連載コラム【音楽のある風景】 Vol.25

2014.05.29

グリーンレーベル リラクシング のBGMを選曲されている、
選曲家の橋本徹さんよりコラム【音楽のある風景】が届きました。
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どうぞお楽しみください!

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5月の選曲は、人生の大切な景色がよみがえるように。
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山の緑、海の青も鮮やかな、気持ちのよい天気が続く季節。
気分は5月の風のように、そんな希いと共に、今月も僕の新しいコンピレイションを紹介させていただきます。
もうまもなくリリースされる“架空のFMステイション”を選曲テーマにしたシリーズの最新作、『Folky-Mellow FM 76.4』です。

若き日に感銘を受けた映画や小説の一場面、人生の大切な景色がよみがえるようなアコースティック・ギターの爪弾きとセンシティヴな歌声。
過ぎ去りし日々へのノスタルジアやほのかなセンティメントを静かに呼び起こすピアノにサクソフォン。
遠い渚への海岸沿いのドライヴや、沈みゆく夕陽に染まる黄金色の光景の中で聴きたくなる、
“どんな気分のときにも気持ちがしっくりくる海”(ベン・ワット「North Marine Drive」より)のようなフォーキーかつメロウな音楽。

サブタイトルとした“Brighten My Northern Sky”というフレーズは、夭折した英国の伝説的なシンガー・ソングライター、
ニック・ドレイクの最も光の見える歌だと思う「Northern Sky」から引用しました
(その曲には、大好きなペイル・ファウンテンズの「Palm Of My Hand」というタイトルも登場します)。
演出のイメージは、陰影ゆらめく心模様を優しく彩る、夢幻を思わせるロード・ムーヴィー。
ニック・ドレイクへのトリビュート・ソングが3曲収録され、スコット・マシューズを始め彼を敬愛するアーティスト
(名前もよく似たスコット・マシューはニール・ヤング「Harvest Moon」のカヴァーを選びました)も顔を揃えているので、
その存在がこのコンピの精神的支柱になっているのは確かですが、
同時に、僕にとっての2014年上半期ベスト・ソングがずらりと並んでいることも、特筆しておきたいです。
ウィリアム・フィッツシモンズ、S.キャリー(ボン・イヴェールのメンバーです)、
サン・キル・ムーン、ディグズ・デューク(サンダーキャットの絶品カヴァーを収めました)、
やはりニック・ドレイクを彷彿させるところもある素晴らしいフォーク・ソウル歌手ジェイムス・ティルマン……。

そんな中から一曲、“I like the birds in spring. How about you?”と歌われる
ライアン・ドライヴァー・クインテットの「Birds In Spring」に触れましょう。
ややマニアックな話になって恐縮ですが、初めて聴いたとき、
これはチェット・ベイカーとエリック・シェノー(トロント・インディー・シーンの重要ミュージシャンです)の出会いだ、と感激してしまいました。
“Just dreaming of you. Are you a fantasy? What is reality?”という部分では、つい涙腺がゆるんでしまう切ないラヴ・ソングです
(僕は“fantasy”と“reality”という響きにいつもビーチ・ボーイズの「Disney Girls」を思い浮かべてしまいます)。
“21世紀のスタンダード”と言いたくなるこの曲を含め、胸を打つ名曲がたくさん詰まった
ライアン・ドライヴァー・クインテットのオリジナル・アルバム『Plays The Stephen Parkinson Songbook』は、今はとても入手しづらいのですが、
6/22にアプレミディ・レコーズから日本盤がリリースされる予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください。

もう一枚、先日アプレミディ・レコーズから日本盤が出たばかりの、“アフロ・ブラジリアン・ニック・ドレイク”の異名をとり、
ヨーロッパ各国の音楽メディアでも大絶賛されているバイーア出身のシンガー・ソングライター、
チガナ・サンタナの『The Invention Of Colour』も推薦しましょう。
聴けば聴くほどに胸に沁みる、美しく内省的な翳りを帯びたヴォーカルと、
スピリチュアルな情感に富んだ独特のチューニングを施した5弦ギターのアルペジオ。
僕は一聴して、ジョン・ルシアンやテリー・キャリアーからアグスティン・ペレイラ・ルセーナまで、
愛してやまないアーティストたちを思いだしてしまった、まさに至宝と言える名作です。
『Folky-Mellow FM 76.4』と併せて、ぜひどうぞ!

追記:
今週末は横浜開港祭に出かけようかなと思っています。
友人がアメリカ製トラヴェル・トレイラー“AIRSTREAM”を改造して営んでいる、
移動型カフェ「CAFE Ryusenkei」が象の鼻パークに出店するのです。
野外ですごすのが本当に心地よい季節ですね。
ロー・ボルジェス「Vento De Maio」(五月の風)でも聴きながら、爽やかに、風を感じてきます!


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5月の選盤

ジャズとSSWとポップスが瑞々しくしなやかに交錯し、切なくも安らか、儚くも甘美な、
フォーキー・メロウな名作群が80分にわたって優しく心の殻を溶かしてくれる、
橋本徹さん選曲のコンピレイション『Folky-Mellow FM 76.4』
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カナダはトロントのフォーク/ジャズ系インディー・シーンの重要バンドが、
チェット・ベイカーを思わせる歌とシックかつ進歩的な演奏で、1930〜50年代の古いジャズにインスパイアされたロマンティックな名曲群を聴かせる、
ライアン・ドライヴァー・クインテットの『Plays The Stephen Parkinson Songbook』
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“アフロ・ブラジリアンのニック・ドレイク”と絶賛の声が相次いだ、ブラジルはバイーア州出身の内省的なシンガー・ソングライターによる、
知性と野性が同居する美しい弾き語りと、深い叙情性に満ちた幽玄の響きに魅せられる、
チガナ・サンタナの『The Invention Of Colour』
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橋本徹 (SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。
サバービア・ファクトリー主宰。
渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。
『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』シリーズなど、
選曲を手がけたコンピCDは250枚を越える。
USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」を監修・制作。
著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。
http://apres-midi.biz
http://music.usen.com/channel/d03/

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