連載コラム【音楽のある風景】 Vol.18

2013.10.28

グリーンレーベル リラクシング のBGMを選曲されている、
選曲家の橋本徹さんよりコラム【音楽のある風景】が届きました。
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どうぞお楽しみください!

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10月の選曲は、移りゆく美しい空の色を眺めるように。
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10月、本来なら心地よい行楽シーズンですが、今年は暑い日から寒い日まで天候も不安定で台風も多く、
僕もめずらしく選曲に編集・執筆にと仕事に精を出している感じです。

そこで今回は、できたばかりの僕のコンピレイション『音楽のある風景〜Sunlight to Moonlight』をご紹介しましょう。
これは2009年に春夏秋冬、四季折々に制作してご好評をいただいた『音楽のある風景』シリーズのスペシャル・エディションとなるもので、
HMVからの嬉しいアンコール・リクエストに応えてコンパイルしました。

陽の光から月灯りへ、昼から夕暮れ、そして夜へと時の流れを彩る、
アコースティック・グルーヴ〜メロウ・ブリーズ〜サロン・ジャズの名作が、
ジャスト80分にわたってたっぷり収録されていますので、
移りゆく美しい空の色を眺めるように聴いてもらえたら、なんて思っています。
バート・バカラック/ミニー・リパートン/エリス・レジーナ/ジャヴァンなどの名カヴァーから、
ブラジルやアルゼンチンの至宝までが、きら星のごとく輝いていて、
軽やかな風に吹かれるような幕開きから心に染みるエンディングへと、
音楽で幸福感に包まれること請け合い。
夜の始まりのテーマのような僕には懐かしい80年代ヒット、
ジョー・ジャクソン「Steppin’ Out」のクリス・シュラーブによる素敵なリメイクから、
フランキー・ヴァレンタイン×モニカ・ヴァスコンセロス×DJ Mitsu the Beatsというジャンルをまたいだ
絶品コラボレイションの結晶「Marinheiro So」への流れは、僕の考える最高のメロウネスです。
このパートはぜひ、夜の帳が降りて、ネオンライトがきれいに輝く時間帯に聴いてみてください。

ライナーノーツでは、最近ミシェル・ゴンドリー監督の『ムード・インディゴ』として映画も公開されたばかりの、
ボリス・ヴィアンによる美しくも儚い青春小説『うたかたの日々』がモティーフとなっています。
思い思いの洒落た着こなしでリズムに合わせてステップを踏む、
小躍りしたくなるようなファンタジーにあふれた場面の中で華やかにきらめく“音楽のある風景”。
黄昏の街にイルミネイションが輝きだすと、清々しいグルーヴに誘われて街路樹が色めき立つ。
舞い踊るように通りを行き交う人々の影が大きく空を覆うと、星をちりばめた濃紺の夜が訪れる。
グラスに注がれた黄金色の光は“日々の泡”のように淡く消えてゆく。
夜風に誘われて窓を開け放つと、あふれんばかりの星くずが雨粒のように降ってきた。
そんな文章からも、僕がここに収めた音楽に託したロマンティシズムのようなものが伝われば嬉しいです。

続いてもう一枚、秋の夜長にお薦めしたい、美しくメランコリックなピアノが胸に沁みるコンピレイションを。
それは3年前の秋、紅葉が深まる季節に僕が編んだ『素晴らしきメランコリーの世界〜ピアノ&クラシカル・アンビエンス』。
様々なジャンルから印象的なピアノ曲やクラシカルな室内楽的アンサンブルの曲を選りすぐった作品集で、
研ぎ澄まされた知性と感性が切ない感傷と共に琴線に触れ、
モダンな叙情と詩情をたたえた音の映像美が、ある種のセラピーのように響いてきます。
夢と現実の間のような、意識と無意識の間に染みこんでくる、夢幻の美しさに満ちた音楽。
それは、小学校の音楽室で誰もいない放課後に鳴っていたピアノのような、
あるいはオルゴールのピアノのような懐かしさを感じさせ、ちょっと寂しいような、翳りを帯びたセピア色の心象を優しく慰撫してくれます。
安らかに、穏やかに、余韻と余情、揺らぎと浮遊感、ピアノの残響音と、倍音の心地よさ。
淡々としているけれど、深い情感にあふれているのです。

選曲のキーとしたのは、気が遠くなるほど美しい3曲。
大好きなNujabesの「Reflection Eternal」にかけがえのないインスピレイションを与えた巨勢典子の「I Miss You」はオープニングに。
やはり友人でもある素晴らしい音楽家同士のコラボレイション、中島ノブユキがピアノを弾くCalmの「East Wind」。
尊敬するアルゼンチンのカルロス・アギーレがピアノとスキャットで参加したランブル・フィッシュの「Coda」はラストに。
とはいえ、すべての曲が肌に合う温度感と透明感をたたえた、心を鎮めてくれる不朽の名演ばかりで、
ビル・エヴァンスの「Very Early」を弦楽四重奏にしたクロノス・カルテット、
秋の深夜に相応しいラムチョップの「Autumn’s Vicar」や
トレイシー・ソーンのメランコリー・ワルツ「Oh, The Divorces!」などの歌ものもお聴き逃しなく。
その後とても脚光を浴び、来日公演も実現するようになる、ブラジルのアンドレ・メマーリやデリア・フィッシャー、
アルゼンチンのウリセス・コンティやフアン・ステュワート、
いわゆるポスト・クラシカルの代表として人気を呼ぶゴールドムンドも収録していますので、
ピアノ音楽のニュー・スタンダードが一堂に会した珠玉のショウケースとしてもお楽しみください。


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10月の選盤

大きな人気を呼んだ『音楽のある風景』シリーズのスペシャル・エディションとして登場した、
メロウ・ブリージンでしなやかな多幸感漂う名曲群で綴られた80分間の音楽旅行を堪能できる、
橋本徹さん選曲のコンピレイション『音楽のある風景〜Sunlight to Moonlight』
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「心の調律師のような音楽」をキーワードに、
あらゆるジャンルから胸に沁みる美しくメランコリックなピアノの音色が切なくも印象的な名作を集めた、
橋本徹さん選曲のコンピレイション『素晴らしきメランコリーの世界〜ピアノ&クラシカル・アンビエンス』
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橋本徹 (SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。
サバービア・ファクトリー主宰。
渋谷・公園通りの「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。
『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』シリーズなど、
選曲を手がけたコンピCDは240枚を越える。
USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」を監修・制作。
著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。
http://apres-midi.biz
http://music.usen.com/channel/d03/

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