ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

より薄く軽く、さらに地球にやさしい。 段ボールづくりの最先端をウォッチング。

ウツワ

2023.04.06

より薄く軽く、さらに地球にやさしい。 段ボールづくりの最先端をウォッチング。

2022年10月、ユナイテッドアローズ社は自社のサステナビリティ活動を「SARROWS」と銘打ってローンチしました。地球と社会のためにできることを探し、具現化していく活動として力を注ぎ続けています。そのひとつに挙げられるのが、オンラインで販売した商品を梱包する段ボールへの取り組み。ユナイテッドアローズの段ボールは、実は古紙を利用したリサイクルのもの。実際に製造をオーダーしているレンゴー社の工場を訪ね、段ボールの再生過程やサステナビリティに対する考え方を伺いました。パッケージと環境問題、そしてわたしたちの未来について、じっくり考えていきます。

Photo:Kousuke Matsuki
Text:Maho Honjo

環境への負荷を軽減する、紙づくりの現場とは。

運送やネットワークの発達とともに、オンラインでのショッピングが日常となったいま、改めて梱包資材を見直すことが求められています。商品を運ぶ際の第一条件である丈夫さはそのままに、地球にもやさしい包材とはどんなものでしょうか。ユナイテッドアローズの段ボール製造を行っている〈レンゴー〉は、明治42年創業の老舗。製紙から包装技術まで研究開発を続ける業界のパイオニアです。そのサステナビリティ活動に関しても、時代の最先端を走っていました。

今回訪れたのは、茨城県にある利根川事業所です。紙そのものを作る製紙工場と印刷などを行う紙器工場を備えていて、板紙に関しては日本有数の生産量を誇っているそう。最初に見せてもらったのは原料となる古紙の山。主に首都圏からの古紙が回収されたもので、お菓子やティッシュの箱などに生まれ変わる雑誌古紙、再び段ボールとなる段ボール古紙、また印刷工場からの端材を集めた上台紙などに分けられています。
「段ボール古紙でいえば、針金で括られたひと塊が約1トンで、1日700トンほどを使用します」。そう答えてくれたのは利根川事業所の工場長である友椙 洋さん。そびえ立つように積まれた古紙ですが、昨今は新聞や雑誌の販売や購読が減っていて、貴重なものになりつつあるそうです。また、この工場で製造される段ボール用の紙はその古紙を98%使用しており、リサイクルの意識が徹底されています。

画像 バイオマスボイラ発電設備

さらにCO2排出削減に向けて、2022年10月「バイオマスボイラ発電設備」の稼働がスタート。建設廃材由来の木質チップやRPF(産業系廃棄物のうち、マテリアルリサイクルが困難な古紙と廃プラスチック類を主原料とした固形燃料)、廃タイヤなどを主な燃料とした、環境負荷を抑える発電設備です。この利根川事業所は2007年に重油からLNG(天然ガス)への燃料転換を実施していて、このバイオマスボイラによってさらに再生エネルギーや廃棄物エネルギーへの転換を押し進めています。CO2排出量は年間9万トンほどが削減され、重油のときに比べると1/5ほどに減っているとのこと。

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また、工場内で使う水についても、地球環境を考えた循環システムが構築されています。紙を作る作業は膨大な水を必要としますが、利根川近くに位置するこの工場は水源がとても豊か。「工業用水と敷地内の井戸の水を使って、紙を作っています。使用した水は貯水槽に貯めて不純物を浮かせて除去し、バクテリア菌を放ってキレイな状態に。そうしてまた利根川に放流しているのです」。古紙利用、燃料転換、そして水の循環。持続可能な地球と社会のために、あらゆる取り組みが行われています。

製紙に必要な熱源はクリーンエネルギーを使用。


  • パルパーという機械で紙を水に溶かす工程。

  • 水分を絞る。

  • 巻き取ってロール状にする。
では実際に段ボールはどのようにしてできあがるのでしょうか。まず行われるのが、パルパーという機械で古紙を水に溶かす工程です。次にコンマ2ミリのスリット(隙間)が開いたバスケット状の機械を使って、遠心力で紙の繊維と不純物を分けていきます。それらをシート状にし、プレス機で挟み、水分を約50%にまで絞った上で、今度は120〜130度の熱を当て、水分を蒸発させる工程に。1トンの紙を作るのには1トンの蒸気が必要ですが、ここで先ほどのバイオマスボイラの熱源を使用するのだそう。水分が6〜7%ぐらいになったところで製紙工程は終了。巻き取ってロール状にし、段ボール箱へと成形を行う次の工場に運ばれます。

段ボールの端材は、製紙工場に戻して再利用。

製紙を行う利根川事業所をあとにして、次に向かったのは千葉工場。段ボール事業をメインに行うこの工場で、実際にユナイテッドアローズ社の段ボールが製造されています。まず、段ボールを構成する段ボール用の紙は表裏のライナや波状の芯材の中しんに大きく分けられ利根川事業所等の製紙工場で製紙され段ボール工場へ輸送されます。段ボール工場ではそれらの紙を貼り合わせて段ボール板にしたら、箱の大きさにカットしていきます。その次は印刷と成形のための溝切り。そして折り曲げから接着まで一気に進み、段ボール箱が完成するのです。

画像 段ボールにユナイテッドアローズのロゴを印字する。

画像 折り曲げから底面の接着までが一気に進む。

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作業が進む中、なにより驚いたのが工程ごとにどうしても出てしまう段ボールの端材を、さらに再利用するシステムが整っていることでした。「端材はすべてエアダクトを通して1カ所に集められ、それらを機械で圧縮し、再び利根川の製紙工場でリサイクルされます」。千葉工場の工場長を務める玉田 祥史さんがそう教えてくれました。端材がゴミになるのではなく、また資源として生まれ変わる。レンゴー社の中で資源を循環させる、サステナブルな取り組みが行われているのです。

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地球とお客さまへの想いを、段ボールに込めて。

ユナイテッドアローズ社の段ボールには「SEW(スマート エコ ホワイト)」という〈レンゴー〉オリジナルの、環境に配慮した古紙の白系ライナが使われています。通常の白系ライナには白の塗装を施しますがその必要がなく、無漂白、無着色でこの色と風合いを醸し出すのだそう。さらに通常は表にする白を箱の内側に、裏にするグレーを外側にするというのはユナイテッドアローズ社とレンゴー社が話し合いを重ね、導き出されたアイデアでした。
 
「ユナイテッドアローズ社のコーポレートカラーであるグレージュとSEWのカラーリングは見事にマッチしますし、なによりお互いがサステナビリティへの取り組みに積極的だったことで良い化学反応が起こったのだと思います」。そう語るのは営業課の二宮 満さん。「さらに、中しんを120g/㎡から90g/㎡に減らし、小さなサイズのケースは厚さを3ミリから2ミリに。軽く、薄く、それでいてそのままの強度をキープ。レンゴーの最新技術が詰まった、最先端の段ボールに仕上がったと自負しています」。

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もうひとつの大きな特徴が、段ボールの側面と、ちょうど粘着テープの貼りはじめと貼り終わりに当たる部分にうっすらとマークが施されている点。「アラジンプリント」という印刷技術で、これがあることで粘着テープが剥がしやすくなるのだそう。実は粘着テープの接着剤はリサイクル時に不純物として取り分けることができず、古紙再生の大きな障害のひとつ。「粘着テープは段ボールからしっかりと剥がす」、この地球と社会のための新常識を根付かせる知恵と工夫が詰まっていました。

企業同士が手を取り合うことで、その先の未来へ。

画像 積極的に太陽光発電を取り入れている。

レンゴー社が環境経営を語る上で掲げているのが「Less is more.」。エネルギー消費とCO2排出をより少なくし、より付加価値の高い製品づくりを行うことをモットーにしています。「梱包材を軽く、薄くすることで積載率と運送効率が向上し、CO2排出を大幅に削減することができます。さらに全国9つの事業所では太陽光発電を取り入れ、クリーンエネルギーで電力を賄うことに取り組んでいます。かけがえのない地球の未来のために、これからも努力を続けていきたいと考えています」。

これからは段ボールなどのパッケージ素材だけでなく、梱包機械の提供から物流コストのシミュレーションまで、さまざまな取り組みをユナイテッドアローズに提案し、お互いに切磋琢磨しながら発展していきたい、そんな展望まで語られました。ファッション、パッケージ、そしてわたしたちのより良い未来はすべて循環しています。持続可能な地球と社会のため、企業同士の取り組みはこれからもずっと続いていくのです。

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PROFILE

レンゴー株式会社

レンゴー株式会社

明治42年創業。あらゆる産業のすべての包装ニーズをイノベーションする「ゼネラル・パッケージング・インダストリー」=GPIレンゴー。物流と豊かな暮らしを支えるために、最適包装の開発・提案・製造を含むパッケージング・ソリューションを提供している。https://www.rengo.co.jp/index.html

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