ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

困っている誰かのためになるのが嬉しい。 ヘアスタイリストshucoさんが持つ、やわらかで真っ直ぐな感性。

ヒト

2022.12.20

困っている誰かのためになるのが嬉しい。 ヘアスタイリストshucoさんが持つ、やわらかで真っ直ぐな感性。

パリでキャリアをスタートし、現在は東京を拠点にヘアスタイリスト、毛髪診断士として活躍するshucoさん。一昨年からは「もっとヘアスタイリングを楽しんでほしい」という想いを込めて、ヘアアクセサリーブランド〈TRESSE〉を手掛けています。彼女の独自のキャリアから、そのセンスの秘密、今後の活動にかける想いまで、彼女のこだわりをたっぷりと伺いました。 また、〈TRESSE + uka for UNITED ARROWS〉のアイテムを使ったヘアアレンジもぜひ参考にしてみてください。

Photo:Wataru Kakuta(TRIVAL)
Text:AYANA

もともとは、メイクアップアーティストに なりたいと思っていた。

─そもそも、なぜヘアスタイリストを志したのか、というところから伺ってもいいですか?

わたしが持った最初の夢は、映画に関わるお仕事をすることでした。中学生の頃は映画が大好きで、物語の世界観を作る仕事に就きたいなと漠然と考えていたんです。あるとき、『ファッション通信』というテレビ番組を観はじめました。パリやミラノのコレクションレポート、ファッションデザイナーたちへのインタビューなどを放映するもので、すっかり魅了されてしまって。スペクタクルに溢れたファッションの世界に、映画を超える面白さを感じました。

─では、そこからヘアスタイリスト志望に?

いえ、最初はメイクアップアーティスト志望でした。ファッションの世界を考えたときに、デザイナーやスタイリストは難易度が高そうだけど、メイクならできるかも! としっくりきて。小さい頃から手先が器用と言われてきたし、アトリエ教室に通って工作をしたり、絵を描くことも好きだったので、その延長にメイクアップがあると感じましたね。ただ、海外ではヘアとメイクって完全に分かれていますが、当時の日本では「ヘアメイクさん」が主流で、メイクする人はほとんど美容師免許を持っていました。なので、まずは美容師免許を取らなければならないな、とは思っていて。

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取得のためには美容専門学校へ行く必要があったのですが、親が「専門学校よりも、まず大学に行きなさい」という人で、その選択は許されなかったです。そこで、ファッションプログラミング科という学科のある、芸術に強い大学へ進学しました。写真の撮り方、ディスプレイの作り方、イラストレーターやフォトショップの画像ソフトの使い方など、ファッションにまつわることを広く学べるところでしたね。

─ヘアアーティストの道へ進む以前に、そんなご経歴があったんですね。

そこに在籍しながら、夜は通信でメイクの勉強もして。「ああ、やっぱりわたしはこの世界で仕事をしたい」という思いが強くなり、まずはコネクションを作らねばと、大阪コレクションのプロデュース会社でバイトを開始しました。ケータリングの手配なんかをしながら、ヘアメイクさんたちを観察する日々。その後、そこで出会った尊敬できるヘアスタイリストさんの美容室に就職しました。

─その後、関西から東京へ出てこられたんですね。

はい。美容室で働きながら美容師免許も取得しました。ちょうどその頃、パリでご活躍されているヘアスタイリストのトモヒロ・オオハシさんがアシスタントを募集していたので、すぐに渡仏。トモヒロさんのもとで働くうちに、どんどんヘアスタイリングが面白くなっていったんです。

パリから東京へ。 拠点を移して気づいた「美容のためにできること」。

─数年後に独立されてからもパリの第一線でご活躍だったわけですが、2015年から少しずつ日本でのお仕事も増えたんですよね。

最初の2年は2拠点でやっていましたね。本当はロンドンに気持ちが向いていたんですが、ビザを取るのが難しくて、それならと日本に来ました。東京とパリはまったく勝手が違ったので、それもまた新鮮で。

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─どんなところが異なっていましたか?

パリではハイファッションの世界にどっぷりだったので、とにかく独創的なクリエイションが求められました。ヘアスタイリングはあくまでも「美しい形」や「芸術的な表現」を作るためのもので、なんなら髪を痛めるのもいとわない。ですが、日本では「髪にいいこと」を求める空気があって、「美容」の概念が成熟していることに驚きました。カテゴリーも細分化され、一般人であっても知識が深い人がたくさんいる。これはすごいぞ、新しいことができそうだなと思いました。だから毛髪診断士の資格も取りましたし、ヘアケアの取材を受けることも多くなりましたね。

─shucoさんは、髪についての知識を惜しみなく教えてくださいますよね。そういうヘアスタイリストさんって、もしかしたらいままであまりいなかったかも?

わたしは小学生の頃から脱毛症で、抜けては生えてを繰り返してきているんです。日本でもフランスでも本当に色々なことを試してきて、たくさんの先生方とお会いし、ステロイドから漢方の治療まで、解決方法を模索してきました。そのなかで、良かったこともそうでないこともありましたが、髪のトラブルについての知識や経験はかなり蓄積されていました。

日本で取材を受けるときに、その知識について話すと、みなさん驚いて喜んでくださるんです。同じことに悩んでいる人の励みになったり、助けになるからと。そこではじめて、わたしのこれまでの経験は無駄じゃなかったのかも、と思えました。

〈TRESSE〉は、 ヘアアレンジが苦手な人にこそ使ってほしい 。

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─東京では、ファッションから美容まで広いジャンルでご活躍されていたshucoさん。新たに〈TRESSE〉を立ち上げたのは、どんな経緯だったのでしょう? 

コロナ禍が大きなきっかけです。当時は撮影もキャンセル続きでとにかく時間があったので、インスタライブをはじめたんです。みなさん時間はあるけれど外出できないという状況で、ストレスを受けて髪や頭皮のトラブルに悩んでいるという声が非常に多かった。美容室にも行けないし、誰にも話せない。そんなお悩みを聞く機会に恵まれました。そのうちに、こんなアイテムがあったら便利なんじゃないかというアイデアがどんどん生まれて、それらがカタチになったのが〈TRESSE〉です。

─どんなふうに便利なんでしょうか?

わたしも自分自身がヘアロス経験を持っているからわかるのですが、例えば白髪や薄毛があるときって「隠したい」や「恥ずかしい」、あるいは「周りに気を使わせたくない」という気持ちが生まれますよね。でも、いかにも「隠しています」とするのもネガティブな印象になってしまい、自分自身の気持ちも晴れません。ですが、〈TRESSE〉のヘアバンドなら「ファッションを楽しむ」というポジティブな気持ちで使えます。「薄毛、ハゲ隠し」で検索したものじゃなくていい、ファッション性の高さを諦めずに、コンプレックスを軽減できるものがあれば、悩んでいる人にも手を差し伸べられるんじゃないか、と思います。

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画像 髪の長さを問わず楽しめる、小さめのシュシュにこだわりました。ダイレクトにシュシュでひとつにまとめてからリボンを結びます。上で結んでも、下で結んでも可愛くなるので、様々な表情を楽しんで。リボンの幅があるためシュシュの間の髪をしっかり覆い隠すことができ、清潔感のある仕上がりに。垂れ下がったリボンに動きが出るよう、パイピング処理にも工夫を施しています。

─〈TRESSE〉のアイテムは、使い方がとても簡単なところが嬉しいですよね。

実は、わたしはそんなに自分のヘアアレンジに気合いを入れるほうじゃないんですよ。よく、凝ったヘアアレンジを紹介している美容師さんの動画があるじゃないですか。「shucoちゃんもやってみたら?」と言われた際に、「いや〜、紹介したいスタイルが特にないな…」となってしまったくらい。どこかラフで、シンプルなスタイルが好きなんです。ひとつに縛るだけだけど、スカーフをキュッと巻くくらい、さりげないのが良い。だから、わたしが作るものは難しくて使いこなせない、なんてことは絶対にありません。どんなに不器用でも、簡単にドレスアップした印象に見せられます。

─この、さりげなくて抜け感のあるおしゃれな世界観には、パリでのご経験が活きているのでしょうか。

そう思います。ヘアだけでなく、アクセサリー、ライフスタイル、旅行、インテリア、すべてのことにおいて多感な20代を過ごしたパリの影響を受けていて、そのエスプリが自分の中に根付いているなと思います。スカーフやシュシュも、フランスの方はよく使いますし。そこにちょっとした工夫を加えているのが〈TRESSE〉なんです。例えば、今回のコラボレーションで出させていただくタイプのシュシュ。シンプルにシュシュでひとつ結びしたところにスカーフをきゅっと巻くとおしゃれだけれど、知らないうちにスカーフだけが落ちてしまっていたことが何度かあって。なので、シュシュとスカーフを一体化させたものを作りました。

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─今回は、〈TRESSE〉〈uka〉〈UNITED ARROWS〉のトリプルコラボということですが、こだわった点を教えてください。

ホリデーシーズンなので、シンプルで大人っぽいシュシュに、大人でも楽しめるラメのネイルを合わせたいと思いました。プライベートでも親交のある〈uka〉の渡邉 季穂さんにご相談したら、やろうよ! とおっしゃってくれて。クリアな発色でラメだけを重ねられるものがよくて、カタチが不揃いでおしゃれなものにしたかったのですが、わたしの好きなニュアンスを汲み取り、あっという間にカタチにしてくださり、開発もとてもスムーズでした。〈uka〉にはこれまでラメネイルがなかったので、きっとみなさんにも喜んでいただけると思います。

─ホリデーの華やかさもありつつ、デニムスタイルなどにも合わせやすい素敵な組み合わせですね。

ヘアアクセサリーというと、甘さのあるものをイメージされることが多いのですが、〈TRESSE〉のものはシックでさりげない空気感にこだわっています。スマートさ、知的な印象も大事にしながら、簡単にラフな華やかさを楽しんでいただけます。

ヘアドネーションへの協力は、 自分の使命のひとつ。

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─では最後に〈TRESSE〉が売上の一部をJHDAC(18 歳未満の病気の子どもたちにウィッグを提供している団体)へ寄付していることについて、お伺いさせてください。

わたしがヘアドネーションに興味を持ったのはパリにいたときです。アメリカのニュースで、子どものヘアウィッグについて取り上げているのを見て、良い取り組みだなと印象に残っていました。パリの人ってマメに美容室に行かないことも多くて、みんな髪が長めなんですよ。「寄付すればいいのに」なんて言っていたら、徐々に志願する人が現れて。ちょうどその頃自宅でヘアカットを受けていたので、ドネーションに協力するようになりました。

それから、パリでウィッグの会社の広告のお仕事をした経験も大きいです。部分的なウィッグを扱うところで、撮影では実際にヘアロスで悩んでいる子どもたちにモデルになってもらいました。みんな、わたしたちがウィッグをつけてあげた瞬間、顔がパアッと明るくなって「明日から学校に行ける」って。髪の毛って人の人生を大きく左右するんだなと改めて思いました。まして子どもなんて、自分でできることが限られているじゃないですか。頭のサイズも大きくなっていくし。そういう人たちの力になりたいという気持ちが強くなりましたね。

─ご自身も髪のことで悩まれてきたからこそ、より伝わるものがありそうですね。

わたしより大変な方がたくさんいらっしゃるのはもちろんとして、自身のヘアロス経験と、ヘアスタイリストとしての経験があるからできることってあるんだなとは感じています。可能な範囲で、最大限のことをしたい。以前は東京でも場所をお借りして、定期的にヘアドネーションのためのカットをしていましたが、いまはなかなか時間が取れなくなってしまっています。せめて経済的な支援を継続的に、と思っています。

PROFILE

shuco

shuco

ヘアスタイリスト

毛髪診断士東京でのサロン勤務を経て渡仏。パリを拠点に主にヨーロッパのモードファッション業界でヘアスタイリストとして活躍。2015年より東京に拠点を移し、ヘアスタイリストとして活動する傍らで、毛髪診断士として髪と頭皮の健康にまつわる啓蒙や、ヘアドネーション活動にも力を入れている。2020年、〈TRESSE〉を始動。
instagram:https://www.instagram.com/shucohair/
TRESS:https://tresse.jp/

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