CROCKETT & JONESシューズ

行雲流水の靴作り

英国ブランドは頑固一徹な硬派さが魅力ですが、セレクトショップとしてのものづくりにおいては、時にそれがハードルとなることもあります。小さなパーツの色ひとつ変更するのに、年単位にわたる交渉が必要だった……なんてケースも珍しくありません。そんななかで、クロケット＆ジョーンズは異例といえるほどの柔軟性を備えたブランドです。
英国靴の聖地ノーサンプトンに誕生して140年あまり。これだけの歴史を誇りながら、時代の流れと顧客の声を常に汲み取り、毎シーズン実に多彩な提案を行える背景には、同社が過去、さまざまなブランドの靴作りを手掛けてきた実績があります。自社のネームバリューを確立したあともそのノウハウを捨てず、時代性の表現に活かしてきたからこそ、英国では極めて稀有な柔軟性を育んでこられたのです。
とはいえ、ただの何でも屋には決して成り下がらないのが同社の誇り。ブランドの信念に添わない注文には毅然として「NO」と言ってきます。だからこそ、変幻自在に姿を変えつつ、常に“クロケット＆ジョーンズらしい”靴に仕上がるのです。英国流のプライドを常に持ち続けながら、行雲流水のごとき靴作りを行ってきたクロケット＆ジョーンズ。今や本格靴における大河となって、業界を牽引しています。

（TEXT＝小曽根 広光）