連載コラム【音楽のある風景】 Vol.94

2020.02.29

グリーンレーベル リラクシング のBGMを選曲されている、
選曲家の橋本徹さんよりコラム【音楽のある風景】が届きました。



どうぞお楽しみください!


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2月の選曲は、喜びも悲しみも優しく受け止めてくれる祈りにも似た調べに身を浸して。
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新型コロナウイルスの影響で右往左往てんやわんやの中で2月が終わっていきますが、春の訪れも少しずつ近づいていて、green label relaxingやEMMEL REFINESのショップBGMも、早春選曲に衣替えしました。

僕は2/26に、友人だった日本を代表するサウンド・クリエイターであり今なお世界中で愛されてやまない故Nujabesが10周忌を迎えたこともあり、彼の追悼にまつわるあれこれに忙殺されたひと月でもありましたが、かけがえのない思い出をまたひとつ胸に刻むことができました。
それは、2020年2月26日19時30分、東京・渋谷のスクランブル交差点の大型ヴィジョン6面を使って、彼に捧げる追悼映像「Pray for Nujabes」を3分間にわたって放映できたことです。

人(ファン)が集まりすぎて混雑を招くリスクから、事前に情報告知が許されないシークレット・プロジェクトだったこの「Pray for Nujabes」、ことの始まりは1/16の昼下がり、Nujabesのお母さんからかかってきた1本の電話でした。
以前にもその思いをうかがったことがあったのですが、「10周忌の日に、渋谷のスクランブル交差点で、息子の音楽を流して、たくさんの皆さんに聴いていただけるよう、力を貸してもらえないでしょうか?」という内容でした。
まだ90年代の話ですが、20代前半のNujabesが渋谷・宇田川町にレコード・ショップを開こうとしていた頃、反対する父に内緒で母がオープンに必要な諸々を受け渡しに来ていたのがスクランブル交差点で、言ってみればこの地は親子の絆を見守り続けた思い出の場所だったのです。

とはいえ、それは途方もない夢のようにも感じられました。
電話を切った僕はまず、広告代理店に勤めるDJ仲間の松下大亮くんに相談して、さっそくその晩にお母さんも含めた3人でミーティングをすることにしました。
すぐに莫大な費用がかかることがわかり、クライアントが見つからないと実現不可能であることが判明したところで、Spotifyかタワーレコードに協力を仰いでみようと意見が一致しました。

そして紆余曲折ありながらも企画書を通してSpotifyのご厚意でサポートしていただけることになり(タワーレコードの方ではNujabesがポスターに起用された"No Music, No Life"キャンペーンと彼の名盤『Modal Soul』アナログ盤販促動画の放映が実現しました)、ようやく追悼映像の制作へという段階にこぎつけたのですが、その時点で2/7(奇しくもNujabesの誕生日、スポンサードOKの知らせは天からのバースデイ・プレゼントだったのでしょうか)、納期までにはわずか10日しかないということで、新たに撮影からスタートする時間的余裕はありません。
そこで僕は、7年前にNujabesが主宰したHydeout Productionsから発表されとても気に入っていた、やはり友人でもあるharuka nakamuraの「Lamp」のMV制作時に撮った映像の断片を編集させてもらうことにして、そこにNujabesの代表作「Luv (Sic.) Pt2」「Luv (Sic.) Pt3」「Reflection Eternal」をDJミックス風にメドレーで合わせることにしました。

そうして完成した「Pray for Nujabes」と題した追悼映像が、スクランブル交差点の大きなスクリーンから一斉に流れたときは、本当に言葉にならない思いがこみ上げました。
心にしみるメロウでスピリチュアルなNujabesのビートが渋谷の街に響きわたり、不意のできごとに行き交う人々が足を止めて、その音楽に身を委ねたり、スマートフォンをかざす姿が見られたのも嬉しかったですが、何よりもNujabesのお母さんが感涙・感激してくださったのには、無事ミッションを成しとげた安堵もあって感無量でした。
その映像は現在、YouTubeでも観ることができますので、ぜひご覧ください。
□映像URL:https://youtu.be/-_bx7O3cQD4

同じ2/26命日には、Spotifyで僕がセレクトした同名のNujabes10周忌オフィシャル・プレイリスト「Pray for Nujabes」も公開されました。
こちらも本当に思いをこめた選曲になっていますので、ぜひお聴きいただけたら嬉しいです。
□「Pray for Nujabes」https://spoti.fi/PrayforNujabes

もちろん2014年に編んだ2枚のコンピレイション『Free Soul Nujabes ~ First Collection』『Free Soul Nujabes ~ Second Collection』、haruka nakamura feat. Nujabes「Lamp」を収めた『Urban-Mellow FM 77.4』、Nujabesが亡くなる前の夏に作った(生前最後の録音となったジョヴァンカ&ベニー・シングスをヴォーカルに迎えたシャーデー「Kiss Of Life」のカヴァーを収録)『Mellow Beats, Friends & Lovers』も併せてどうぞ。

追記:
プレイリスト「Pray for Nujabes」の1曲目はやはりharuka nakamuraの「Lamp」にしました。
かつてカフェ・アプレミディのアニヴァーサリー・パーティーでもUyama Hirotoとの共演で披露された、生前のNujabesが一生懸命練習していたフルートをフィーチャーした胸を打つ名曲中の名曲。
そのリリカルなピアノとメロウ・ビーツ、祈りにも似た調べに身を浸していると、喜びも悲しみも優しく受け止めてくれるこういう音楽に救われて、僕たちは毎日をすごしているんだなと思わずにいられません。


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2月の選盤





2014年にリリースされFree Soul 20周年のクライマックスを飾るにふさわしいファン待望の顔合わせと祝福された、世界的にも今なお人気が広がり続ける日本が生んだ名サウンド・クリエイター、Nujabesの胸を打つ名作の数々が深い愛情と追悼の思いをこめて紡がれた、橋本徹さん選曲のコンピレイション『Free Soul Nujabes ~ First Collection』と『Free Soul Nujabes ~ Second Collection』






Nujabesのフルートもフィーチャーされたharuka nakamuraの祈りにも似た名曲「Lamp」も収録された、街のきらめきとざわめきに溶けてゆく"アーバン・メロウ"をテーマに、"架空のFM"というコンセプトでドライヴしながら流れてきたら心に虹がかかるようなジャズ〜ソウル〜ブラジリアン〜AORの珠玉の名品が紡がれた、橋本徹さん選曲のコンピレイション『Urban-Mellow FM 77.4』





Nujabes生前最後の作品となったシャーデー「Kiss Of Life」のカヴァーと後にジョー・クラウゼルにリミックスされる「Child’s Attraction」がオープニングとエンディングに収められた、人気コンピ・シリーズ「メロウ・ビーツ」のスペシャル・イシューとして寄せては返す波や沈みゆく夕陽のように心地よく甘美な日本人アーティストの傑作が集められた、橋本徹さん選曲のコンピレイション『Mellow Beats, Friends & Lovers』



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橋本徹 (SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。
サバービア・ファクトリー主宰。
渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。
『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』『Good Mellows』シリーズなど、
選曲を手がけたコンピCDは340枚を越える。
USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作。
著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。
http://apres-midi.biz
http://music.usen.com/channel/d03/

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