UA流ドレスアップ。

「今の時代にスーツを着るならどんなスタイリングで着ます?」という質問から生まれたルックブック企画。挑戦者は、メンズバイヤーの豊永譲司。旬な素材や色合わせ、そしてUA流の着こなしのテクニックなど、今の時代のムード感もふんだんに詰め込んだ7ルックを紹介。

Dress well by George Toyonaga
Chief Buyer

Dress well by George Toyonaga
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「今回私からお勧めする7ルックは、こんなワードローブだったら素敵だなということも意識して、スーツやジャケット自体が持っているキャラクターが異なるものを選んでいます。秋冬シーズンというのが前提にありますが、社会人として持っておきたい、たとえばプレーンなネイビースーツのような基本的なもの。さらにはビジネスでは着なかったとしても友人の結婚式や特別な日のディナーなど、祝いごとの場所などで映えるもの。つまり、ベーシックなものから、少し癖のあるものまでを、今どのように着ると新鮮に見えるだろう? 今の時代にあったムードで着られるだろう? ということを考えてスタイリングをしています」



半年前からずっと着たいと思っていた
グレーフランネルスーツスタイル

「スーツの定番であり究極と言っても決して過言ではないのが、グレーフランネルです。6ボタン下一つ掛けのダブルブレスト仕様はメンズクラシックを強く感じる、私も強烈に憧れているスタイルの一つです。特に今年に関しては、半年前から『今年の秋は、グレーフランネルをとにかく着たい』と思っていました。フランネルという生地が与える特有の“温かみ”や“知的さ”を感じるテクスチャー、“スタイリッシュ”な無彩色のトーン。気分はさながら“グレーフランネルマン”なわけです」

「まずはジャケット。1930年代のような雰囲気を感じさせる深めのVゾーンが、男性の色気を強調してくれます。形はこのようにクラシックなのですが、生地は平織にしていてフランネルの中では軽い仕上げになっています。また、ナチュラルショルダーで着やすい仕様です。さらにパンツは、サイドアジャスターになっていてウエストまわりをスッキリと。
秋や冬という季節に映えるフランネル。最近、インフラ整備や温暖化などの影響もあってか、“季節感”を感じるスタイルが少なくなりつつあるのかもしれません。しかし、こうしてフランネルのスーツやシャツ、そしてネクタイを身にまとうと、季節に応じた装いをしている気分が高まり、心が豊かになる感覚があります。これもまたファッションの楽しみ方のひとつですよね」

<ユナイテッドアローズ>のスーツ¥90,200シャツ¥15,400タイ¥13,200、<フラテッリ ジャコメッティ>のローファー¥107,800 その他本人私物



パワフルに仕事を楽しむ
ストライプスーツスタイル

「知的で誠実な印象の強いネイビーのピンストライプスーツ。僕の中では、ビジネスといえば、“ピンスト”というイメージがありますし、実際“いざ!”という時の着用率が高かったりもします。面白いのが、ストライプの幅が広ければパワフルに見え、幅が狭ければ狭いほどドレッシーに見えたりと、印象が大きく変わるんです。

そして今回着用したスーツは、どちらかというと真面目な印象を引き立たせるピンストライプの幅。イメージは1987年に公開した『ウォール街』に登場する投資家たち。いわゆる刺激的なマーケットの中で、パワフルに仕事を楽しむ証券マンですね。こんなドレススタイルで、バリバリと仕事を楽しみたいですよね。合わせは、クレリックのタブカラーシャツでネクタイはシャツに対してワイド幅のレジメンタルタイ。ジャカードではなくプリントのタイを選ぶことで、堅くなりすぎず、華やかで軽い印象になります。ノットを小さく結ぶことでエレガントかつ、小粋なスタイルに。

<ユナイテッドアローズ>のスーツ¥74,800、<ソブリン>のシャツ¥19,800、<ホリデー&ブラウン>のタイ¥17,600、<ジョンロブ>のシューズ¥192,500 その他本人私物



とことん色を楽しむ
エキゾチックスタイル

これはエキゾチックなイメージのスタイリングです。最も“自分らしい”コーディネートと言ってもいいのかもしれません。ネイビーやグレーのスーツとは異なる“合わせ”を楽しむことができるのが、今回のようなカラードスーツの良さです。このスーツはフォレストグリーンと呼ばれる濃いめのグリーンになります。シャンブレーのように経糸と緯糸に異なる色の糸が使われているため、光の当たり方によって見え方が変化するすごく表情が豊かな生地です」

「カラードスーツを着るときにも、ポイントになるのはドレススタイルの基本の色使いです。色数や全体のコントラストを抑えながらも、ドレスクラシックの中にあるワインレッドやグリーンなどでまとめることで、品よくエキゾチックなムードが演出できます。たとえばネクタイも、クラシックなペイズリー柄ですがすこし大きめな柄が今季は新鮮に映ります。柄の中に単色では取り入れるのが難しそうな綺麗な水色が入っていて、この色ひとつでとてもモダンな印象に見えると思います。実はこのネクタイはかなりお気に入りなんです。自由にスーツを着こなすなら、このような色柄の楽しみ方をぜひ味わって頂きたいと思います」

<ユナイテッドアローズ>のスーツ¥90,200タイ¥13,200、<ディストリクト>のシャツ¥20,900、<グイド>のシューズ¥36,300 その他本人私物



季節感を堪能する
ガンクラブチェックの
スポーツジャケットスタイル

「ドーメル社に別注したガンクラブチェック生地を使用したスポーツジャケットです。季節ごとに旬なものを食べたくなるように、過ごしやすい秋になると着たくなるのがガンクラブチェックなんです。このコーディネートは、2で紹介したパワフルに働くスーツスタイルとはある種逆で、ルーツ的にはカントリージェントルマンですが、落ち着いて働きたい日のためのスタイルです」

「ガンクラブチェックのジャケットといえば、ツイードをイメージされる方も多いと思いますが、このジャケットはウールカシミヤを使用することで、上質で柔らかい肌触りになっています。上下合わせるスーツスタイルではなく、このようなジャケパンスタイルはコーディネートの自由度も高く、よりファッション的な楽しみも広がります。
私が特にこだわったのが色合わせです。たとえばシャツは、白ではなくベージュを選びました。そしてパンツには、温かみのあるオフホワイトのモールスキンパンツを合わせています。今回の7つのスタイリングの中でも、最も“優しく”見えませんか?コーディネートを考える上で、とても重要なのが色合わせです。色は自分の気持ちも変化させますし、選び方や合わせ方で相手にも異なる印象を与えます。スタイリングの質問を頂くことも多いのですが、テイストやシルエットと同様に色の組み合わせについてもお応えするようにしています。自分の好きな色や自分に似合う色、あるいは色が与える印象を知ることでスタイリングすることが楽しくなったり、新しい自分に出会えるきっかけになったりすると思うんです。」

<ソブリン>のジャケット¥132,000、<ディストリクト>のシャツ¥20,900<ユナイテッドアローズ>のトラウザーズ¥18,700、<ニッキー>のタイ¥17,600 その他本人私物



男の色気を引き立たせてくれる
ピークドラペルスーツスタイル

「プリンスオブウェールズ柄から感じる血筋の良さに、2ボタンのピークドラペルという華やかさ。クラシックさとモダンさが美しく交差するこのスーツは、まさにメンズドレススタイルの色気です」

「スーツ自体が持つ色気と存在感を最大限に生かすために、スタイリングはモノトーンでまとめました。薄いグレーのタブカラーシャツと繊細な組織感のあるブラックタイ、靴はストレートチップ。ストイックにまとめることで、自分の姿勢すらも正してくれるような心地よい緊張感がでます。いまはなかなか機会がないかもしれませんが、パーティシーンなどにもおすすめのスタイルです。ぜひジェントルマンな立ち居振る舞いと合わせてスタイリングしてもらいたいです」

<ソブリン>のスーツ¥132,000シャツ¥19,800、<ジョンロブ>のシューズ¥192,500 その他本人私物



ユニフォームをあえて楽しむ
一癖あるスタイル

ネイビーのジャケットにグレーパンツの合わせは、どんなシチュエーションに直面しても通用するコーディネートです。一見、優等生のような着こなしに見えるかもしれませんが、細かい部分に学生が校則を破る程度のハズしを入れてみました」

「ドーメル社に別注したウールカシミヤで、着心地は軽く、肌触りも滑らかなジャケット。このジャケットに合わせるパンツですが、セオリー通りにいくのであれば、グレーフランネルを選ぶところですが、風合い豊かなホームスパンのサイドアジャスタ―パンツを合わせています。さらにネクタイはシルクジャカードではなく、ウールの三つ巻きのタイでV ゾーンに軽さを演出。そして足元はローファーで、Vゾーンに合わせて軽快な印象に。一見オーセンティックなスタイルに見えるのですが、由緒正しいドレススタイルに敬意を払いつつも、ルールに囚われることなく各アイテムの選びかたに時代性を反映したところに、UAらしさを表現したスタイルです」

<ソブリン>のジャケット¥132,000、<サルヴァトーレ ピッコロ>のシャツ¥31,900、<フラテッリ ルイージ>のタイ¥17,600、<ロータ>のトラウザーズ¥68,200、<クロケット&ジョーンズ>のシューズ¥88,000 その他本人私物



誤魔化しが効かないからこそこだわりたい
ウールサージのネイビースーツスタイル

「ネイビースーツに、ブルーシャツ、英国由来のペイズリー柄のネクタイと、ある意味スタンダードなスタイリングですが、ユニフォームとしてのスーツが失われつつある今日だからこそ。王道なスーツをセオリー通り着こなすことのかっこよさを改めて実感できるスタイルです」

「ネイビーの無地という極めてシンプルなスーツを選ぶ際に気をつけたいのが、そのシンプルさがゆえに誤魔化しの効かないということです。ですから仕立てはもちろん生地にもこだわりたい。このスーツに用いられている生地はオーストラリアのタスマニア島を原産地とするメリノ種の羊毛でつくられているため、自然な光沢を放ち、ソフトな肌触り。上質なネイビースーツです。
スーツやジャケットを普段からお召しになられている方からすれば、刺激の少ないスタイリングのように見えるかもしれません。しかしだからこその安心感がある。伝統的な着方を拠り所にしたスタイルは時代に左右されない良さがあります。このような原点回帰をするのも、今だからこそのドレスアップスタイルだと思います」

<ユナイテッドアローズ>のスーツ¥74,800 、<ホリデー&ブラウン>のタイ¥17,600、<フラテッリ ジャコメッティ>のシューズ¥107,800 その他本人私物

Profile

豊永譲司

ユナイテッドアローズメンズバイヤー。1983年生まれ。2010年からディストリクトのアシスタントバイヤーとして国内外をバイイングで飛び回る。2013年から現職に。ディストリクトでの経験も相まって、ジャンルを横断したセンスでドレススタイルを追求する。