
ヒト
2019.04.17 WED.
バイヤーとショップスタッフに聞く
「united LOVE project」に関わる意義、その思いとは?
2010年からスタートしている「united LOVE project(通称:ラブプロ)」。“着たいモノを着て、ファッションを楽しみながらチャリティを”をテーマに、毎回さまざまな人気デザイナーとコラボレーションし、スペシャルなアイテムを発信しています。毎年好評を博しているプロジェクトに対して、ユナイテッドアローズのバイヤーとショップスタッフはそれぞれどのような思いを持って向き合っているのでしょうか? 原宿本店にて、ウィメンズバイヤーの大村祥子さんとショップスタッフの渡邉早樹さんにお話を伺いました。
photo_Koichi Tanoue
text_Kana Yokota
ファッションを楽しみながら自然にチャリティに関わる。
―まずはお二人の「united LOVE project」への思いをお聞かせください。
大村:「united LOVE project」は年に2回のプロジェクトですが、ファッションを通じて社会に売上の一部を還元できる機会としてとても意義があることだと思っています。お客さまが商品を気に入ってご購入されると、それが結果的に東日本大震災などで被災された方への支援活動に役立てられるところがポイントで、ファッションを楽しみながら自然に支援ができるというプロジェクトなんです。
渡邉:10年前から取り組んでいるプロジェクトということで、店舗スタッフとしても思い入れがあります。普段の生活の中で社会貢献やチャリティに参加する機会があまりなかったこともあって、ファッションを通してチャリティができるということ自体も素敵なことですし、意義を感じます。
―店舗でのお客さまの反応はいかがでしょうか?
渡邉:やはり10年も続いていると、常連のお客さまも認識してくださっているので「今年はこういうテーマなんですね」といったお言葉をいただくこともあります。たとえ「united LOVE project」のアイテムを求めて来店されていなくても、目に止まると「今回のもかわいいね」「素敵だね」と感想を言ってくださるので、浸透しているのだなと感じます。はじめて知るお客さまは、基本的にはアイテムやデザインを気に入って手にとってくださって、商品タグの違いに気づいて「これを買うことでチャリティに参加できるっていいね」と喜んでくださいます。
大村:それは嬉しいですね。チャリティのプロジェクトである以上は、普段のコレクションを見ていただいているお客さまだけでなく、より幅広いお客さまに手に取っていただくことが大事です。それぞれのブランドのデザイナーの方々にも、デザインやカラーバリエーションなど、よりたくさんの方にかわいいと思っていただけるデザインを意識してつくっていただいています。
渡邉:インラインのアイテムよりお求めやすい価格帯というのもポイントですよね。好きなデザイナーさんの服を手の届きやすい値段で購入でき、かつスペシャル感のあるアイテムに仕上がっている。デザイナー目当てで来られるお客さまにもおすすめしがいがあります。
大村:ブランドを知っていただけるチャンスにもなりますよね。
渡邉:ユナイテッドアローズ 原宿本店はオリジナルから、コレクションブランドまでお取り扱いアイテムのラインナップが幅広いです。これまでの「united LOVE project」にはインナーやシャツアイテムもあって、コーディネート提案をする際に、「こういったものもありますよ」とお伝えしやすいアイテムが多いと感じています。
猛暑を乗り切る! カットソーワンピースを展開。
−2019年の「united LOVE project」の第一弾はPVC素材のバッグとスウェットでしたね。第二弾はどのようなアイテムなのでしょうか?
大村:第二弾は「カットソーワンピース」を主軸に、夏に向けた雑貨類も別注しました。特にカットソーワンピースはここ数年、日本でも猛暑日が続いていることもあって、“洗える”素材で気軽に着ていただけるようなアイテムで、デザイナーの方々にオファーさせていただきました。
渡邉:カットソーは夏にお探しの方が多いですが、ワンピース丈は一枚でも着られるうえ、ボトムスとのレイヤードも楽しめるので、3月頃から購入される方がたくさんいらっしゃいます。お客さまにおすすめしやすいラインナップですね。
大村:「united LOVE project」は毎回店頭スタッフの意見も取り入れてテーマを決めているので、こういったアイテムが欲しい! という声はとても貴重です。毎年のテーマからは時代感も感じ取れます。その時のトレンドもあれば、天候が反映されることも。今回はまさにそうで、去年はみなさん厳しい暑さを体験されましたよね。ここまで猛暑が続くと「ファッションは我慢!」とも言っていられない。そんななかでも楽しめるファッションは何だろうということを意識してつくりました。
―今回ご協力していただいたデザイナーさんとのエピソードをお聞かせいただけますか?
大村:「united LOVE project」のアイテムは、多くのお客さまがお買い求めいただきやすい価格帯や素材のイメージが先に決まっているなかでアイテムをつくるので、デザイナーの方々にとってはインラインのコレクションをデザインされるよりも難題なこともあると思うんです。それにも関わらず、毎回オファーさせていただくと、みなさん即答でご快諾くださって。「一人のデザイナーとして被災された方に何ができるのだろうと、このプロジェクトを通して考え直すきっかけになった」と喜んでいただけることがユナイテッドアローズとしてはもちろん、バイヤーの私自身も嬉しいです。
例えば<SAYAKA DAVIS(サヤカ デイヴィス)>のデザイナー時本紗弥加さんは、現在生活の拠点をアメリカにおかれているので、なかなか母国・日本の被災地支援に関わる機会がなかったこともあり、今回のプロジェクトにとても意義を感じてくださいました。自分の好きなファッションで貢献できるということ、そして個人よりもユナイテッドアローズのお客様と取り組むことで、より多くの被災者の方々に支援できることが嬉しいとおっしゃっていました。
渡邉:そういったエピソードを聞くと、ブランドのファンの方はさらに「united LOVE project」のアイテムを着てみたくなりますね。お客さまにもお伝えしたいと思います。どのブランドも、インラインで人気のアイテムのディティールを取り入れているところもポイントですね。
大村:そうなんです。<SAYAKA DAVIS>はダブルストラップのディティールのワンピースが定番でユナイテッドアローズのお客さまにも好評なので、そのデザインを取り入れてつくっていただきました。<TICCA(ティッカ)>も“ツイストスリーブ”のディテールをカットソーに落とし込んだ一着です。<INSCRIER(アンスクリア)>はデザイナーさんから赤とグレーでつくりたいとご提案いただいたのですが、理由を聞くと、赤は「united LOVE project」への情熱を表す色、グレーは周りを引き立てる“調和”の色だと。そんな意味を込めてくださったことも嬉しかったです。
渡邉:とても素敵ですね! そこまで考えて表現していただいていることは嬉しいですし、お客さまにも積極的にお伝えしたいです。それぞれにブランドのアイコニックな特徴が表現されている点も、お客さまとのコミュニケーションの際に話題が広がりそうですね。「united LOVE project」のアイテムを通して、そういったデザイナーさんの思いをもっとたくさんの人に知っていただきたいと思いました。
大村:ブランドによっては一部店舗でしかお取り扱いがないアイテムもあるので、そういう意味ではブランドを手に取ってご覧いただける貴重な機会。幅広いお客さまに向けたデザインでありながら、デザイナーさんの特徴やこだわりが詰まったアイテムなので、ぜひ多くの方に知ってもらいたいです。
「united LOVE project 2019」の第二弾となるアイテムは、5ブランドとコラボして「カットソーワンピース」をテーマにアイテムを制作。一枚でワンピースとしても着用でき、ボトムスとレイヤードしてトレンド感のあるスタイルにも重宝するラインナップに。写真左から<FILL THE BILL>、<INSCRIRE>、<TICCA>、<TOGA PULLA>、<SAYAKA DAVIS>
<Fatima Morocco>からはカゴバッグと、インラインでも展開しているバブーシュをアップデートしたアイテムが発売に。インパクトのあるエスニック柄が、春夏らしい着こなしを後押ししてくれそう。どちらもブラック、レッド、コバルトの3色展開。
時代感やお客さまのニーズに合わせた商品を開発し、提供していきたい。
−購入する側としても、ショップスタッフの方にそういったお話を伺えたら嬉しいです。「united LOVE project」の2019年の第二弾も、それぞれに魅力がたくさんありますね。
大村:ありがとうございます。ゴールデンウィークや夏休みもありますし、機能的なお洋服は重宝すると思います。
渡邉:大活躍間違いなしですね。今後もし機会があれば、メンズ向けアイテムもあればいいなと思いました。カップルでいらっしゃるお客さまも多いので、男性の方にも関心を持っていただけると更にプロジェクトの意義も大きくなるのかな、と。ウィメンズ、メンズ両展開のブランドもありますからね。
大村:確かにメンズでの取り組みも今後思案したいですね。「united LOVE project」はバイヤーとしてもデザイナーさんと一からものづくりができる貴重な機会なので、個人的にもすごく思い入れがあります。今後もバイヤーとして、ユナイテッドアローズでしか購入できないような貴重なブランドやアイテムを発掘したり、魅力的な別注アイテムをつくったり、時代感やお客さまのニーズに合わせて商品を開発していけたらいいなと思っています。
渡邉:私もショップスタッフとして店頭に来てくださるお客さまに「面白い服だね!」「こういうのも似合うんだ!」という言葉をいただくととても嬉しいです。ブランドのバリエーションも豊富なので、なるべく一つのブランドだけで完結しないように、ミックススタイリングの楽しさをお伝えできればと思っています。
INFORMATION

1着につき500円が寄付金となる、ユナイテッドアローズ ウィメンズのチャリティプロジェクト。
※第二弾の支援先は、社会福祉法人中央共同募金会「赤い羽根『災害ボランティア・NPO活動サポート募金2』」と「赤い羽根『災害ボランティア・NPO活動サポート募金・九州』」、「赤い羽根『平成30年7月豪雨災害ボランティア・NPO活動サポート募金』」となります。寄付金は、復興活動を支援するNPOなどの活動費に充てられるものです。
PROFILE

大村祥子
ユナイテッドアローズ 原宿本店 ウィメンズ館にて販売を経験後、2014年から商品部に所属し、商品企画に携わる。2017年よりユナイテッドアローズ ウィメンズバイヤーとして、買い付けなどを担当。

渡邉早樹
ユナイテッドアローズ 六本木メンズストア(現在は閉店)などでメンズドレスを担当後、銀座店で副店長、大丸東京 ウィメンズストアで店長を経験。2017年には原宿本店リニューアルプロジェクトに参加。その後原宿本店へ異動し、現在に至る。