
モノ
2017.05.11 THU.
モノづくりに新しい視点を加える
〈オデット エ オディール〉の“QCミーティング”
今年の4月で9回目を迎える〈オデット エ オディール〉の“QCミーティング”。 QCミーティングとは、お客様に安心して、長く、靴を履いていただくため、モノづくりにおける問題の解決や、情報の共有をするカンファレンス。モノづくりに携わるお取引先様が一堂に介する場とあって、そのトピックスは専門的で奥深く、刺激的。業界内でも注目されているこのミーティングに密着し、主宰者の想いや当日の様子をご紹介します!
Photo:Takeshi Wakabayashi
Text:Noriko Ohba
数値に現れた結果からも一目瞭然。ミーティング効果の高さとは!?
〈オデット エ オディール〉で最初にQCミーティングが行われたのは、2013年の春。メーカーを中心としたお取引先様が集まり、情報をシェアし合うことは靴業界において、とても珍しいことだそう。
そもそも、このような会議を主宰したきっかけは何だったのでしょうか。主宰者で、生産管理担当の山田さんに尋ねると「第一は、お客様に長期的に高いクオリティの靴を安心して履いていただきたいという想いからスタートしました。そのために私たちにできることは何だろうと考えたことがきっかけです」とのこと(写真右)。
「同じ場に集まって、直接顔を見ながら話をすることは、文書で情報を共有するのでは得られない効果があると感じました。ほかの工場の技術や工夫を生の声を聞きながら得ることで、自分たちだけではわからなかったことに気がついて、トラブルを事前に防ぐこともできる。それだけでなく、メーカー様同士、これまでになかった横のつながりが生まれることで、靴づくりへの意識もより高まるのではないかと思いました」と國岡さん。
「ミーティングは、実際の事例、原因、対策なども挙げながら進行しますので、それぞれに持ち帰って、さらに工場内で共有し、明日からすぐにやり方を見直す、改善するなど、即アクションにつながるのもいい点だと思っています。また、私たちもこのミーティングで参加いただいた方から『こうすればもっと美しく仕上がる』など技術的な意見をいただき、次の企画でデザイン面に反映することも多々あり、双方で刺激や学びがあります」と、商品課 課長の丸谷さんは語ります。
「ふんわりとした話をするのではなく、ときにはシビアで耳の痛い話でも実践へとつながる会議となるよう、私たちも毎回ミーティングの内容は唸るほど考えます(笑)」と山田さん。「回数を重ねると、取り上げたネタが増えていくので、今回はどんなことを取り上げるかは毎回悩みどころです(笑)。トレンドや問題点など“今”起きていることへのアンテナは常に張り巡らせて、ときには工場さんへ出向き取材をし、トピックスをつくっています」。結果、回を重ねるごとにおのずと内容は深く濃く、専門性も高まっているのだとか。
お客様から高い信頼をいただくためにと、結果にとことんこだわったミーティング。会をはじめて以来、返品数なども大幅に減るなど数値にもしっかり現れていますが、参加いただいたお取引先様のなかには、最初は戸惑う方も多かったそう。そんな声を受け止めながらも、何とか参加してよかったと思ってもらえる内容にしたい、と熟考を続けていく途中、転機が訪れました。「これに気をつけて欲しい、改善してほしい、という話だけでなく、私たちが工場さんを見せていただいたなかで、『この取り組みは素晴らしいな』と感じることもあって、それを共有するのはどうだろうとトピックスに加えてみたんです」。
これが参加者から大好評!「『こういう話が聞きたかった。自分のところでもさっそく取り入れます』や『ミーティングに参加してよかった。もっと聞きたい』などの声が多く届き、私たちもうれしかったですね。それからは、いい取り組みを紹介するのは、毎回の定番となりました」
誇りと責任のもと、最高の靴を届けたい!会場を包んだ熱い想い。
この4月にも2017年秋冬に向けたQCミーティングが行われました。当日は、およそ25社、約50名が参加し、会がスタート。ミーティングの目的を共有したあとは、データや事例で前年度を振り返ります。つま先の切り替え部分について、ウェッジヒールについて、秋冬シーズントピックスに挙げたブーツについてと、豊富な題材を細部までの確認を、ときに動画での検証も行いながら共有します。
次々と検証、確認事項が続き、会は固苦しい雰囲気になるのかと思いきや、随所で進行役の山田さんから「この場合、〜さんのところはどうやっています?」「違う意見がある方は?」など、参加者からの意見も活発に飛び交うよう呼びかけるなど、あっという間に1時間が経過。休憩に入ります。
会も9回目とあり、休憩中は顔見知りとなったメーカー様同士も和気あいあいと雑談をしていたり、初めて会う隣の席同士で挨拶を交わしていたりと和やかな雰囲気。休憩後は、「シープシルキー(羊革)の裏貼りについて」など、さらに専門性が増した内容に。みなさんメモを取りながら真剣に耳を傾けています。
会も終盤を迎えたころ、恒例の“成功した取り組み”を紹介していきます。この日は、2社に焦点を当て、品質をさらに向上させるためにどのような取り組みを行っているか、社内での情報を共有の仕方、さらには、作業場のスペースの使い方を見直したところ、ムダが省けたことで、作業効率の向上につながったなど具体的な話も取り上げられていました。
会の最後は丸谷さんからの言葉で括られました。お取引先様の日々の努力はお客様に着実に届いていること、これからも〈オデット エ オディール〉の靴を、誇りと責任をもってお客様に届けていくことを熱く語り、会は終了しました。
参加者からの事後アンケートでは、「〜さんの会社にならって、生産会議の流れを見直します」など今後の参考になったとの回答が多く寄せられました。試行錯誤を繰り返し、たくさんの人の熱い想いで一足の靴ができあがっていることを感じた今回のミーティング。9回目を経て、また進化した靴に出合える日が楽しみです。