『 2021年は、"グリーン"の年に 』

栗野 MEN WOMEN

2021.01.01

■"グリーン"という色が惹きつける磁力

新しい年となりました。本年もユナイテッドアローズをご愛顧いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

さて、みなさまは洋服と出会ったとき、まず何に惹かれますか? デザイン、素材、色、価格......。僕が洋服に惹かれ、手に取ってみよう・着てみようと思うケースを振り返ると、自分にとって"服の色"が非常に重要であることを思います。
国内・外を問わず、店頭やショウルームで未知の商品と出会った際、試着し、価格もチェックし、生地感も体感したうえで「これを買おう」とか「この商品を仕入れよう」と思う判断基準の大きなパーセンテージを占めるのが"色"です。逆に言えば、デザインも素敵、サイズも縫製グレードも完成度が高く、価格の健全性にも納得していながら"最後の一歩"に踏み切れない、決断しない理由も"色"です。「この色には惹かれないな.........」と。

たとえば2020年、特に後半を振り返りかえってみると、個人的に購入した服、自己アーカイヴから発掘し、二軍から一軍に昇格(復活)した、あるいは我々が仕入れて店頭で提案した商品の反応や売れ行きのなかに興味ある傾向が見えてきました。

それは"グリーン"という色が惹きつける磁力です。

3月頃は厚手のカーゴパンツ、5月頃は薄手のベーカーパンツ、9月になって再びカーゴパンツに戻り、続いてアーミーサージのストレートパンツを履きました。これらは手持ちのモノでしたが、全てグリーン系。そして秋に購入したのは鮮やかなケリーグリーンのカシミアのクルーネック。スコットランド製のチェックの大判マフラーもグリーンを主体としたチェックを買いました。もちろんそれ以外の色のアイテムも着たり、買い足したりしましたが、振り返ってみれば相対的にグリーン系の服や彩貨を多く手にしています。

店頭の方も同様で、たとえば3色展開で仕入れたコットンパンツのなかで、いつでも人気のベージュを別とすれば、いつの間にか売り切れていたのがグリーンだったりしました。


写真は2021年春夏シーズンにDistrictに入荷予定のアイテム。<K ITO><HAND ROOM><ts(s)>などで、グリーンのアイテムが目に留まった。


■ "自然"への憧れを想起させるもの

僕は自著『モード後の世界』でも書きましたが「ファッション商品の売れ方には必ず何らかの理由や背景や社会潮流からの影響がある」と思っています。

そこで、自分自身とユナイテッドアローズのお客様に共通する、この"グリーン熱"について分析してみました。

1.いわゆるタンス在庫にない色:日本ではそれほど一般的では無い。それゆえに新鮮な色。
2.海外や国内のデザイナー達が提案した色:たとえばパリのインディペンデントなブランド<ケーシー/ケーシー>が2020年夏に提案していた鮮やかなグリーンのパンツはディストリクト店のスタッフや顧客に好評で完売しました。
3.グリーンが想起させる"自然"への憧れ:この第3の理由は2021年 春・夏の欧州コレクションでも頻出していたテーマです。その背景には新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響があります。少々長くなりますが解説してみたいと思います。

2020年、多くの人々が外出制限を体験しました。また、日常的に生命の危機を感じざるを得ない状況も味わいました。これらの体験はストレスともなったでしょう。
ヒトが心理的な圧迫感を感じた時、どう対処するのか? たとえばロックダウンのような特殊条件下、そこから逃れたい、それを忘れたい......と思ったとき、人は"自然"に触れたいと思うようです。少し外出して散歩してみたり(日本では可能でした)、それが叶わない場合はベランダや室内で植物を栽培したり......。

こうした"グリーンセラピー"的な対応、アクションをされた方は世界的に多かった様です。自分の例ですと、自宅の小さな庭で育てたゴーヤの発育や、そこに実がなる様を見ることは楽しい体験でした。そもそも冷房が苦手な我が家では可能な限り自然の風をいれて暑さをしのごうとしてきました。我が家において"グリーンカーテン"は天然の冷房装置なのです。毎年、ゴーヤのグリーンカーテンを楽しんできましたが、ゴーヤの素敵なところはそこに実がなり、次には食べられる! ということです。見た目も可愛く、目に優しく、涼しい上に美味しくいただくこともできる。ゴーヤ業界(あるのかどうか不明ですが......)のまわしもの? と言われるかもしれないくらい、僕はゴーヤ押し、です。

そんな家庭菜園やホーム・グリーニング、あるいは大きく"大自然への憧憬"も含め、僕はグリーン色がウケている理由は"自然に親しむ"マインドもあるのではないか? と思った、というわけです。そこまで言うとこじつけ的に感じられてしまうかもしれませんが、いずれにせよ、変な理由でも無く、ネガティヴな連想でもないのではないでしょうか。


夏のゴーヤは終わり、今、自宅で育っているのはレモン。


■ファッションは農業

もう一つ、関連した(発展した)話題です。

僕は"ファッションは農業である"と最近よく話します。たとえばコットンは綿花畑から、麻は麻畑から採取されます。またウールは牧羊の結果であり、羊サン達は草しか食べない哺乳類。つまり農業、畜産業はファッションと不可分なのです。

近年、人々は"口に入れるもの"に関して、とても気を付けるようになりました。農薬不使用や栽培法は食物選択の重要ポイントです。同時に、ファッションもまた"どこでどのように作られ、生まれてきたのか?"が、いまだかつてないほど重要視されています。トレーサビリティとサスティナビリティは不可分なのです。上記の観点から"ファッションは農業である"と考えること、あるいはファッションに携わる人々が農業体験をすることはとても意味があり、また、現代社会やCOVID-19禍のストレスへの対抗にもなる、と考えています。

さあ、2021年は"グリーン"に親しみましょう!

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