『 ファッションとは自由で楽しいカルチャー 』

栗野 宏文 MEN WOMEN

2017.01.04

新しい年となりました。本年もユナイテッドアローズ(UA)をご愛顧頂けますよう宜しくお願い申し上げます。


さて個人的なことで恐縮なのですが今年で業界歴40年となります。人生の約六割をファッション小売業界で過ごしてきたことになりますが、お陰様で現在も仕事が面白く、日々楽しく、また何よりも《洋服を着る/お洒落する》ことが好きでいます。


■精神状態はサイズ選びや流行色に影響する

《お洒落をする》というのは単に《洋服を着る》以上のことでしょう。《洋服》というモノと向き合い、自分に似合うかどうか、自分がどう見えるのか、を考えます。《服と向き合う》ポイントは素材・色・デザイン・価格そしてフィッティング。服選びが身についてきたかどうかのジャッジ・ポイントは《サイズ》選びによるところが大きく、自分に適した《サイズ》を把握すると買い物がスムースになりますが、関連して奥深いのがフィッティング。特に男性の服装においてのパンツ丈は《生命線》とも言われます。主に靴を履いてパンツ丈を決めますが、長めが美しい場合もあれば短めが格好良い場合もあり、こうして試行錯誤を重ね、パンツに限らず様々なアイテムで《私のベストバランス》を確立していきます。

ところが時代ごとに《お洒落に感じるサイズ感》も変化するのです。僕の場合、昨年位から1サイズ、もしくは2サイズ・アップが《イイ感じ》となってきました。以前はジャケットやスーツの場合46(イタリア表記)が丁度良く、時には44も着ていましたが直近では46もしくは48、場合によっては50を選んで着たりしています。
それが《時代感》だと思うのです。


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この時代感は社会潮流と不可分です。現在の日本及び世界には様々な問題があり、けして《平和》な気持ちだけではいられない訳ですが、服装とは《環境への反応や対抗》であり、時には《問題解決》でもあるので緊張に抗って、せめて《着る気持ち》だけでも余裕を持ち、リラックスしていたい、という精神状態が前述したサイズ選びなどにも影響しているのではないでしょうか。
流行色も同様です。今シーズン、所謂《暖色》を多く見かけます。レッド、ブラウン、バーガンディ、ブリックの様に《暖かい色》......それは《シャープに黒を着たい気持ちでは無い》時代だからと分析しています。

また、ピタピタにフィットしたサイズ感よりも、やや大き目、時にはユーモラスな程大きいシルエットが提案されている背景には《和的な要素の受容》もある気がします。和服的なバランスやゆとり、或いは《渋い》色目は、永年《西欧服》を着続け見慣れてきた現代日本人には新鮮なのかも知れません。


■ファッションは問題や困難に対応し得る存在

そして《ジェンダレス》。この概念や言葉は性差を超えた《着方》の要素理解に有効なキイ・ワードであり、近年のファッション潮流で頻出しているものです。多様化する女性の積極的社会参加の一方で、育児や家事に専念する男性の増加傾向、或いは攻撃的なアティチュードよりは《和を尊ぶ》考えや行動が従来的な《男らしさ・女らしさ》に影響し、変化を与える......。これは現代フランスにおける《日本ブーム》の背景でもあると言えます。宮崎駿と村上春樹を熱狂的に支持し、そこから伝統的な日本文化にまで興味の対象を広げているフランス人は自国の精神文化へのアンチテーゼやアンチドート(解毒剤)として、或いは《良きフランス文化のエスプリ》との共通項として日本文化を見ている、と言われます。

これらは全て《ファッションを支える社会潮流》です。僕や、これを読んで下さっている皆さんは意識/無意識にバーガンディのニットや太めのコットン・パンツや大き目のマウンテンパーカやドロップ・ショルダーのコート等を選んでいる訳ですが、その背景には今回述べてきた様な《理由》が影響しています。

2017年も世界には問題や困難が待ち構えています。そしてファッションはそれに対抗し得る存在だと信じます。


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昨秋、UAグループのH BEAUTY&YOUTHのチームが現在パリ・コレクションで最も勢いのある新進ブランド<KOCHÉ(コシェ)>を招いて原宿の路上でショウを敢行しました。商店街というロケーション、主に街頭でキャスティングしたモデルは男女混合、着る服は2016年・秋/冬と2017年・春/夏のミックス、一般の方も観覧可能......と《初めて尽くし》のショウは予想以上の大反響を巻き起こしましたが、何故、それほどポジティヴに受け止めて頂けたのか? と言えば、そこに《ファッションの楽しさ》《ファッションの自由》が満ちていたからでは無いでしょうか。


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ファッションが自由で楽しく人を豊かにしてくれる《カルチャー》であることを認識し、その為の存在として継続/進化させ続けよう、と自戒もこめて僕は決意しています。

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