ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

スタイリストTEPPEI氏と次世代による『ひとゝ服』が共創する、ファッションの再編集プロジェクト。

ヒト

2026.03.24

スタイリストTEPPEI氏と次世代による『ひとゝ服』が共創する、ファッションの再編集プロジェクト。

ユナイテッドアローズ社がスタートさせた次世代向けのコミュニケーション施策、第三回目の新プロジェクト『UA CURATED』は、同社が展開する約30ブランドの多彩なプロダクトを横断的に編集し、新たな切り口で発信していくキュレーションストアプロジェクト。外部のクリエイターやカルチャーリーダーをパートナーに迎え、それぞれの嗜好や感性に沿ったテーマでストアを展開します。
今回、スタイリストのTEPPEIさんが昨年手がけたタブロイド『品性の種』に続きディレクションしたのは、「ファッションを通じて、まだ出会ったことのない自分と出会う」をテーマに制作したアートブック『ひとゝ服』。ファッションに強い関心を持つ若年層が、TEPPEIさんと選んだアイテムを身にまとい、被写体として作品の一部となることで、制作過程そのものを学びと出会いの場へと昇華させました。さらに若者自身が商品を選び、言葉を添えるWEB企画「UA CHOOSE」も同時に展開します。
3月にはTEPPEIさんが登壇し、参加した学生さんたちと制作背景や体験、ファッションへの想いを語り合うローンチ記念イベントを開催。『UA CURATED』から生まれた対話や気づきをレポートします。

Photography:Kousuke Matsuki
Text & Edit:Shoko Matsumoto

次世代との接点をつくる『UA CURATED』

『UA CURATED』は、これまでユナイテッドアローズが十分に接点を持てていなかった層へアプローチするためにスタートしたプロジェクト。近年SNSを中心に広がる、価値観の近い人々が集まる「界隈」に注目し、各ストアのキュレーターが独自の視点で商品を編集しながら発信を行います。

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昨年10月には、9つのブランドを軸にTEPPEIさんの考える「品のかたち」を9名のポートレイトとして表現したタブロイド『品性の種。』を制作。特にファッションに関心の高い学生層から強い反応が見られました。その反響を受け、第2弾では学生を被写体としたファッションシューティングを実施。人と服の関係をテーマにしたアートブック『ひとゝ服』を制作しました。今回のプロジェクトでは、全国の服飾学校や大学のファッション系サークルなど約20校に協力を依頼し、被写体となるモデルを募集。オーディションを経て、高校生、大学生、さらには4月にユナイテッドアローズ社に入社予定の新卒者など、多様なバックグラウンドを持つ若者たちが参加しました。「ファッションを通じて、まだ出会ったことのない自分と出会う」をテーマに、WEBサイト「UA CHOOSE」とビジュアルブック『ひとゝ服』という二つの方法で、若者のリアルな感性を表現しています。

若者のリアルな感性を映すWEB企画「UA CHOOSE」

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今回のプロジェクトでは、若者たちのリアルな感性に寄り添ったWEBストア企画「UA CHOOSE」も同時に展開されています。参加した学生たちはユナイテッドアローズのプレスルームを訪れ、同社が展開するブランドの中から、自分が本当に着たいと思うアイテムを自らセレクト。そして選んだ服とともに、「自分らしさ」をテーマに率直な言葉を添えています。WEBストア上には、彼らが選んだアイテムと等身大のコメントが並び、“自分の思う自分らしさ”をリアルに共有する場所となっています。同時にこの取り組みは、ユナイテッドアローズと若者たちがよりフラットな立場で向き合いながら、「今、服を着るという行為がどのような意味を持っているのか」「これからの世代にとってファッションはどのような存在になっていくのか」を探る実験の場でもあります。

スタイリストTEPPEIさんと若者たちが制作したアートブック『ひとゝ服』

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プロジェクトの中心となるのが、スタイリストTEPPEIさんを迎えて制作されたアートブック『ひとゝ服』。この企画では、平均19.9歳の若者たちがTEPPEIさんとともに参加、スタイリングを通して“まだ出会ったことのない自分”と向き合います。そしてその瞬間を写真として記録し、一冊のビジュアルブックとしてまとめられました。TEPPEIさんは、被写体となる若者一人ひとりと丁寧に向き合いながらスタイリングを構築。完成したビジュアルには、若者の瑞々しい感性と、TEPPEIさんの哲学的なスタイリングが重なり合った、独特の世界観が広がっています。このブックは、デジタルではなく書籍という形で全国の書店を通じて社会へ届けられます。ファッションの迫力や空気感を伝える手段として、あえてフィジカルなメディアが選ばれました。

六本木蔦屋書店で開催された『ひとゝ服』出版記念イベント

画像 右:スタイリストTEPPEIさん 左:ユナイテッドアローズ チーフクリエイティブ オフィサー 松本 真哉さん

3月には六本木蔦屋書店にて出版記念イベントが開催されました。イベントは二部構成で行われ、第1部ではスタイリストのTEPPEIさんと、ユナイテッドアローズのチーフクリエイティブオフィサー松本真哉さんが登壇。企画の背景やファッション観について語られました。ユナイテッドアローズの顧客層は、現在「30代後半から40代が中心」だといいます。松本さんは、その世代のファッション観についてこう説明しました。「僕らの世代は、ひとつ大きなトレンドがあって、それを正解として選ぶというような、わりとみんなが同じような格好をする感覚があります」。一方で、いまの10〜20代はまったく異なる価値観を持っているといいます。「今の若い世代は個性尊重型。個性があることが前提で、そこからファッションを組み立てています。これからその価値観が大人の世代にも影響していくと考えたら、果たして僕たち服屋はやっていけるのか。そういう課題意識がありました」。平均年齢19.9歳の若者たちに焦点を当てた今回のプロジェクトは、まさにその問いから生まれました。

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TEPPEIさんは、今回の企画について「個性というものは、時代によって形が変わる。何が個性として立ち上がってくるのかは、その時代の空気とも関係しています。そんな個性の在り方を考えるプロジェクトでした」と振り返ります。松本さんから依頼を受けた際には、ユナイテッドアローズが若者と向き合う意味を考えながら自由に具現化することが大きなテーマだったといいます。また今回のスタイリングで特徴的だったのは、TEPPEIさんのあるルールでした。「今回、被写体が自分で選んできた服は着せないと決めていました」。その理由は、フィッティングでの対話を通して、その人の個性に本当に合う服を見つけるためです。「コーディネートを通して人と向き合う時間でした。どういうキャラクターとしてその人が存在すると輝くのかをずっと考えていました」。トレンドを再現するスタイリングではなく、「人と服の関係」を掘り下げるアプローチこそが、このプロジェクトの核になっています。

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また今回のプロジェクトは、最終的に一冊の書籍としてまとめられました。松本さんは、その理由についてこう語ります。「量よりも質を優先するファッションの概念を見せる企画なので、スマホの中だけではどうしても伝えきれません」。写真の迫力や服の存在感をきちんと残すことにしました。そして、企業としての意思もありました。「ユナイテッドアローズの企業活動を、きちんと記憶として残しておきたかったんです。客観的に捉えられるプラットフォームとして、物理的な形で残していくことが企業文化になっていくと思っています」。また既存のファンに向けては、こんなメッセージもありました。「ユナイテッドアローズはファッションに誠実な会社だな、と思ってもらえたらうれしいですね。弊社は接客の姿勢の評価は高く、スタッフが一人ひとりのお客様に合わせて提案します。それは若い世代の個性と向き合うことにもつながると思っています」。TEPPEIさんも「点と点が重なり、書籍という形でまとめられたのは、自分のワークが句読点のように留まるような重みのあることでした。ぜひいろんな人に見てもらいたいと思います」と続けました。

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学生たちが語る「プロの現場」

第二部では、プロジェクトに参加した4名の学生が登壇し、それぞれが参加したきっかけや撮影現場での体験を語りました。雑誌団体で活動している女性は、以前制作されたタブロイドを見て応募したといいます。「現場は、アトラクションに乗っている感覚でした。プロの方って、それぞれ進め方が全然違うんです。それを見るのがすごく面白かったです」。普段はレイヤードや色を使うスタイルが好きだという彼女ですが、TEPPEIさんが提案したのはシンプルなグレーのロングワンピースでした。「最初は意外だったんですけど、着てみたらすごくしっくりきて。シンプルで洗練された服もいいなと思うようになりました」。TEPPEIさんはそのスタイリングについて、こう振り返ります。「ユナイテッドアローズの服を紹介するということを一旦取り払い、書籍の中に入り込んでもらうためにどうしたら個人として輝くことができるのか考えました。この本の中にいる若者たちは、ある意味何かに取り憑かれたような存在として写っています。彼女がどういう存在であるべきかを考えたときに、あのワンピースだと思いました」

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また学生たちにとってファッションとは何か、という問いも投げかけられました。「“相棒”という表現が一番近いと思います。服によって気分が上がることもあれば下がることもあって、それも含めて自分らしさを感じる存在です」「切っても切り離せない いろんな服がある中で、自分というカルチャーとして、アーカイブとして残していくもの」「心臓の一部。ライフスタイル」「コミュニケーションのツールの一つ」など、さまざまな意見が交わされました。また今回の体験を通して、ユナイテッドアローズの印象も変わったそうです。「以前は“いざというときに買う服”というイメージがありました。でも今回プレスルームに何度も通って、“これもユナイテッドアローズだったんだ”という発見があって。すごく幅の広いブランドなんだなと思いました」。普段パンクスタイルを好む男性も「テイストが違うので自分も周りも困惑していましたが、いざフィッティングルームに入るといろんな服があり、“ユナイテッドアローズはモヒカンでもいけるぞ”と思いました」とユニークな感想を述べました。

画像 右から 加藤龍之介さん(文化学園大学)、野本陽波さん(國學院大學)、相川史奈さん(東京経済大学)、平野裕大さん(文化学園大学)


「人と服」の関係を問い続ける

今回のプロジェクトは単なるファッション撮影ではなく、若い世代の個性に触れながら、服屋としての未来を考える「人と服の関係」を改めて問い直す試みとなりました。イベントの最後には、松本さんより「ユナイテッドアローズとしてこれからも、ファッションとは何かという問いを、社員や顧客とともに探し続けていきたい」という言葉が語られました。個性が当たり前になった時代に、服はどのように人に寄り添うのか。その問いは、この『UA CURATED』をきっかけに、これからも続いていきます。

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