New Balance| U1954 MEN

アーカイブの掛け算で、物語が広がるシューズ

既存のシューズを組み合わせた
新しいデザインと履き心地

僕の世代にとって〈ニューバランス〉の数字のモデル名は、連続する番号という認識でした。でも車が増えすぎてナンバーの桁数が増えていくように、スニーカーも種類が増えると、当初ブランドが想定していた枠内に収まらず、ルールが形骸化され、複雑になっていく。そんな中、この新しい「1954」はベースとなった「2002」と「1906」の品番を足して2で割った数字。脈略があるようなないような、でも意味がある、ちょっとした謎かけみたいなモデル名です。

FUG.

「1954」と聞いて、何かの年号のことだと思い、なんかあったかな、と思い出したのですが、ジュネーヴ会議くらいしか思いつきませんでした。どうでもいいのですが、この第一次インドシナ戦争は、フランスの植民地支配とベトナム民の独立という対立に、東西冷戦が加わり、話がどんどん広がってもつれた、近代史の転換点でした。戦争とスニーカーを一緒にするとか、そういう大袈裟なことを言いたいわけじゃなく、歴史の交わりによって時代を動いていたこと思い出しました。

かつての〈ニューバランス〉は新しい機能を開発・搭載するタイミングで、新しいモデルが誕生していました。しかし昨今は、異なるアーカイブを掛け合わせて新しい時代を築いています。この「発明」よりも「編集」から新しいものを生み出そうとする考えは、既存の要素を組み換えていく世の中のプロセスに近い。その点で、この「1954」はとても現代的なアイデアから生まれたシューズといえます。

FUG.

それ故か、今の着こなしにもフィットしますし、履き心地もモダンです。「2002」も「1906」も、ともに2000年代のランニングシューズをルーツに持ちますが、前者のコンセプトがヘリテージなら、後者はスポーツを主語にしている。性格が異なるそれぞれの個性を残しながら、どちらでもない一足にミックスされています。個人的には天然皮革をレイヤードしたクラシックなアッパー、Nロゴをフィットのために働かせるN-LOCKシステムと、固定するプラスチックパーツコンビネーションのバランスが絶妙だと思います。

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小澤 匡行
1978年生まれ、千葉県出身。大学在学中に1年間のアメリカ留学を経たのちに編集、ライター業をスタート。著作に「東京スニーカー史」(立東舎)、「1995年のエア マックス」(中央公論新社)など。