ユナイテッドアローズに揃うさまざまなスーツに、「M-MODEL」と呼ばれる新型が加わった。なぜ今「M-MODEL」が登場したのか? そしてその特徴と着こなしかたとは? 担当者に話を聞いた。
「スーツは着るのが大変」から解放するために
一言で「M-MODEL」の生い立ちを説明するならば、「あらゆるものがスマートでイージーになっていっている世の中で、スーツはいまだにハードルの高いものになっている」、 そんな思いが企画のきっかけです。
ユナイテッドアローズ(以下UA)で扱っているようなスタンダードラインのスーツだと、「Tシャツやスニーカーを合わせて」などは、少し抵抗がある人も多いと思います。 いざそうやって着たとしても、人から見たら「間違えているよ」と思われかねません。正統派な着こなし以外ではちょっと着るのが、ある意味で“大変”だと感じていたのです。
そんな“大変”なスーツから、解放するために考えたのがM-MODEL。オンとオフの壁を軽く乗り越えられるような、休日にも着て出かけたい……、そんなスーツを作りたいと思いました。
「いいスーツは着たいけど、シャツとネクタイだけを合わせたいわけじゃない」という声が、若いかたを中心に増えてきています。
もちろんカジュアルなスーツは多くなってきていますが、そういったものはリラックス感を主にしたものが多く、社会性やクオリティ、クラス感に欠けるものが多いのが現状です。
こういったスーツ事情をふまえて、「スマートでイージーでありファッション性もあるスーツ」が命題となり、2019年秋冬にM-MODELがデビューしました。
ちょうど、90年代のミニマムなテーラリングが再び脚光を浴びていることも追い風になりました。

ステッチがないということも、メッセージ
このモデルの具体的な特徴をご紹介しましょう。
ジャケットは、フラワーホールやAMFステッチ、ウエストのダーツやポケットのD管など、クラシックなスーツの代表的なディテールを意図的に取り除いています。
角度を下げたゴージラインも、他のUAのスーツとは印象が大きく違うと思います。
パンツも同様にステッチを極力排しました。股上を深くした、単品でも美しいシルエットです。
どちらも生地選びはモダンさを第一とし、そのうえでストレッチ性のあるものを用いてコンフォート感を大切にしています。
スタイルを明確にするために、合わせやすいシャツも同時に企画しました。大きめのボタンにしたのは、ネクタイをしなくても“間”が持つようなデザインのため。スーツと同じく、 ステッチを極力表面に出さないように作っており、ストレッチ性のある生地を採用しました。
各アイテムの特徴として「ミニマム」という印象を強くしていますので、コーディネートも色使いはワントーンで、アクセサリーもクリーンな感じがおすすめです。 ステッチがないことも一つのメッセージになっているので、思い切ってシンプルなコーディネートで着てみてください。シンプルな着こなしゆえの楽しさが、そこにはあります。
そういえば、ここまで説明してきた「M-MODEL」ですが、その名前の由来に触れていませんでしたね。「M」とはなにかが気になると思いますが、 これは「MODESTY(謙虚・控え目)」と「MODE(モード)」という意味を持っています。モードという言葉に代表される“今の潮流”に沿いながらも、 ひけらかさない謙虚で控え目な人物像をイメージしています。


ミニマムで豊かなワードローブを
M-MODELの登場は、UAで扱っているクラシックの流れをくむスーツを否定しているわけではありません。現代の多様性を満たすさまざまなラインナップをそろえてあることが、 現代のメンズショップなのだと思っているのです。
なお、セットアップにしたのは、好みのバランスで着たいという人や、健康志向から体を鍛えている人などが多い状況を踏まえて、サイズ対応をしやすくしたためです。 これも現代が求めている一つの要素かもしれません。
これからM-MODELのスーツがベーシックになる……と思っているわけではありませんが、スーツスタイルはこれからよりカジュアル化していくでしょう。
ただし、男性としてしっかりスーツを着るシーンは、必ず求められると思いますし、その文化は消えてほしくありません。
M-MODELがあることで、多様化するスーツスタイルに対応できますし、さらに多くのお客様にスーツを着ることの楽しさが伝わればと思っています。
いろいろなTPOに対応する服をたくさん持つのではなく、一つのスーツが多くの用途に使える。M-MODELはいろいろなシーンでイージーでスマートに着られるスーツです。 ミニマムであることがかえって豊かになる、そんなワードローブの一つになるはずです。

(写真右)シャツもステッチが目立たない作りになっている。こちらもストレッチ生地が使われた。