
ヒト <UNITED ARROWS PODCAST>
2021.06.15 TUE.
PODCASTでお送りするOMOIDE EPISODES #2
もしも私たちがスタイリストじゃなかったら…?
ユナイテッドアローズの30年の軌跡を振り返る写真集「United Arrows」の発売に合わせて、インスタグラムとサイトで〈UNITED ARROWS ARCHIVE〉がスタート。その中の〈OMOIDE EPISODES〉は、毎回様々な方をゲストにお迎えし”思い出”を語っていただく音声コンテンツです。第二回目のゲストは、人気スタイリストの安⻄ こずえさんと辻 直⼦さんです。お⼆⽅は、カタログ制作やコラボレーションアイテムなどの取り組みでお世話になっているスタイリストさんです。対談の場所は、ユナイテッドアローズ 六本⽊ヒルズ店。今⽇も素敵なお召し物を着ていらっしゃいます。まずは、コーディネートのお話をお伺いしましょう。 PODCASTでは、全文をお聴きいただけます。
Photo:Kenta Sawada
安西:私、元々メンズファッション出身でして。このシャツのブランドは、まあメンズのYシャツですね。その中でもこの〈シャルべ〉はすごく好きなブランドで、生地感もいいし。いつも〈ドゥロワー〉が別注していて、毎年1枚ずつそれを買っていて。今季はこのノーカラーで、比翼で、そして大好きクレリックっていう。というシャツに、コーデュロイのカーゴパンツのサスペンダー付きを着て。割と私こういうメンズっぽいコーディネートが好きなので、いつもこういうのにヒールを履いたりしている本日でございます。
辻: 素敵です。らしいです、とても。私が思っている安西さんって感じがする。私はよく〈エイチ ビューティ&ユース(以下H)〉に買い物に行くんですけど。ふらっと行って、「あ、なんかこれいいかもー」って思ったものを。ラックでわかるよね?吊している状態で、これいいかもとか、似合うかもって。
安西:それ、“スタイリストあるある”だよね。鼻がきいていると思うのよ、多分。普通はそこに店員さんに来ていただいて、話して、なるほどっていう流れがあると思う。
辻:あの広い店内を見て、唯一これだけを手にとって、試着して、そのまま買って。色違いで悩んだんですけど。あ、何を着ているかっていうと、Hのセットアップなんですけど、トップスは背中が開いている。ちょっとだけ、がっつりじゃなくて。でもセットアップで着ると、私の年齢に合った感じにも見えるかなって思って。ちょっとレトロな感じにしたくて、着てみました。
安西:スカート丈も長くて、すごく似合ってる。好きなものと似合うものをやっぱり熟知しているから。やっぱり見てる量も半端ないし、私たち(笑)。直子が目掛けて選べるのは私も一緒。
辻:みんなそうなのかなって、当たり前に思っていたけど。たくさんある中で、これしかパッと取らないで、試着して買うこのスムーズさって。
安西:鼻がきいちゃう。
自分に似合うものを見つけるのは簡単なことではないはずです。一体、安西さんや辻さんはどのようにしてそれを見つけられたのでしょうか?
安西:男の人が着てる「クレリック」がすごい好きで。私の場合、身長もちょっとあって、シャツが着やすいっていう。自分の中では似合うと思っていて。でもその中でもちょっと捻りがあるものが好きなんだと思う。だからそれがコンサバといえば、コンサバ?コンサバのちょっと外しみたいなのが実は結構好きで。フェミニンとかも日によってあるじゃない?その時のモードっぽいの着たいなっていう時もあるし。


辻:一つじゃないのが確かだし、人が私のテイストを見て何か思ったとしても、私は自分の中ではコンサバだし。でも私が思うコンサバであって、なんかいわゆる“コンサバ”っていうのとは繋がらないのは確か。私もすごい父親に影響されていて。フェミニンな洋服を多く着ているけど、影響されたりヒントになるのは男の人からの方が断然多くて。自分らしいとかって、人ってそんな単純じゃないよね、テイストっていうものって。
安西:直子と共通するところは、ショートパンツとかミニスカートが大好きっていう。さっきお店を見ていて「ある!」って思って。足の見える分量がコンサバかどうか、野暮ったいかどうかの瀬戸際がね、大事だよね。
辻:露出したいんじゃなくて、このバランスを作るときにこのくらい足が見えないと、こうなっちゃうとか。ミニが好きってね、バランスだよね。だからコンサバかどうかは、私たちにとってはショートパンツとミニスカートとか、パンプスとか。そういう私を作っている核になるものというか。私は何が好きで、何が似合うかの方が何よりも大事だから。その核になっているところが、もしかして私的にはコンサバっていうところなのかもしれない。
カタログやオウンドメディアのコンテンツだけでなく、雑誌などの企画でもよくプレスルームに来ていただいております。そんなお二人に改めてユナイテッドアローズについてお話を聞いてみました。
辻:時代によってアイテムはちょっとずつバージョンアップされていくから。そういうのを踏まえて、やっぱり〈ユナイテッドアローズ〉に行ったら、いつもその時の気分のベーシックなアイテムがあったりだとか、センタープレスのパンツがあったりだとか。他にもあるけど、ここのが良いみたいな。
安西:形がいいとかね。
辻:そうね、ざっくりいうとそういうのが、〈ユナイテッドアローズ〉って感じかなって思う。
安西:私も似ているけど、レディースってベルトレスのハイウエストパンツがいっぱいあって、けど私的にはベルトをしっかりしたいんですよね。ベルトもちゃんと売ってるのに、結構ベルトレスで「あれ?」ってなって。だから必ず〈ユナイテッドアローズ〉に行ったらきれいな形の、タック入りやハイウエストでもいいんですけど、ベルトレスじゃなくてちゃんとループのある、そしてちゃんとベルトができて。オリジナルでもインポートでも、その中で必ずあるっていうのは今すぐ欲しい。なかなかないんですよ。


辻:ないかも。女の人って、男の人とこだわるポイントが違うから。女の人って、可愛いものを上にも横にも下にも広げていきたい買い物の仕方をする。ベルトを買うとか、そのこだわりが意外と細部にいかない?もっとパっと見っていうか、“なんか可愛い”とか“なんかきれい”とか、良いも悪いも女の子はそれで良いから。そういう意味でなんてことないけど、こだわっているものが〈ユナイテッドアローズ〉にあるって感じが望みだよね。
ここで話は変わります。テーマは“リラックスウェア”について。ファッションのカジュアル化が進む中、ウィメンズ服のカジュアル化についてお二人はどう思っていらっしゃるのでしょうか?
辻:その言葉あんまり好きじゃないよね?
安西:別に良いもの着ていても家でリラックスしてるし。なんかグダグダした感じのイメージなの、今の“リラックス”って。
辻:そうそう、ルーズで伸びて洗えて楽チンでって、私は洋服に求めてないし、背筋を張りたいし、おしゃれをしているっていう盛り上がりが欲しい。でもスウェットも着るし、買う時には超こだわる。色も形も、どういうフードの付き方とか。だから私たちにとっては“リラックスウェア”っていうカテゴリーではない。ただのスウェットっていう。
安西:私もスウェットで出掛ける時もどれだけこだわってるかって。超目立ってる、一人で(笑)。真っピンクのニット着てね。スニーカーとかで絶対散歩しないし。
辻:だから“ワンマイルウエア”とかも好きじゃない。“ワンマイル”って、制限されたくない。何でかっていうと、私たちそれなりに一生懸命、丁寧に色んなことを通じて何かを伝えようとしてるのに、みんなが楽チンとか、体型カバーとか、着回しとか。大事だとは思うんですけど、そこを一番に掲げられると、それって違うと思うっていうか。それに洋服を作る側が立ち止まってる気がしていて。ファストファッションしかり、あれはあれで悪いとは思ってなくて。そこにちゃんと欲しい人たちがいるから良いと思っていて。ただ、そうじゃないブランドのお店が、洋服を作る上で安全にしちゃってるところがあるから。
安西:守っちゃってるよね。
辻:考えてないモノ作りが多くなってる気がする、この10年ぐらい。だからやっぱり、このタイミングで私たち含め色んなことを考え直しているし、なんかもっと面白いことをしたいって思った時に洋服も決して無駄なものじゃないって。
安西:絶対に無駄じゃない。
辻:すごく大事なものだって思ってるから。考えるチャンス、みんなに。それはすごく願ってます。
スタイリストだからこそ見えるもの、感じるものがあるようです。スタイリストではないお二人の姿はちょっと想像しがたいですね。
辻:妄想をする人だからスタイリストになったんだろうなっていうのがあるかな。なんか良かったことある?なんか当たり前すぎてね。
安西:よかったことしかないけど。私なんて、メンズから入ってるから、男も女もできるじゃん。だから彼氏とかできたら素敵に着せてあげられるじゃん(笑)。それってすごい得だなって思って。
辻:いいじゃん。私逆にね、「こうした方がいいよ」とかって言われたら「うるさいな」って思うかも知れないけど、前にちょっとだけ言われて。でもそれが嬉しかったの。それを言ってくれた人は私よりセンスがいい人と思ってるから。
洋服って、買う人がどんな思いでどんな考え方があって。手元に届くまでの長い道のりを知らないし。だけどそれを知っちゃった時に、私にとってその洋服の価値が上がった。この仕事だったからかは分からないけど、そういうことを感じれて、知れて良かったって思ったから、私の中でより一層洋服の価値が上がったっていうか。着ても素敵になれるし、そこにちゃんと想いがあるって、こういうことだったんだって思って。
安西:もちろんこの仕事を始める前から洋服が大好きで、ミーハー度が高かったから。とりあえずアシスタントって「こんな過酷なんだ」っていうそれしかない。特にメンズだったし。でも辞めようって思うことが一度もなくて。30歳手前で独り立ちだったから、そこから先ずっとお仕事して、レディースでやって、だんだん“メンズライク”が出てきたときに、私こういうの知っていて本当よかったって思って。ネクタイ結べないスタイリストさんとかいた中で、ビシッとできる自分がすごく誇りに思えたし、あの時代大変だったけど、本当によかったなって思って。あんなにメンズの服を説明するのが嫌になるくらいに思ってたけど、意外と自分もそういうことを知るようになったし、知りたいと思ったし。スタイリストっていうことをもしやってなければ、そんなことを知らずにこの歳で。ある程度のことは知っていても。
辻:私たちの仕事って知ろうとしても、知れなかったりするし。別に必要ないと言われれば、そうなんだけど。価値をあげられるのは自分自身だから。それは良かったよね。
安西:良かった。私たちが素敵見えできる価値がさ。私たちの気分が上がってないと絶対に素敵にはできないって思うしね。
辻:気合を入れるんじゃなくて、“手をかける”っていうくらいでね。自分に手をかけてあげるっていう。ある程度ずっとしててあげたいかなって思います。
安西:だからそんな手助けを私たちができることが、何よりもみんなが喜んでくれるのであれば、それが私たちの天職で、スタイリストをやって良かったってなって。これからもやり続けて、頑張ろうって思えるかなって。
辻:その通りですね。
今日はスタイリストの安西 こずえさんと辻 直子さんにお話をお届けしました。次回もお楽しみに。