• 定番ものに、個性を

    以前、ドラマ制作に携わる女性にこんな話を聞いた。「作中のキャラクターや心情を洋服で演出したいときはコートに頼ることが多いの。手っ取り早く、ストレートに伝わりやすいから」。基本として人が1番上に羽織るもので、面積が大きいアイテムだから印象に残るアイテムということなのだろう。 花曇りの日曜日、古着のブルーデニムにトレンチコートを無造作に羽織った女性がいる。ポケットに手を突っ込み、少しけだるそうにゆっくり歩を進める彼女。とびきり新鮮なスタイリングでもなく、鮮やかな配色や柄で主張しているわけでもないのに、つい目で追ってしまう。見慣れたはずのトレンチコートだが、彼女が選んだのは静かながらも意志のある1枚だ。薄くてハリ感のある素材、くるみボタン、ボリューム袖をぎゅっと絞って垂れ下がる長いベルト……。そんなディテール使いから、定番ものだからこそ”something special”を大切に、そんな声が聞こえてくる。そうか、おしゃれに個性は必要だけれど、インパクトばかりを追う必要はない。他人のために装うのではないのだから。自分の好きなものを自分らしく着る。当たり前のようで難しい確固たる意志が彼女にはある。

    Trench Coat
    FILL THE BILL
    ¥63,720
    Natural
    ONLINE STORE
  • ジャケットと知性

    日本人女性にとって、ジャケットのおしゃれは難しいものである。トレンドとして何度も流行が予測され、多くの店頭に並んできたが、なかなか街で広がらないアイテムだった。通勤着として、特別な正装としてワードローブに1枚はあるけれど、普段から積極的に着るものではない。実際に着てみたけれど、着回し方もイマイチ分からないし、なんだかちょっと似合わない気がする。そんな人がきっと多いはず。しかし2019年は春を前に、ジャケットがじんわりと、確実に売れている。トレンドだから、が理由ではない。今、女性が着こなしに「知性」を求めているからだ。
     例えば、カジュアルなブルゾンやニットの代わりに白いボタンのついたジャケットを選ぶ。いつもは着崩す白シャツを第一ボタンまでしっかりと閉めてみたくなる。袖をまくって見える腕はあえてアクセサリーをつけなくてもいいか。チェック柄のスカートは膝下まで長さのあるものでバランスを取ろう。そうして鏡に映る自分は、いつもより少し自信のある顔になっているはずだ。ジャケットは地に足をつけて、しっかりと前に進む知的な現代女性の頼れる相棒だから。

    Jacket
    UNITED ARROWS
    ¥34,560
    Navy / Beige
    ONLINE STORE
  • 女性のしなやかさと強さ

    多様性、ダイバーシティ。そんな言葉が行き交う中で、自分と異なる他者を受け入れる。社会はゆっくりとではあるが、人それぞれの幸せを認めようと前進していると信じたい。ファッションは先陣を切って幸せの多様性に向き合い、エンターテイメントとして人を元気にし、誰かの救いとなるべきだ。
     心地よい春の西日に照らされて佇む女性は、洋服作りを生業としている。いわば、ファッションのプロだ。作る洋服を通して時代の空気感を、女性の心地よさを世の中に提示している。街で見た彼女のコートは定番のトレンチでもなく、ステンカラーでもなく、一言で形容するにはちょっと難しいもの。だけど、着心地がよさそうで女性の体を綺麗に見せてくれる、そんな1枚だ。優しいエクリュ色のコートに胸元のひとつボタン、大きめのポケット、袖口のベルトのデザインがよく映える。そして、歩くたびに揺れるアシンメトリーの裾は、毎日をしなやかに泳ぐ女性を表現しているかのようだ。固定願念にとらわれず、無理することもなく、真の自由を手に入れたいな。たった1枚のコートからそんな想いが湧くのだから、やっぱりファッションの力はすごい。

    No Collor Coat
    ELIN
    ¥89,640
    Beige
    ONLINE STORE
  • 知性とカジュアル

    エフォートレス、リラックス、スポーティ。文言を少しずつ変えながらも、肩肘張らず、どこか抜け感のあるカジュアルなスタイルが定番化している。ジャケットの下にあえてTシャツを合わせるとか、ドレスの足元をあえてスニーカーにするとか、この”あえて”のさじ加減が上手な人ほど、おしゃれと言われて久しい。しかし、女性は歳を重ねるごとにこの”あえて”のカジュアルが難しくなっていく。時にそれが若作りに見えたり、妙に悪目立ちしてしまったりするものだから。ああ、いつの間にかなくしてしまった若さが羨ましい! そんな気持ちになることもあるが、年齢とともに、たくさんのトライ&エラーを重ねてきたからこそ手に入る「大人のカジュアル」が、似合うアイテムが、きっとあるはずだ。
     そう思って、ふと頭に浮かんだのは「ザ リラクス」のショート丈ブルゾンだ。後ろが長く、腰回りをすっぽりと覆うフォルムや大きなフード、ドローストリングの裾で立体的に仕上げてある。それはなんというか、包容力のある優しくて強いカジュアル感を纏える唯一無二のもの。歳の数だけ背負ってきた、たくさんの大切なものと一緒に日常を謳歌する女性だからこそ、似合うもの。

    Mods Coat
    THE RERACS
    ¥59,400
    Natural / Black / Dark Green
    ONLINE STORE
  • 変わるもの、変わらないもの

    以前、朝8時に家を出て、夜の7時に家に着くまでの間、目にした「トレンチコートを着た女性」を数えたことがある。結果は57人。ちなみにベージュ限定。そう、東京の春の街にはトレンチが溢れている。初めこそ、人と同じものを纏う安心感をちょっとネガティブに捉えてしまったが、同じトレンチでもその着こなし方は実に様々で、女性それぞれの背景や生き方を想像しては幸せな気持ちになった。
     古きを慈しみ、新しさに挑む。今、ファッションに求められているのは、そういういうことなのかもしれない。「トレンチの女性」が導き出してくれたひとつの答えだ。次から次へと斬新で見栄えがするものが生まれ、SNSによって瞬く間に消費されていく中で、自分の軸を持つことが大切。トレンチコートも、ボーダーも時を超え、世代を超え、決してすたることのないものだ。誰しもが着たことのある当たり前のものだ。その無難さを怖がらずに毎年、変わらずに愛する。それは今、とても価値のあること。ビタミンカラーのスカーフとパンプスを合わせて着こなしを変えてみる。小さくても新しいことにトライする気持ちを忘れずに、今年の春もやっぱりトレンチコートを着よう。

    Trench Coat
    UNITED ARROWS
    ¥51,840
    Beige / Navy
    ONLINE STORE
  • これからの女の子

    凛とした佇まい、意志のある眼差し、少しずつでも自分らしく前へ進もうとする姿勢。将来の夢について、静かにぽつり、ぽつりと話す彼女を見て、じんわりと心が熱くなった。どんな夢だって、強く願えばきっと叶うよ。ありきたりかもしれないけれど、そんな風に思ったし、自分なりにではあるが、そうやって一生懸命に生きてきた自分も肯定してくれた。そして、今一度、女性の生き方と装いについて考えたのだ。生きている限り、人は服を着る。できるだけ好きな服を、できれば好きなように。装いひとつを取っても、好きな自分でいられることが、時代を生き抜く強さにも、他人を愛する強さにも繋がるのだと思う。
     彼女の着たナイロン素材のモッズコートが夕日を浴びて、キラキラと光沢を放っている。今日着ているワンショルダーのオールインワンにも、お気に入りのニットにも、いつものデニムにも馴染んで生活に寄り添ってくれるはず。ざっくりと羽織って、たまにはジッパーを全部閉めたり、ウエストの紐をぎゅっと絞ってフォルムを変えたりしながら、これからの彼女が今日と同じように、長く愛用できるものでありますように。

    Mods Coat
    TATRAS
    ¥95,040
    Medium Gray / Black
    ONLINE STORE