前シーズンで日本のブランド〈Nvy by〉とコラボーレションした際、石川県能美市の〈小松精練〉の新素材を使ったコレクションを作りました。小松精練は数多くのトップメゾンにも素材を提供している世界的な合繊テキスタイルメーカーなんです。ストレッチ感・反発感があり、同社独自の特殊加工でシボ感・シワ感・膨らみを出し風合いに特徴ある生地で、他にはない素材感に強い魅力を感じて、今回も同じ生地を使って新たなコレクションを作りました。

まず意識したのは、家でも着られて、そのままレストランにも行けるくらいレンジが広く無駄のないデザインで、一週間に3、4回くらいレギュラーとして着られるような服にしたいということ。そのために、現代のリアルなライフスタイルに合った“イージーケア”という面は外せないと考えましたが、それで品質を落としてしまっては意味がありません。繰り返し着ることで生地が伸びて膝が出てしまったり、乾燥機にかけた時にパッカリングが出たりしないよう、何十種類も素材のテストをして、結果的に前回使った生地がベストという結論に至りました。

実のところ、常に新しいクリエイションを求められるデザイナーとしては、素材をまったく変えないで作るのは勇気がいることです。だけど、やはり形状保持性が高くシワが寄らず、微起毛のマットな手触りがあり、美しいドレープが出る、これだけ魅力のある生地はそうありません。自分のブランドでも使いたいくらいですね。

デザインに関しても、やはりこの生地の良さを生かすよう、あまり突出させないで、色味や丈感、フォルムなどの微妙な調整を中心に行いました。いわゆる「見せる服」とは異なる、シンプルなものだからこそ難しいのですが、トライアルを繰り返し、「首周りのリブはどれくらいの詰まり具合にするか」、「身体に当たって違和感のある部分を調整できないか」などスタッフの方々とじっくりディスカッションを重ねながら徹底的にディテールを詰めていきました。結果的にすべて同じ素材で8型、ブラックとチャコールだけという厳選したコレクションになりました。

そもそも僕は普段、自分のブランドでは素材ありきでデザインを考えることはなく、自分なりにストーリーを考えてものづくりするのが好きなので、こうした生地から発想してデザインするのは通常とは異なるプロセスで、とても新鮮でした。これだけひとつの素材にとことん向き合って、徹底的にアプローチを模索し、追求して作り上げた完成度の高いラインナップなので、ぜひ手にとって見て、触って、感じてほしいですね。

素材に徹底的に向き合って作り上げた、一週間に3、4回着て欲しい服。