連載コラム【音楽のある風景】 Vol.33

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2015.01.30

グリーンレーベル リラクシング のBGMを選曲されている、
選曲家の橋本徹さんよりコラム【音楽のある風景】が届きました。
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どうぞお楽しみください!

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1月の選曲は、胸に沁みる内省的な翳りと心安らぐ静かなグルーヴを求めて。
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冬、今日は東京は朝から雪模様です。
2015年もよろしくお願いいたします。
おかげさまで、前回紹介した『Free Soul Nujabes』が、昨年末から予想以上のヒットを記録していますが(大感謝!)、
今月はコンピレイションの話はひと休みして、いま最も推薦したいアーティストについて書きましょう。

それは、ブラジル・バイーア州出身で、“アフロ・ブラジリアンのニック・ドレイク”の異名もとり、
ヨーロッパ各国の音楽メディアでも絶賛される男性シンガー・ソングライター、チガナ・サンタナ。
深い陰影を感じさせる、聴けば聴くほどに胸に沁みる、美しく内省的な翳りを帯びた歌声と、
静かなグルーヴを宿した、スピリチュアルな情趣に富んだ5弦ギターのアルペジオ。
届いたばかりの新作『Tempo & Magma』は、まさに2015年ベスト候補となる珠玉・至宝です。
 
現在はサンパウロを拠点とするチガナ・サンタナですが、彼は生まれ育った故郷であるバイーア州サルヴァドールで眺めていた大西洋の、
時とともに色が変わってゆく海の情景が、自分の創作に大きな影響を与えていると語っています。
今作の録音のほとんどが、その大西洋のはるか対岸、セネガルのダカールで行われていることに、
ロマンティックな符合を感じてしまうのは、僕だけではないでしょう。
延べ4か月半滞在したというその地で出会ったアフリカのミュージシャンたちと、チガナは毎晩一緒に演奏し、その合間にお茶を飲み、
人生について語り合い、信じられないほど美しい星空のもとで潮の香りを感じたりしながら、
少しずつ互いのことを理解し合って、アルバムを制作していったと言います。
そうした人生におけるとても豊かな体験が、音楽の素晴らしさにも乗り移っている、と僕は感じずにはいられませんでした。
 
弦楽器とパーカッションのアンサンブルを中心に、アフロ・ブラジルのルーツを真摯に探究し、その豊かな水脈を浮き彫りにしたこの名盤に対して、
渡辺亨さんはライナーで次のような讃辞を寄せていますので、長くなりますが、引用させていただきます。
「これはまさしくブラジルとアフリカの架け橋であり、アフロ・ブラジルそのものである。チガナ・サンタナが各曲を録音していたとき、
そこにはさまざまな神々が降臨していたのではないだろうか。それほど霊妙不可思議なフィーリングとパワーが感じられるし、
しかもすべての人類の記憶の古層を刺激するような叙情性と物語性をたたえている。このスピリチュアルな歌の数々は、どこか懐かしく、
聴いていると、心が安らぐ。母なる大地アフリカは、やはりすべての人類にとって母親の胎内のような場所なのだろう。
その意味では、この中のいくつかの曲は、人類のための子守歌のようにも思える」
とにかくアルバムの1曲目、サンパウロ出身の女性シンガー・ソングライター、セウの歌声も魅力的な「Nza」を、ぜひ聴いてみてください。
 
そんな感じで僕はこの冬、チガナ・サンタナの『Tempo & Magma』を毎日のように、
そう、かつてボサノヴァの生みの親ジョアン・ジルベルトを飽くことなく聴いていたように、ヘヴィー・ローテイションしていましたが、
彼の作品は前作『The Invention Of Colour』も、日本盤が昨年アプレミディ・レコーズからリリースされています。
こちらも胸に染み入る弾き語りをベースに、こまやかなパーカッション、弦楽四重奏やピアノ、
西アフリカの弦楽器コラの幽玄な響きが美しい叙情性を奏でる名作で、“色の創造”というアルバム・タイトルが示すように、
静寂のエレガンス=モノトーンと、鮮烈なスピリチュアリティー=豊かな色彩が魂を揺さぶります。
白いジャケットを開くと、赤と青を中心としたヴィヴィッドなカラーリングが広がる、CDのアートワークのように、
静かに心を打つメランコリーと鮮やかなパッションを感じていただけるはずです。
 
この夏には待望の来日公演も実現しそうなチガナ・サンタナ、彼の名前はこの機会にぜひとも憶えておいてください。
ニック・ドレイクはもちろん、ジョン・ルシアンやテリー・キャリアー(そう、Free Soul好きの皆さんにも聴いていただかなければ)、
アルゼンチンのカルロス・アギーレやアグスティン・ペレイラ・ルセーナなどのファンの方にも、おすすめです!


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1月の選盤

美しい翳りを帯びた内省的な歌声と、独特のチューニングを施した5弦ギターの豊かな響き、
ブラジル・バイーア州出身で“アフロ・ブラジリアンのニック・ドレイク”とも絶賛される男性シンガー・ソングライター、
チガナ・サンタナの2014年録音最新盤となる2枚組傑作アルバム『Tempo & Magma』
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2012年にスウェーデンのストックホルムで録音され、ニック・ドレイクを彷彿させると讃辞を寄せられるきっかけになった、
アフロ・ブラジルの自然観や生命観に根ざした音楽の心安らぐ静謐な叙情性が胸を打つ、
チガナ・サンタナの名作アルバム『The Invention Of Colour』 
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橋本徹 (SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。
サバービア・ファクトリー主宰。
渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。
『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』シリーズなど、
選曲を手がけたコンピCDは270枚を越える。
USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作。
著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。 
http://apres-midi.biz 
http://music.usen.com/channel/d03/

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