
5年目の〈TÉGÊ UNITED ARROWS〉、今とこれから
アフリカ文化に根付いたクラフツマンシップと、ユナイテッドアローズのデザインアイディアの融合を体現したレーベル〈TÉGÊ UNITED ARROWS(テゲ ユナイテッドアローズ)〉は、2019年でデビュー5年目を迎える。同レーベルを立ち上げた、クリエイティブディレクション担当 上級顧問の栗野宏文に、この取り組みを続ける意味と、これからについて尋ねた。
継続は力なり
2013年にレーベルを発表。2014春夏シーズンから製品をリリースした〈TÉGÊ UNITED ARROWS〉は、毎年新しいアイテムを発売し、今年で5年目を迎えています。国連機関であるInternational Trade Center(http://www.intracen.org/)のプロジェクトEthical Fashion Initiative(以下EFI)のポリシーや取り組みの社会的意義に共感してスタートしましたが、毎年少しずつお客様からの支持も増えているように感じます。
『NOT CHARITY, JUST WORK』をスローガンにしているとおり、これはチャリティのような一過性のものではありません。雇用を安定させるために継続させることが大事な取り組みですですから、「続ける」ために思い切ってレーベル化したのがはじまりです。長年やることで、現地の生活を改善することに少なからず貢献したいという趣旨です。
毎年EFIよりインパクトアセスメントのリポートをもらっており、ここには自社が現地職人の生活に与えた影響などが記されています。たとえば2018年にはウィメンズのイヤリングとバッグを全部で85人の職人が制作しましたのですが、これに対して「全員が、彼らの労働条件・収入と環境に満足」「23%の職人が収入の一部を学校に支払った」「77%の参加者がスキルアップのためのトレーニングを受けた」「定期的な収入により健康を維持することができた」「病気にかかったという報告は9%で、彼らも公衆衛生施設での治療を受けることができている」などの、かなり具体的な報告を受けています。
ビジネスとして大きくなっているかどうかはまだまだとして、現地女性の社会進出をはじめ、教育環境や健康状態の向上に貢献できていることを実感すると、やはり『続けないと』と思いますね。そして、パートナーとなる地域の人達にとっても意味のあることになっているということを聞くと、それだけで心底嬉しくなってきます」

「本当にいいもの」を守る
「冒頭に述べたように、継続することがこのレーベルの大切なことだと思っています。こういった取り組みをスポット的に行う企業やブランドはありますが、継続的に行っている日本の企業はまだまだ少数です。
これは『本当にいいもの』だから続けられる、と信じています。いいものであるからこそ、売り手である我々も、買い手であるお客様も喜べるし、そして当然現地には継続した雇用が生まれて、現地の人たちにも喜んでいただけます。ブルキナファソの手織りのカルチャーをはじめ、こうした『本当にいいもの』が消えてなくならないためにも、ユナイテッドアローズはこの取り組みを続けていきたいと思っています。
現在はケニアやブルキナファソが中心ですが、アフリカに限らず他の地域で〈TÉGÊ UNITED ARROWS〉のアイテムが作られることもあるかもしれません。ファッションを通じた協業と支援ができ、そして地域のカルチャーを守るという目的であれば、すぐに手を組みたいと思っています」

2019年春夏シーズンは、今までで最もトラッド
「最後になりますが、今シーズンのアイテムをざっと紹介しておきましょう。シーズンごとにメンズ・ウィメンズを交えていろいろなアイテムを手がけてきましたが、2019年の春夏シーズンで提案するのは、テーラードジャケットとパンツが中心になるトラッドなアイテム群です。ユナイテッドアローズのお客様に好まれるテイストにして、多くのかたに着ていただきたいと思い考えました。
生地はもちろんブルキナファソの職人の手によるもの。英国ツイード等のサンプルからリクエストした柄を、現地の職人は見事に再現してくれました。この手織りの生地を、ユナイテッドアローズのスーツを手がける日本の工場に持ち込み、丁寧に作りました。
明暗のコントラストが美しい綾織と、力強さを感じるハウンドトゥースの生地を使い、ジャケットとパンツのセットアップを用意しました。さらに、太いストライプのジャケットと、チェックのカーコートも揃えています。手織りならではの風合いと色柄が特徴的で、どこにも無いユニークなアイテムができました。コットン素材なので、シーズンを問わずたくさん着ていただきたいですね。
今シーズンもアイテム数は多くないですが、ぜひ多くのかたにさまざまなカルチャーやクラフツマンシップを、〈TÉGÊ UNITED ARROWS〉のアイテムから体感してほしいと思っています。そして同時に、その背景に職人さんたちの生活向上に貢献できているという事実があることを、みなさんの心に残してほしいのです」
