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Jiro Adachi
Creative Director
モカシン

Text Mikiya Matsushita
Photography Naoto Usami


Published August 27, 2021

Text Mikiya Matsushita
Photography Naoto Usami

Published August 27, 2021

「精神的な若さと永続的な美」。伝えたかったものはスタイルではなくメッセージだった。1冊の写真集をきっかけにそれまでとは全く違う方法でカジュアルスタイルを再定義したのは“ジェリーさん”と親しまれる足立二郎さん。ドレススタイルをメインに提案していたUNITED ARROWSから派生したスポーツレーベルUNITED ARROWS BLUE LABELの創設に携わり、その後BEAUTY&YOUTHのディレクターとして長きに渡り活躍。洋服の世界の中心地にいながらあくまででそれを俯瞰的に捉え、ファッションとしてのアウトプットがされるまでのソーシャルマインドに常に興味の矛先を向けた。部屋にはジャンルも年代も異なる、社会の歪みが反映されたアートやレコード、書籍がところ狭しと並ぶ。UNITED ARROWSを退職した現在でも、ジェリーさんが残した‘‘アティチュード’’を追求する姿勢はスタッフたちに脈々と受け継がれている。

Shirt, Kelly, ESPOIR ¥22,000   Item No.1211-599-7790
Shoes, Beige, G.H.BASS×BEAUTY&YOUTH ¥20,900

ジェリーさんの自宅兼アトリエの壁には、KAWSやDISKAHのアート、John LennonとOno YokoのキャンペーンポスターなどジャンルレスでもBEAUTY&YOUTHらしいアイテムが並ぶ。

Shirt, Kelly, ESPOIR ¥22,000   Item No.1211-599-7790
Shoes, Beige, G.H.BASS×BEAUTY&YOUTH ¥20,900

「今でもたくさんの本を読みます」とジェリーさん。手にしたのは、コロナ禍の現在と照らし合わせる『風の谷のナウシカ』。書籍や写真集、マンガに雑誌とその興味の幅はとても広い。

Shoes, Black, G.H.BASS×BEAUTY&YOUTH ¥20,900

ローファーと並び<G.H.BASS>の名品として知られる「レンジャーモック」をベースに<BEAUTY&YOUTH>が別注。レンジャーが野山で履く為の靴を指しており、ラグソールを使用することで、タフで耐久性と快適な履き心地を実現させた。

Polo shirt, Black, LACOSTE×BEAUTY&YOUTH ¥19,800
Shoes, Black, G.H.BASS×BEAUTY&YOUTH ¥20,900

<BEAUTY&YOUTH>が<LACOSTE>に別注したポロシャツはビッグサイズに変更することでよりラフなスポーティーさに。

Sweater, Dark Green, BEAUTY&YOUTH ¥11,000
Shoes, Beige, G.H.BASS×BEAUTY&YOUTH ¥20,900

DJとしてプレイすることもあるほど、音楽に精通しているジェリーさん、ターンテーブルの奥には、壁を埋め尽くすほどのレコードたちが並ぶ。

Sweater, Dark Green, BEAUTY&YOUTH ¥11,000
Shoes, Beige, G.H.BASS×BEAUTY&YOUTH ¥20,900

レコードのようなアナログの良さとストリーミングのようなデジタルの良さ、双方から音楽にアクセスするようになったことで、ジェリーさんの音楽の楽しみ方はさらに大きく広がった。

Shirt, Red, ESPOIR ¥22,000   Item No.1211-599-7790
Shoes, Black, G.H.BASS×BEAUTY&YOUTH ¥20,900

自転車ひとつとっても個性を出すのがジェリーさん流。自らでカスタムした自転車のサドルには交通安全のお守りがぶら下がっていた。

Shoes, Black, G.H.BASS×BEAUTY&YOUTH ¥20,900

<G.H.BASS>の「レンジャーモック」をベースとした<BEAUTY&YOUTH>の別注はアッパーをスエードに、シューレースやソールもアッパーに合うカラーに変更し、全体的に同系色のワントーンで仕上げている。ボリュームがありタフな印象を感じさせつつ、どこか品の感じられるデザインが今の気分ともマッチする。

Shirt, Kelly, ESPOIR ¥22,000   Item No.1211-599-7790
Shoes, Beige, G.H.BASS×BEAUTY&YOUTH ¥20,900

「スポーティーなアイテムと普遍的なシャツを合わせるのが最近の気分です。」とジェリーさん。<ESPOIR>のシャツにショーツを合わせたスタイルはBEAUTY&YOUTHを体現するような着こなしだった。

Interview with Jiro Adachi

Q:ジェリーさんはUNITED ARROWSの創立に関わり、さらに2006年にスタートしたレーベル“BEAUTY&YOUTH”の名付け親であると聞いています。その由来を教えてください。

A:BEAUTY&YOUTHはその名の通り「精神的な若さと永続的な美」という言葉をコンセプトにしています。UNITED ARROWSの栗野宏文さんと出張で海外を飛び回っていた時にお互いが偶然好きだった、ブルースウェーバーの『オー・リオ・デ・ジャネイロ』という写真集の話になったんです。それは彼の二冊目の写真集でブラジルのリオデジャネイロに住む若者たちの身体性を美しく捉えた写真集。しかしかつての“写真集”というものとは大きく違い、編集や紙質、技法全てが新しかった。それを改めて見ていた時にBEAUTY&YOUTH(精神的な若さと永続的な美)という言葉が出てきました。『オー・リオ・デ・ジャネイロ』には多様性やジェンダー性の主張がありました。今でこそ、認知されていますが、約40年前にすでにそういったことが詰まっていたんです。

Q:つまり“BEAUTY&YOUTH”というのは、スタイルの話ではなく、人の本質みたいなところなんですね。

A:そうです。人間が本来持つ美しさです。今考えると、当時まだ洋服屋の世界があまり成熟していなかった。だからUNITED ARROWSがやろうとした、‘‘スタイルではなくメッセージを売る’’ということは、当時、アメカジ全盛期のマーケットにおいて、少し異質な取り組みだったのかもしれないですね。

Q:具体的なスタイルの話も聞かせてください。BEAUTY&YOUTH(当時のブルーレーベル)が目指していたものとはどんなものだったのでしょうか?

A:当時、日本はカジュアルといえばアメカジの時代でした。しかし僕たちが目指したのは今でいうドレスとカジュアルの間の装いでした。例えばボタンダウンシャツ。ボタンダウンシャツというアイテムは当時ドレスの売り場で買うものだったんです。しかし、それを僕たちはカジュアルなスタイルに落とし込みたかった。ギンガムチェックのオックスフォードシャツを別注で作ったりして、生地や柄に工夫を凝らしたわけです。今考えても、ギンガムチェックにオックスフォードという柄と素材のミックス感が、とてもBEAUTY&YOUTHらしいんです。

Q:ドレスとカジュアルの境目を新たに定義したんですね。

A:当時はなかなか受け入れられなかったんですよ。カジュアルかドレス、二つの極端なものしかなかった。今はファッションにも多様性がありますが、あの頃は自由さがなかったんです。

Q:UNITED ARROWSを退社したのちに2009年にはビアティチュードを、後にはエスポワールというレーベルを立ち上げています。長い間、洋服に関わる者として大切にしているモットーのようなものはありますか?

A:なるようになると思っています。ただ、デザインや打ち出しを考える時には、社会とのリンク、ソーシャルマインドを常に意識しています。社会の気分はずっと変化し続けるものですから、こちらもそれを感知するセンスのようなものをずっと磨き続けないといけません。なので、まずは社会的な関心を持つことから。普段光の当たらないものに目を向けて関心を持つ。ファッションはそういうことの最終的なアウトプットです。流行を追ってもそれは結果論でしかありません。

Q:ソーシャルマインドはどのように感知するのでしょうか?

A:本を読むことはもちろん、社会の動きが反映されやすいのが音楽やアートだと思います。商業ベースのプロダクトよりも、アートや音楽、本は、その当時の社会の状況を掴みやすいんです。

Q:それゆえにこんなにジェリーさんの家には、アートピースやスカルプチャー、レコードがたくさんあるんですね。サボテン、横尾忠則さんの骸骨絵皿、エンツォ・マーリの林檎、サイ・トゥンブリーのペインティングや、ユニークな張り子などの民芸などバラバラのものが一つの空間にあります。

A:これも一気に集めたというわけでもなく、時代時代で自分が興味を持ったものの集積です。どこかBEAUTY&YOUTHらしいでしょ?(笑)。マニアックに一つの時代のものや一人のデザイナーなものばかりを集めている人もいますが、自分はそれがどうも退屈に感じてしまう。僕の場合は、常に何か新しいものと出合いたい。出合い方はなんでもいいです。枠組みを決めてしまうことで、その可能性をなくしてしまうのはどこかもったいないなと思うんです。欲張りなんですかね?

Q:ファッションに関わっていて、良かったと思うことはなんでしょうか?

A:ゴールを求めるような仕事ではないと思っているので、日々好きな洋服を着れる楽しさ、しかもそれを共有できる相手と出合えることですね。今回のオリンピックのスケートボードを見ていて、あの選手たちは国を背負って戦っているというよりも楽しくてやっているように見えました。勝ち負けも国籍も関係なく、楽しく滑っている。“競技”という枠を超えた楽しさを感じたように、本来ファッションもああいうものだったと思うんです。洋服に関わるものであれば、その感覚は忘れてはいけないものですよね。おそらく多くの人が洋服が好きで、ファッションが好きで業界に入ってきているわけですから。楽しんで好きなことをやっていないと、良いものはできないと僕はずっと思っています。

Q:純粋にそのモノに向かう姿勢ということですね。

A:お恥ずかしい話、最近ようやくSpotifyで音楽を聴くようになったんです。先ほど“モノ”との出合い方の話をしましたが、僕も今までずっとジャンルや文脈を意識した音楽との出合い方をしていたんです。しかし今は、歌い手の顔も名前も知らないけれど、いいと思う歌と出合うようになりました。つまりこれは、社会全体が能書きやうんちくじゃなく純粋に好きかどうかで判断するのが主流になっているということでもあります。僕も実際、そういう感覚で音楽を知れるようになって、まだ自分の知らない音楽がたくさんあることに気づきました。その感覚も今のファッションに足りないものだと思います。ストーリーの奥にあるもので判断することもあれば、ただそのモノの良さで判断する楽しさもありますよね。

Q:ジェリーさんがUNITED ARROWS退職後、ご自身で設立したブランド「ビアティチュード」(BEATTITUDE)という言葉の意味を教えてください。

A:昔から“attitude”という言葉が好きで、スタイルがあると言われるよりもアティチュードがあると言われた方が嬉しいんです。先ほども話しましたが、一つのスタイルに囚われるのは嫌だけど、アティチュードさえ一貫していれば、自然とかっこよく見えるんじゃないかなと思うんです。それはたくさんの先輩から学んだことですし、僕もまた若い人たちに伝えて行ければいいなと思います。そんな想いがこもったブランドなわけです。

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