ドレスを着ること。

「ドレスってかっこいい」の先の話をしよう。ドレスを身に纏うことで……きっと周りからもポジティブな印象が得られるだろう。そのうちに自信が芽生え心地よさを感じることだろう。「こんなスーツをいつまでもかっこよく着続けられるような大人になりたい」とか「歳を重ねたらこんなスーツを着たい」と未来の自分に楽しみが生まれることだってある。マナーとしてのドレス、仕事着としてのドレス、お洒落を楽しむドレス。今のドレスのカタチはさまざまだ。ドレスだって自分らしく。いつもの装いにドレスという選択肢を。ドレスを楽しもう。

「ドレスってかっこいい」を締めくくる最後の動画は、ドレスの力を信じる4人に話を聞いた。ヘアスタイリストのTAKUさん。フォトグラファーの長山一樹さん。ジョン ロブ ジャパンの代表取締役社長である松田智沖さん。そしてユナイテッドアローズのセールスパーソン永井康夫。
日常着のようにドレスと付き合う人もいれば、TPOによってドレススタイルを選択する人もいる。スーツであればなんでもいいわけでもない。それぞれのこだわりがあり、スタイルがある。クラシックなディテールが好きだからクラシックな3つボタンのスーツを。普段はデニムにスリッポンだから、ドレスでもスリッポンを。ジョンロブのシューズを履くなら……と端正なスーツを選ぶ人もいる。色々な人が色々なドレススタイルを楽しみ、その色々な想いを受けとめるユナイテッドアローズのスタッフの想い。



1 TAKU(ヘアスタイリスト)

“TAKUさん”とファッション業界内で親しまれる大野 拓広さん。ユナイテッドアローズのカタログをはじめ、数々のレーベルのルックやビジュアルブックでそのたぐいまれな手腕を振るってきた。そのスキルは、ファッションクリエイターだけに限らず、国内外のセレブリティからもたくさんのラブコールを受けるほど。例えば舞台挨拶用や記者会見、レッドカーペットなどのヘアスタイリングをする際は、ホテルの一室で作業をすることもある。そんな時にTAKUさんは、普段のTシャツとデニムにスリッポンではなく、スーツを着て現場に向かう。

Q:TAKUさんにとってドレスはどういう時に着るものですか?

A:僕は基本的にいつもデニムにスリッポンなんです。スーツを着るのは、例えばセレブリティが来日し、ホテルの部屋で仕事をするというときとかですね。持っているスーツは、グレーやネイビーがほとんどで黒が少々。主役よりも目立つ訳にはいかないですからね。僕にとってスーツはTPOなんです。

Q:TAKUさんならではのスーツとの付き合い方についてはいかがですか?

A:例えば、今日はカシミヤのグレーのスーツにアンゴラのオフホワイトのソックスにスリッポンというスタイルです。これがタイドアップだったら、セオリー的にはシューズはレースアップを選ぶでしょうし、靴下もシューズの色に合わせてダークなものになると思いますが、やはり自分らしさを損なわないようにしたい。カジュアルな服装をしているとき、ドレスアップしているとき、洋服は変わっていても結局は“自分”。ドレスコードがない限りは、自分らしい装いで。それが僕が一番大切にしていることかもしれません。つまり僕が言いたいのは、答えなんて多分ないのかなと思うんですよね。周りに不快感を与えず、それでいて自分らしさをアピールできる、それが最も大切なドレスの着こなしなのかなと思います。

Q:ユナイテッドアローズのカタログやルックブックの撮影でもTAKUさんにお世話になっています。制作メンバーの一員として、TAKUさんの中でユナイテッドアローズのドレス、スーツスタイルっていうとどのようなイメージがありますか?

A:かれこれ何十年とやらせていただいていますが、“粋”みたいなものをユナイテッドアローズのドレススタイルから感じます。実際お店に足を運んだときも、ピンポイントで自分が欲しいとめがけて行くものはなかったりもするのですが、その代わりに意外な粋なアイテムが見つかったり。毎回それを楽しみにしてお店に行っています。

Profile

大野 拓広

1997年に渡英し、『i-D』や『THE FACE』などのファッションカルチャー誌のクリエイションに参加。帰国後もトップヘアスタイリストとして活躍する。 2013年には自身がディレクターを務めるサロンをオープン。また2021年4月にはビューティを専門にするエージェンシーの<VOW-VOW>を設立した。




2 長山 一樹(フォトグラファー)

フォトグラファーの長山一樹さんにとって仕事着=スーツと決まっている。これはクリエイターのなかでも珍しい。しかし長山さんは言う。「心地がいいので」と。もちろんなんでもいい訳では決してない。長山さんなりのルールがある。着用するスーツはほとんどがオーダーによるものだ。裾幅は広め、股深のパンツや太めのラペルと、好きなテイストをふんだんに盛り込んだスーツは、長山さんにとって“心地のいい”スタイルなのだ。

Q:長山さんにとって、スーツはどんな時に着るものですか?

A:基本毎日着るものですし、仕事の時にないと困るものです。「スーツを着ていて疲れませんか」とよく聞かれますが、僕の中で“ラク”と“心地いい”はかなり違うんですね。今は洋服にラクさを求める傾向が強いと思うのですが、それと心地いいとは違う。僕にとって心地いいのは、スーツ。スーツを着ると姿勢が整ったりとか、外からの見られ方が変わったりとか、そういう心地よさが常にある。着ていて不安になることがまったくないんですね。それはある程度スーツを着ていないとわからなかったことなのですごい発見でした。

Q:今まで長山さんが着用されていたカジュアルウェアと現在着られているスーツ、他に何が違うと思いますか?

A:カジュアルウェアと違うということではないのですが、スーツに的を絞ったことによって未来性が明確になりましたね。オーダーする時に考えることなんですけど、今から作ろうとしているスーツをどう着るか、どこに着ていこうか、またそれを着てどういうことをしようか……と。それはつまり未来の自分がどうなっていたいのかを想像しているんです。だから持っているスーツの中でも目的や用途はさまざまです。日常着としてのスーツだったり、勝負服のスーツだったり。いま着ているのは勝負服のスーツです。僕の場合はスーツを着る自分の姿を考えることがひとつの指針になってくれているんです。

Q:ユナイテッドアローズで開催されるオーダー会にも度々お越しいただいていますが、ユナイテッドアローズのドレスにはどんなイメージがありますか?

A:ユナイテッドアローズのドレスと聞いてパッと思い浮かぶ言葉は“遊び”です。しかしそれはスーツそのものではなく、いつもお店に立っているスタッフの方や仕事でお会いするPRの方などの着こなしから感じることです。自分ではできないような色合わせであったり、シューズの選び方であったり。お話しすることだけでなく、着こなしを見ることも楽しんでいます。

Profile

長山 一樹

「GQ Japan」や「BRUTUS」、「Pen」などの雑誌に寄稿し、最近ではYouTubeで話題の番組「THE FIRST TAKE」のフォトディレクターとして活躍。またカメラの名機として知られる<ハッセルブラッド>のローカルアンバサダーも務めている。




3 松田 智沖
(ジョンロブ ジャパン代表取締役)

「スーツは日常着です」というのは世界最高峰のシューメーカーと呼ばれる<ジョンロブ>を日本において牽引する代表取締役社長の松田智沖さん。日々さまざまな人に会う松田さんにとってスーツというものは、相手方に敬意を表するものとして大切な役割を担う。

Q:松田さんにとってスーツはどんな時に着るものですか?

A:僕にとってスーツは日常であり、普段着ですね。ですから特別な意味は持っていなくて、本当に着ていて楽なんですよね。それは日々色々な方にお会いする機会があるので、その方々に対して敬意の表れ、という意味でもスーツは僕の中では楽ですね。

Q:松田さんだけに限らずジョンロブの店舗に行くと販売スタッフもシャツにネクタイというドレスコードのようなものが見受けられます。

A:お客さまに対する敬意の表明というところでスーツを着たり、ネクタイを締めているんです。ジョンロブ創業当初から脈々と受け継がれる血のようなものに近いのかもしれません。

Q:松田さんはユナイテッドアローズのドレスに関してどのような印象をお持ちでしょうか?

A:ユナイテッドアローズのドレスから感じるものは艶っぽさや色気です。そういうムードが常にあると思いますし、引き続き継続していってもらいたいなと思います。変える部分と変えてはいけない部分、よくある話だと思いますが、時代がものすごいスピードで変化する今だからこそ大切にしてもらいたいと。

Q:ものすごいスピードで利便性を追求する世の中になっています。 ユナイテッドアローズのスーツもオーダーをすれば数週間待ちますし、ジョンロブに関してもビスポークは約1年ちかくお客様をお待たせすることになると思いますが、松田さんが考える“便利”の対になる言葉とはなんだと思います?

A:“愛着”ですかね。時間を要して手に入れたものには自然と愛着が湧くものです。そして愛着を持って接しているものは長く使い続けたいと思うでしょうし。つまり修理をしながら履き続けるということにもなります。シューズの話にはなってしまいましたが、スーツでも同じことが言えると思います。

Q:モノの良し悪しの判断するうえでの一つの拠り所として伝統があります。時間を積み重ねつつ、進化をし続け現在に至るブランドにはどこか安心感があります。しかし単に歴史があればいい、という訳でもないとも同時に思います。

A:プロダクトとしてのよさは元より、そのブランドに携わっているメンバーの想いが大切です。その想いが強ければ強いほど歴史は積み重なっていくものだと私は思います。ジョン ロブもそうですしユナイテッドアローズも。ひとつの会社、ひとつのブランドに携わるメンバーの熱意があって今に至っていると思います。それをお客様が感じ取ってくださっている。そんなお客様に対するリスペクトがあって現在があることを忘れてはいけません。モノだけがよくても、そこに携わる人々の情熱や想いがなければ淘汰されていく。スーツやシューズというモノだけではなく、大切なことはそこに携わるメンバーの想いじゃないですかね。

Profile

松田 智沖

エルメスなど名だたる外資系企業でキャリアを積み、2005年より株式会社ジョンロブジャパン代表取締役社長に就任。150年以上の歴史を誇る名門シューズブランド、ジョンロブを日本において牽引する。




4 永井 康夫
(六本木ヒルズ店 セールスマスター)

かつてはザ ソブリンハウスの店長を務め、その後バイヤーとしても活躍し、世界中を飛び回っていた永井康夫。現在は店舗に立ち、ユナイテッドアローズの未来を担う若い世代のトレーナーとして活躍する。ユナイテッドアローズのドレスと長い時間ともに過ごしてきた永井だからこその“想い”。

Q:お客様にドレスとどのように付き合って欲しいと思いますか?

A:私自身、ユナイテッドアローズという場所でドレスと出合ったのち、さまざまなスーツに触れ、数えきれないVゾーンをスタイリングし、そして実際に袖を通してきました。その結果、自分の中にあるコンプレックスを解消してくれたのがスーツであり、ジャケットスタイルでした。ドレスに力をもらってきたんです。きっと皆様の中にも、装うという行為の中に、“どういう人に見られたい”かとか、“どう思われたいか”という意識が多分にあると思います。そういう意味でドレスというのは、自信を与えてくれるものですし、そして印象をよくしてくれる、とても素敵なアイテムです。ですから洋服を着るという選択肢のなかでドレスをもっと身近に感じてもらえたら嬉しいですね。

Q:ドレススタイルをお客様に提案する上で大切にしていることはなんでしょう?

A:一つひとつのプロダクトには当然自信を持っています。自分たちの役目というのは、そのプロダクトのよさをできるだけお客様に伝えることですが、それと同時に重要視しているのはお客様に寄り添ったスタイリングの提案です。そのためには、お客様のワードローブやニーズ、気分だったり、どうなりたいかというところを知る必要がありますね。それを引き出すコミュニケーションも我々のスキルのひとつなんです。ご提案させていただいたときにお客様が持っているイメージよりもさらに半歩でも想像を超えて、感動を得られるような、「こんなことができるんだ!」というような提案こそが、ユナイテッドアローズの販売員の使命だと思っています。

Profile

永井 康夫

1971年生まれ。六本木ヒルズ店のセールスマスター。福岡にあったBLUE NOTEでアルバイトをしていた20代前半のころに、ジャズミュージシャンやモッズスタイルにあこがれを持ち、そこからファッションとしてのスーツに興味を持ちはじめる。ザ ソブリンハウス の店長やバイヤーを経験し、現職に至る。