ウツワ
2026.07.16
上海・深圳・杭州。中国3都市に広がる「ユナイテッドアローズ」の新しい挑戦。
中国上海〈ユナイテッドアローズ 上海静安嘉里中心店〉、深圳〈ユナイテッドアローズ 深圳万象天地店〉に続き、2026年4月には杭州に中国大陸3店舗目となる〈ユナイテッドアローズ 杭州恒隆广场店〉をオープン。街の空気も、人々の感覚も、それぞれ異なる3つの都市で、〈ユナイテッドアローズ〉はどのように根付き、どんな提案をしているのでしょうか。今回は、海外戦略を担う執行役員CGSO(チーフグローバルストラテジーオフィサー)森本 裕史さんと、上海社PR課 戴 亦清(ダイイチン)さんへのインタビューを通して、中国における現在地を取材。さらに、中国のおすすめスポットもあわせてご紹介。中国の日常やカルチャーを感じながら、海外で広がる〈ユナイテッドアローズ〉の今をお届けします。
Photography:Shunya Arai
Text & Edit:Shoko Matsumoto
〈ユナイテッドアローズ〉が視野に入れる海外での展開。
森本「私はUA 新宿店で店長を経験した後、2014年に台湾事業の立ち上げに参加し、約10年携わりました。台湾事業が黒字化したタイミングで日本へ戻り、その後、中国事業の準備を約1年半行い、2024年9月に中国へ赴任しました。〈UA〉が海外展開を本格的な戦略として位置付け始めたのは、中国進出を検討するようになった頃です。それ以前から可能性の検証は続けていましたが、非常に慎重な姿勢を取っていました。実際、最初は香港で卸事業を行うなど、リスクを抑えながらテストを重ねてきました。海外展開の大きな転機になったのは台湾事業です。私たちはセレクトショップとして成長してきましたが、グローバルブランドとして成立するためには、自社ブランドを世界に認知してもらう必要がありました。ただ、〈UA〉の商品はロゴやアイコンでわかりやすく訴求するタイプではなく、シンプルなデザインで、上質さや品質に価値を置いています。そのため海外ではブランドとして認知が伝わりにくいという課題があります。はじめは順調とは言えないスタートでした。だからこそ、言葉やビジュアルイメージ、サービスを通じて私たちの価値観を伝え続けることが重要だと考えています」
住所:上海市南京西路静安嘉里中心南区1楼S1-02、03商铺,2楼S2-02、03商铺
住所:深圳市南山区粤海街道大冲社区深南大道9668号深圳万象天地LG90A
住所:杭州市拱墅区体育场路 321 号 杭州恒隆广场 L2-18商铺
森本「一番大きな違いは、ブランド認知がない状態からスタートしていることですね。上海店では、ほとんどのお客様が〈UA〉を知らずに来店されます。そのため、一点一点の商品を非常に丁寧に見て、試着し、スタッフのコーディネート提案にも耳を傾けながら購入される傾向があります。我々が思っている以上に、商品の価値をシビアに見られていると感じます。一方で、納得いただければ複数点をまとめて購入してくださるケースも多く、セット購買率は日本より高いんです。コストパフォーマンスを感じていただけているのは、自社ブランドを主軸に展開しているなかでは自信につながりました」
森本「今まさに苦労しているところです。日本ではベーシックカラーが支持される傾向がありますが、中国ではデザイン性のある主役級アイテムや、鮮やかな色のアイテムが好まれる傾向があります。〈UA〉は、日本ではお店でブランディングを行い、まずは良い空間を作って、丁寧な接客サービスを提供し、上質なアイテムを提案する。それこそヒトとモノとウツワですよね。まずはお客様に知っていただくきっかけをたくさん作るために、吟味しながらではありますが、日本よりも早いペースで出店をしていきたいと思っています。一方では、まだビジュアル面での印象が弱いと感じているので、海外向けのビジュアル制作に日本と一緒に、ブランドのイメージをさらに進化させられるようなトライをしていきたいですね」
森本「特に評価いただいているのは高価格帯の商品です。上海店では〈UNITED ARROWS〉や〈H BEAUTY&YOUTH〉、〈LOEFF〉など、グループ内でも価格帯の高いブランドが好調。日本では高級ゾーンに位置付けられる商品も、中国のお客様には高いコストパフォーマンスを感じていただいています。また、3店舗の中でも深圳ではシューズカテゴリーの反応が非常によく、地域ごとの特徴も見え始めています。オリジナルのシューズブランド〈SY UNITED ARROWS〉は深圳店のみの取り扱いです」
森本「日本ブランドだから選ばれているという感覚は、正直あまりありません。むしろ商品そのものの価値や品質、接客体験、店舗空間といった要素に純粋に反応していただいているのかなと感じています。よくも悪くもまだまだ認知が広くないので、フラットに見ていただけているのだと思います。実際、中国では日本で販売している商品を規格やサイズ、素材など大きく変更せず、そのまま展開しています。それでも評価いただけていることには可能性を感じますね。私たちがいいと思っているものが、国を超えても評価いただけていることに、ポテンシャルを感じています」
さらなる成長、グローバルブランドを目指して。
森本「私たちが大切にしているのは、品の良さや上質さ、控えめながら細部にこだわったクリーンな世界観です。それは商品だけでなく、店舗の環境、スタッフの佇まい、商品陳列に至るまで。店舗が常に整っていること、お客様が見やすく美しいと感じられる売場づくりなど、譲れないこだわりは中国でも変わりません。ただし、日本のやり方をそのまま持ち込めば成功するとは考えていません。守るべきブランドの本質を維持しながら、その国の嗜好や文化に合わせてアジャストしていくような感覚です。その守るべきものと変えるべきものの線引きこそが、海外展開で重要なポイントだと思っています」
森本「しばらくは中国が海外戦略の中心になりますが、市場規模は非常に大きく、まだまだ可能性があります。一方で、アジア各国への展開も進めながら、将来的には欧米や中東などへもチャレンジしていきたいと考えています。伸びしろばかりで、本当に面白いですよ。現在、海外駐在経験者はまだ少数です。それはとてももったいないこと。私は、こうした経験にもっと多くの若手社員が挑戦できるように後押しをしたいんです。そのためには、海外事業で何をしているのかを社内にももっと見える形で発信していく必要があると思っています。私は台湾、中国と2度にわたって会社の立ち上げを経験させてもらいましたが、これ以上ないくらいエキサイティングな経験でした。苦労もたくさんありましたが、自分自身成長できたと感じます。だからこそ、こうした機会を自分一人のものにするのではなく、若手メンバーもどんどんチャレンジできる環境をつくり、その経験が会社の財産となるような循環を生み出したい。それが結果として、〈UA〉が本当の意味でグローバルブランドになっていくための土台になると考えています」
左:上海社PR課 戴亦清さん。右:執行役員CGSO森本裕史さん。
海外メンバーから見た〈UA〉とは。
戴「昨年9月に入社したので、現在で9か月ほどになります。大学卒業後は中国で3年ほど働き、その後日本へ留学しました。帰国後は日系企業を中心にキャリアを積んでいます」
戴「最初のきっかけは、日本留学を経験して日本語を話せるようになったので、せっかくなら日系企業で働こうと思ったことです。ただ、実際に働いてみると、仕事の進め方や企業文化が自分にとても合っていると感じました。そうした経験を重ねるうちに、自然と日系企業で働き続けるようになりました」
戴「少し恥ずかしいのですが、最初のきっかけは日本のあるアイドルが好きで、日本語を勉強し始めました。日本語がわかるようになるにつれて日本のファッションにも興味を持つようになり、当時は日系アパレルにも関心があったので、本場のアパレル業界はどんなふうに仕事をしているのだろうと実際に見てみたくなり、日本へ留学しました」
戴「私は大学で服飾デザインを学んでいて、これまでずっとファッション業界に携わってきました。もともと〈UA〉は好きなブランドの一つだったんです。そんな〈UA〉が上海法人を立ち上げることを知り、自分の経験や語学力を活かせるチャンスだと思いました。ブランドの魅力や価値観を中国のお客様に伝えながら、その存在感をもっと高めていく仕事に挑戦したいと応募したところ、ご縁があって入社することができました。」
戴「現在は主にSNS運営とクリエイティブ制作を担当しています。日々感じるのは、日本本社が発信したい内容と、中国のお客様が見たい内容との間にあるギャップです。その両者をどうつなげるか、どう埋めるかが私の大きな役割であり、常に挑戦している部分だと思います」
中国のお客様により響く表現の追求を。
戴「特にクリエイティブの見せ方に違いを感じます。私自身は日本のビジュアル表現にも慣れていますが、中国のユーザーから見ると、日本のクリエイティブはとてもシンプルに映ることがあります。〈UA〉はミニマルで洗練された世界観を大切にしていますが、中国のSNSユーザー、特に若い世代は、もう少し賑やかでカラフルな表現を好む傾向があります。私が担当しているSNSアプリRED(小紅書)も、そうした傾向が強いプラットフォームです。そのため、日本では好評な表現でも、中国では必ずしも同じ反応になるとは限らず、その違いは常に意識しています」
戴「現在は大きくふたつの方法で発信しています。一つは、日本本社が制作したコンテンツをそのまま活用すること。もう一つは、上海チームで独自に撮影し、中国市場に合わせて編集・発信することです。ただし、中国向けに調整するといっても、〈UA〉らしいブランドの世界観は必ず守るようにしています。その軸を保ちながら、中国のお客様により響く表現へとアレンジしていくことを意識していますね」
戴「中国人全員に当てはまるとは言えませんが、私自身が感じる日本ブランドの魅力は、細部へのこだわりです。特に服づくりにおいては、アジア人の体型に合ったシルエットや着心地への配慮がしっかり考えられています。派手なデザインや流行だけを追うのではなく、素材の質感や着用時の美しさなど、細かな部分まで丁寧につくられているところに価値があると思います。中国のお客様もそうした細かなこだわりをしっかり見てくださっていると感じますし、それが日本ブランドへの信頼にもつながっていると思います」
「私にとって〈UA〉は、上品さと落ち着きを持ったブランドです。派手ではないけれど芯があり、静かだけれど強さも感じる。日々SNS運営やクリエイティブ制作を担当しているので、ブランドが表現したい世界観に触れる機会が多いのですが、大切にしている価値観がよく伝わってきます。トレンドを追いかけるよりも、自分たちの価値観を大切にしながら着実に前へ進んでいく。そんなふうに感じています」
戴「まずは目の前の仕事としっかり向き合うことが一番大切だと思います。常に意識しているのは、日本が発信したいことと、中国市場が求めていることをつなげること。そのバランスを取りながら、中国のお客様にブランドの魅力を伝えていくことが大切だと思っています」
「最近はPOP MARTに代表されるブラインドボックス文化がとても盛り上がっています。LABUBU(ラブブ)をはじめ、さまざまなキャラクターIPが人気で、若い世代を中心に大きなブームになっています。私自身もブラインドボックスが好きで、特にSKULLPANDA(スカルパンダ)がお気に入りです。今は高価なものを所有することよりも、買うことで気分が上がる、感情的な満足感が得られるといった価値が重視されているように感じます。また、トレンドの移り変わりも非常に速く、新しい話題やカルチャーが次々と生まれている印象がありますね」
〈UA〉を「好きだから選ばれる」ブランドに。
戴「上海法人のPRやマーケティング機能をさらに強化していきたいと思っています。今は一人で担当する業務も多いのですが、将来的にはチームをつくり、メンバーと一緒にブランド認知向上やファンづくり、〈UA〉の魅力を中国のお客様へ届けていきたい。より多くの方に知っていただけるような発信にも挑戦していきたいです。そして、日本ブランドだから選ばれるのではなく、好きなブランドだから選ばれる、そんな存在として中国市場に定着させることが目標です」
📍 歴史と未来が交差する、中国のおすすめスポット
住所:上海市黄浦区中山东一路
住所:上海市静安区愚园路546号10号楼102室
住所:上海市静安区南京西路1686号
住所:深圳市南山区粤海街道科苑南路3329号
PROFILE
森本裕史(もりもと・ゆうじ)
〈ユナイテッドアローズ〉執行役員CGSO。UA新宿店で店長を経て2014年から台湾事業に約10年携わる。帰国後、約1年半の準備を経て2024年9月に中国へ赴任し、上海1号店を指揮。現場と海外での実績を活かしグローバル戦略を牽引している。
戴亦清(ダイ・イチン)
〈ユナイテッドアローズ〉上海社PR課。上海出身。大学でファッションを学んだのち、日本へ留学。帰国後は日系企業を中心にキャリアを積み、昨年9月に〈ユナイテッドアローズ〉入社。SNS運営やクリエイティブ制作を担当している。