包むような、
あの誘惑には抗いがたく、音楽でアームチェア・トラヴェルを試みることもしばしばです。
つい先日も、湘南を海沿いにドライヴしながら、
ちょうど10年前にコンパイルした『Free Soul ~ Flight To Hawaii』を聴いていました。
初めてなのに懐かしい風に吹かれるような、
甘やかなソウルとAORがハワイで溶け合ったアイランド・ミュージック。

暮れゆく陽の光や雨上がりの空にかかる虹のように甘酸っぱく切ないマッキー・フェアリー・バンド。
爽やかな潮の香りを含んだ清々しいギター・カッティングも心地よい、
マッキー・フェアリーの歌っていた初期のカラパナ。
頬を撫でる海風に吹かれ颯爽と軽やかに走り抜ける、テンダー・リーフのアコースティックなロコAOR。
その名の通り若々しくフレッシュな、カラパナの弟分のようなグループ、サマー。
目も眩む夕陽のように艶やかなサウンドに魅せられるレムリアは、
この夏はコンピレイションのラストに置いた月明かりの恋のようにメロウなボサノヴァ風味の
「Moonlight Affair」が、特に胸に沁みました。

そう、メロウ・ブリージンなアイランド・ミュージックということでは、
2年前の夏にアプレミディ・レコーズから復刻CDがリリースされた、ルイも忘れてはいけませんね。
どこまでも澄みきった水色に輝く空と海、真っ白に広がる砂浜。
そんな美しいジャケットに映るリゾート・ホテルのラウンジで奏でられる、
まろやかな歌声と柔らかなアコースティック楽器の温もり。
風の匂いや波のささやきがスウィートな瞬間を封じ込めた、旅先からの絵葉書のようなアルバムです。
とりわけ「My Lover」はときめくような名曲。
“She’s my lover, she’s my only woman, she’s very sweet and also mellow...”
── そのシンプルな愛のメッセージに感激し、
僕は自分が結婚することがあったらウェディング・パーティーで流そうと、
初めて聴いた頃から心に決めていたのですが、いまだ実現してはおりません。

そしてもう一枚、マイ・サマー・サウンドトラックを紹介しましょう。
これは11年前の夏に作ったコンピ『Jet Stream ~ Summer Flight』。
涼しげなアートワークも、とても気に入っています。
“ジェット・ストリーム”のシリーズですが、真夜中に限らず聴いてほしい、
朝~昼~夕~夜と夏の一日をスケッチするような一枚です。
川のせせらぎのようにクールなジャズ、親密な女性ジャズ・ヴォーカルにハートフルなメロウ・ソウル、
瀟洒なフレンチ・ボサに胸を打つミナス・サウンド……
フランス語やポルトガル語の曲が多いことも、夏らしさに寄与しているように思います。
個人的なクライマックスは、カサンドラ・ウィルソンによるニール・ヤングの名曲カヴァー「Harvest Moon」。
ノラ・ジョーンズが主演した映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』でも流れたこの曲で、
夏が終わり、中秋の名月を迎える、というイメージです。
“Because I’m still in love with you, I want to see you dance again...”と口ずさみながら。

「Harvest Moon」は、前回推薦させてもらった僕の最新コンピ『Urban-Resort FM 78.4』にも、
プールサイドによるヴァージョンが収録されていますので、ぜひ聴いてみてください。
メロウ&ダビーなこちらは、“Because I’m still in love with you, I want to see you dance again”と歌いながら、
実際に身体を揺らしたくなる感じです。
“今までに経験したことのない”(by気象庁)暑さは峠をこえつつありますが、
僕が『Urban-Resort FM 78.4』に託した風景はむしろこれから。
早く秋服を着てお洒落して街へ、という方も少なくないと思いますが(僕もビールは秋味を解禁しました)、
もう少しの間、過ぎゆく夏を惜しみながら、素敵な音楽と共にすごしましょう。
キャンプ最後の日のキャンプファイヤーを大切にするような気分で。


追記:
先週末、友人の墓参りに行ってきました。
直前の選曲の仕事で、Chris Schlarbというアーティストが最近カヴァーした(歌っているのはスフィアン・スティーヴンス)
「’Til I Die」を聴いたばかりだったからか、ふとビーチ・ボーイズ(ブライアン・ウィルソン)の
「Your Summer Dream」が頭に浮かびました。
「君のクルマで海までドライヴするんだ」「君の夏の夢をかなえるんだ」
昨年9月のこのコラムにも書きましたが、歳をとって、
彼らの初期の無垢なバラード(ラヴ・ソング)に惹かれるようになりました。

その夜は、映画「風立ちぬ」を観ました。
実はスタジオジブリの作品を観るのは初めて。
久しぶりに、軽井沢に行きたくなったのは、僕だけでしょうか。
他の人にはわからない♪
「ひこうき雲」の一節が沁みてきました。
生と死について考えた夜でした。


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8月の選盤

グルーヴィー&メロウ・サマー・オブ・ラヴというテーマで、
甘く爽やかなハワイの風を感じさせるAOR~ソウル~アコースティック・ポップスを収録した、
ドライヴ・ミュージックにも最適な橋本徹さん選曲のコンピレイション『Free Soul ~ Flight To Hawaii』
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どこまでも爽快な真っ青なジャケットに包まれた、名ラヴ・ソング「My Lover」を含む
ハワイ産アコースティックAORの至宝、マニア垂涎の的だったオリジナル盤が、
橋本徹さん監修により世界初CD化されたルイ『Lui』
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ジャズ~フレンチ~ボサノヴァを中心に、かけがえのない季節を彩るクール&キュートな珠玉の名作群が、
心地よい夏の風景を集めた写真集のような、橋本徹さん選曲のコンピレイション『Jet Stream ~ Summer Flight』
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橋本徹 (SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。
サバービア・ファクトリー主宰。
渋谷・公園通りの「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。
『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』シリーズなど、
選曲を手がけたコンピCDは240枚を越える。
USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」を監修・制作。
著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。
http://apres-midi.biz
http://music.usen.com/channel/d03/

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