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Sei Ikeda
Editor in chief
バブアー

Text Takumi Sato
Photography Asuka Ito


Published October 7, 2021

Text Takumi Sato
Photography Asuka Ito

Published October 7, 2021

情報やモノが溢れるこの時代に、たくさんの人が何を選択すべきなのか悩んでいる。答えを必死に探している人が多くいる中、「雑誌を作っていて思うのは、正解はひとつとは限らないってことです」と話すのは、男性ファッション誌UOMO編集長の池田誠さん。正解が一つと限らない中で何を選ぶのか。誰に取材するのか? 誰に撮影をお願いするのか? スタイリストは誰にするのか? 常に取捨選択を迫られる編集者。そんな編集者として第一線で活躍する池田さんから、洋服に限らず、例えば料理の食材選びといった答えのない日常的な選択をしていく上で大切なのは、“選択すること”そのものを楽しむことだと教わった。

Jacket, Barbour×BEAUTY&YOUTH ¥59,400

集英社に入社後、女性ファッション誌『MORE』に4年、女性モード誌『SPUR』に9年、そして2013年からは男性ファッション誌『UOMO』と、長きに渡りファッション誌の制作に関わってきた池田誠さん。

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集英社がある神田神保町には多くの古書店が点在し、学生や知識人が集う街として知られる。古書店だけでなく、昔ながらの喫茶店やカレーの名店が集まる場所としても注目を浴びている。

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「UOMOという雑誌は普遍的情報を届けるものではなく、あとで振り返った時に『こんな時代あったなぁ』『この時こんな気分だったなぁ〜』と思えるような、時代の空気感を読者に届ける雑誌だと思います」と小宮山書店で懐かしい雑誌を手にして話す池田さん。

「渋谷や銀座など東京でも多くの場所が再開発によって姿を変えていますが、神保町はこんな都心にあるのに20年前と景色はそこまで変わらない。カレー屋さんだったり町中華だったり、個人経営の飲食店も残っていて好きな街ですね。仕事柄、表参道や銀座に出ることが多いですが、編集者としては会社が神保町にあってよかったと思っています」と話る池田さん。

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左は、UOMOの副編集長の吉崎哲一郎さん。「目を合わせるのは小っ恥ずかしい」と横並びで歩きながら話すお二人。

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英国のアウトドア・ライフスタイルを体現するブランドである<Barbour>は、1894年ジョン・バブアーによりイングランド北東部のサウスシールズで創業。北海の不順な天候のもとで働く水夫や漁師、港湾労働者のために、オイルドクロスを提供したのがはじまり。

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フライフィッシング用に開発されたSPEY JACKETをベースに着丈を長くし、街でも着やすいシルエットに別注。「丈感を調整されたことでだいぶ着やすくなったように思います」と話す池田さん。

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裏地もインラインのものから変更し、英国のトラディショナルなチェックを選んでいる。トラディショナルな意匠と普遍性でファッションシーンに欠かせないアイテムに。

「かっこつけすぎない、けどなんか面白くてかっこいい、みたいな空気が出るといいなと思ってます」と雑誌を作る上で大事にしているポイントを語った池田さんは撮影中もよく話し、笑っていた。

Interview with Sei Ikeda

Q:男性ファッション誌『UOMO』以前は、女性ファッション誌の『MORE』、そのあとはモード誌『SPUR』で編集をされていましたが、関わる雑誌によって池田さんご自身のファッションはどのように変化していきましたか? 

A:『MORE』にいた当時は僕も若かったので、かなりカジュアルな装いをしていました。ファッションにより真剣に向き合うようになったのは『SPUR』に入ってからかもしれないです。レディースとはいえモードの世界に触れたことをきっかけに、その時代の空気感を味わうため、自分もハイブランドの服に袖を通しはじめて……。いいものを着ると自分も階段を一つ登った気分になりますし、周りの女性スタッフに褒められるようになりました(笑)。

Q:仕事の考え方にも変化はありましたか?

A:女性誌で働いている時は、自分が着てどうこうっていう話じゃないので、あくまで客観的な視点で「この服はいい、面白い。この服はそうでもない」などと反応してましたが、男性誌になると「自分がこういう服を着たらどうなんだろう」っていう主観が入ってきます。そういう意味で目線は変わりました。

Q:“編集者”という仕事はいわゆる何でも屋的な部分もあると思います。企画を立て、スタッフをキャスティングして、ページにしていく。こうした一連の仕事の流れの中で培った編集筋肉的なものが、池田さんの私生活でどのように活かされていると思いますか?

A:編集の仕事をしていて思うのは、たいていの場合、自分が最初に思い描いていた通りの結果にはならないんです。いい意味で。僕の場合は雑誌なので、担当する企画をどんなページにするかイメージすることからはじめるわけです。この企画ならスタイリストはこの人がいいなとか、この人に取材して話を聞こう、と考えながら動いていく。でも結局、打ち合わせや取材で人の話を聞きながら進めていくうちに自分が思ってもみなかった話や収穫があったりして、その都度ちょっとずつ軌道修正する。例えば撮影の現場においても、どれだけ事前にロケ場所のプランを立てていたとしても、当日急遽決めた場所で撮った写真の方がよかった、なんていうのはよくあることです。結局、編集者って一人では何もできなくて、フォトグラファーだったりヘアメイクさんだったり、いろいろなプロフェッショナルの力を借りながらみんなでページを作り上げていく。だから当初自分が思い描いた通りにはならなかったとしても、結果的に期待以上の化学反応が起きる。そこがすごく面白い。「こっちの方がいい」と感じる第六感的なものと決断力はある程度磨かれている気がしています。

Q:予想していなかったアクシデントも含めてどれだけ楽しめるか、ということですね。最近、選択するうえで何か悩みましたか?

A:よく迷っているのはスーパーマーケットですかね(笑)。僕はご飯を作るのが好きで、土日は自分が家族の食事を作るんですけど、買い出しにいくときに、その時点で何を作るかを決めずに行くんです。スーパーマーケットに並んでいるものを見て、さてさて今日は何を作ろうか……みたいな。誤解しないでくださいね、シェフのように僕の頭の中にレシピが何千と入っているわけじゃないので、なんかこの野菜美味しそうだなと思ったら、スマホでレシピを検索です(笑)。

Q:そのスーパーマーケットでの買い物方法は、池田さんがどんな服を着るかという部分にも繋がっていますか?

A:どうなんでしょう。迷うこと自体はまったく嫌いじゃないんですが、確かに僕の普段の生活と似ているよなとは思います。基本的にどのタイミングで何を選ぶのかっていうことの正解は、はっきりないわけですよね。しかし何かしら選んでいかなきゃいけません。ああでもない、こうでもないって自問自答を繰り返していくことは、つまり自分自身と丁寧に向き合うことなのかもしれません。バンバン答えを出していく人を羨ましいと思うこともありますが、僕の場合は、あれこれ悩む時間を楽しみたいなと。

Q:例えば、今回着用いただいたバブアーのようなアイテムは、1894年に創業したブランドで、よく“男性のマストハブ!”といったような企画でも頻出するいわゆる“定番”です。池田さんにとってはどのようなアイテムなのでしょうか?

A:理屈よりも、自分の気分に合うかを大切にしています。もちろん100年以上培われてきたプロダクトの歴史や文化を知れば知るほど面白いことは確かなのですが、僕の洋服の見方に関して言えば、自分が好きかどうか?です。好きならそれでいいじゃない?っていうスタンスです。目まぐるしく移り変わる女性ファッション業界をずっと見てきたから、こういう考え方になったのかもしれないですね。

Q:今回のコーディネートは、バブアー以外のアイテムはすべて池田さんの私物でした。ワイドスラックスやスウェットパンツなどとの都会的な合わせが、池田さんの白髪も相まってか、すごく神保町の知的な雰囲気にマッチしていたように感じました。

A:ありがとうございます。照れますね。白髪が増えて、自分が着る服は少し変わったように思います。例えばボーダーシャツとかは、小っ恥ずかしくてあんまり着てこなかったんですけど、逆に今ならナシじゃないなとか……。

Q:白髪が増えたこともある種のアクシデント……。それとうまく付き合っているわけですね。

A:変化を前向きに楽しむっていうことですよね。読者の話を聞いていても、みんな全力で人生を楽しもうとしているんです。洋服は分かりやすいですが、何もそれだけではありません。洋服以外にも変化を楽しめることはたくさんありますからね。なので、『UOMO』ではファッション以外にもセンスのいいライフスタイルについて積極的に紹介しています。

Q:ファッションっていうのは、一部であるということですね。

A:「服しか買ってません」っていうのもいいんですけど、大多数の読者はそうではない。色々な人の取材をしていて、結局服の話ばかりを聞いているよりも、その人の趣味だったり、日々の生活の話のほうがもっと面白かったりします。すると、そういう人が着ているバブアーのほうがカッコよく見える。これは誰もが言っていることではあると思いますが、この年齢になると痛感するんです。ファッション的な意味が大きい“おしゃれか否か”っていうことよりも、“かっこいいか、かっこよくないか”みたいなところが大事だと思うんです。それを誌面でうまく伝えていきたいですね。

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