ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ウツワ

2022.05.26 THU.

スタイリスト 小山田 早織さんが教える、サステナブル・クローゼットの作り方。

「少ない洋服を長く大切に着ることこそが真のサステナブル」。そんなスローファッションの考えを取り入れた“サステナブル・クローゼット”の作り方をスタイリストの小山田 早織さんが指南。彼女自身も、クローゼットの中を“本当に好きな洋服”だけにすることで自分の軸が見つかり、衝動買いや余計な買い物が減ったといいます。さらにはポジティブになれたりと精神面にも良い影響があったとか。また、これから迎える梅雨入りを前に、カビや虫から大切な洋服を守るお手入れ術もレクチャーしていただきました。

Photo:Yuco Nakamura
Text:Akiko Maeda

毎日服を選ぶのが楽しみになる!
サステナブル・クローゼットを
はじめたワケ。

スタイリストという職業柄、以前は自宅とは別に衣装部屋を構えていたくらいの衣裳持ちだった小山田さん。洋服はどれも全部ときめいて買っているので、もう随分着ていないものであっても大切だから手放せず、断捨離を試みても全然減らなかったそう。そんな彼女が自分の所有物の多さに疑問を感じたのは息子さんの妊娠中。妊娠を機に家にいる時間が増えて、住まいに関心が向いたときに「物の絶対量が減ったら片付けをしなくていいのでは!?」とふと思ったのがきっかけ。そして、いままで片付けに使っていた時間を子どもと過ごす時間に充てられると思い、“これを機に物に対する意識を変えよう!”と奮い立ったのだとか。

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[スタイリスト 小山田 早織さん流
サステナブル・クローゼットのPOINT]

毎日をスタメンの洋服で過ごせる。

気に入った物を大切に使う意識が芽生える。

心にゆとりが生まれてポジティブに。


まずは絶対に持っておきたい
“好きなもの探し”をしよう!

一大好きな洋服を減らそうと思い立って、すぐに思い切って手放せたんですか?

いままではどれを着ないかを考えていたんですけど、それをやめて、「絶対にこれはまず着る」っていうスタメン服とそれと同等レベルのものだけ掛けていく作業をしていったんです。“好きなもの探し”と名付けて、クローゼットに一旦好きなものだけを掛けた状態にしてから、次に、「また着るかも」と思った二軍の洋服を掛けていきます。

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一“好きなもの探し”っていい言葉ですね。

断捨離って気が重いけれど、少しポジティブに感じませんか!? そうはいってもいきなり手放せないと思うので、わたしは「一年以上着ていない洋服はリリース!」というルールを設けました。そして、お助けアイテムとして作ったのが「猶予BOX」です。というか、「猶予BOX」がないと絶対手放せないと思います(笑)。ちょっとサイズが合わないなとか気分じゃないなと感じたら、1回そこに入れています。そして1週間から10日間開けずに置いておいて、その間に思い出せた洋服だけ取り出していくんです。自宅のクローゼットには常に「猶予BOX」を設置しています。そうすることでクローゼット内が常に整理されて循環していきますよ。

一度“好きなもの”だらけのクローゼットの状態を作れば、また物が増えてしまったときにも自分の気持ちがいっぱいいっぱいになってくるのを感じ、ちょっと片付けようという癖がつくし、買うときに「これは本当に必要かな?」と立ち止まって考えられるようになります。その作業を自分の中の軸を見つけるためにいけるところまで繰り返していくと、自分の好きな物や好みのスタイルがわかるようになります。そうすると、買い物に行ったときにクローゼットの物を増やしたくなくなるんですよね。新しい洋服が欲しいけれど、「そもそもこの洋服を入れる余裕はあるかな」とか、「同じようなものを持っているな」と立ち止まって考えることができるようになりました。

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色ものはざっくり色分けして掛けていく。クローゼット内が色別に整理されているので、コーディネートする際もスムーズ!

「いつもとは違うテイストの洋服に挑戦してみよう」とか「こういう色を持っていないから買おうかな」とか、いまの自分に本当に必要なものを買うことができる。むやみやたらに買わないという点ではサステナブルな話にも繋がっていくと思います。

一一気に手放さず、猶予があるのは気持ち的にも楽な気がします。それを繰り返して、どれくらいの服を処分したんですか?

結果的にダンボール100箱分手放した結果、ラック1本分に収まるくらいの量になってクローゼットが見違えました。


インナー、カットソー、シャツ…。
アイテムをハンギングして可視化する。

一では、“好きなもの探し”を終えたら、どのような手順で整理していくんですか?

まずは、白、ベージュ、黒、青、などと色別に分類します。似たような色味のものは薄い色からなんとなくグラデーションになるように。わたしは、インナー、カットソー、シャツ、ワンピース…とアイテム別にした後、左から丈が短い順に並べています。ポイントは、ニットなど型崩れしやすいアイテム以外はすべてのアイテムをハンギングすること。インナー類はたたんで棚にしまっている方も多いと思いますが、ぜひハンギングしてみてください。朝、洋服を選ぶときに「インナー」「シャツ」「パンツ」「アウター」と順番に選んでコーディネートしていけるので、時短にもなりますし、クローゼット内に好きなものしかないから、稼働率がアップしますよ。

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あと、ギュウギュウのクローゼットだと洋服にシワがつきやすいし、洋服同士がこすれ合って痛みやすくなりますから、余裕のあるクローゼットは洋服にとってもやさしいんです。

一クローゼット内が可視化されるといいことだらけですね!
最近はPinterestやユナイテッドアローズのサイトなどいろいろなところでスタイリングが見られるので、こういう合わせ方も可愛いんだな、と素直にインプットしてそれを真似することができたりするとおしゃれの幅も広がるし、楽しめておすすめです。みんな共通で年齢は重ねていくものなので、それに合わせておしゃれをアップデートしていく意識が大切だと思います。

先日、お仕事でご一緒した美容ライターの方が言っていたんですけど、「女の土俵は一度下りたら上がれない」って(笑)。それを聞いてすごくハッとして。美容は積み重ねていくことだけど、ファッションは即効性があるから工夫次第ですぐ若返ることができるし、気持ちを新鮮にポジティブにしてくれるから、そういうところもやっぱり好きなところだったりするんですよね。サステナブルな時代ですが、洋服好きとしては全く買わないわけにはいかないので、自分の把握できる絶対量をある程度わかるようになったら、その先1つ物を買うことに対して観点が変わるというか、丁寧に買い物ができるようになると思うんです。

そして、自分がいままでインプットしてきた好きなものを、一度本当に自分が好きなものに淘汰して、その状態から+aの情報を取り入れながら、好きなクローゼットで居続けるための流れを作っていけると、一生ファッションを楽しんでいけるんじゃないかなと。

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デニムパンツ、スラックス、スカート。アイテム別に仕分けることで、自分が持っているボトムスの色、種類が一目瞭然!


“所有への執着”は自信のなさの表れ。
そう気づいてから、なにかが変わった。

一断捨離したことで気持ちの面でなにか変化はありましたか?

それこそ所有という名の、盾なんですよね。所有すること=自信のなさの表れなのかなってところまでいきつきました(笑)。あとは、物理的に物がなければ散らからないんですよね。だから一度片付いた状態を経験したいまは、常にキレイな状態を保っていきたいと思っています。また散らかると自分のメンタルが落ち着かなくなるということも過去の経験でよくわかっているので。

一散らかさなければ片付ける必要もないですね。いまお話を伺って、自分のクローゼットを想像してハッとしました。

洋服って、誰もが持っている承認欲求や自己顕示欲が原因で増えてしまうので、思い切って減らすと気持ちもスーッと軽くなるかもしれないですよ!

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一続いて、もうすぐやってくる梅雨時期の湿気対策についても教えていただけますか?

意外とクローゼット内って湿気が溜まりやすいんですよ。特に、クローゼットの配置がバスルームと面していたりする方は要注意! 洋服は湿気を吸うので、湿度の高い夏は特に、冬も高湿度にならないように対策を。湿度が高い状態は虫にとって最高の環境を作ることになってしまうので、除湿機を置くのがおすすめです。

一除湿機以外におすすめの対策はありますか?

湿気は下に溜まりやすいので、除湿剤を取り入れるときは掛け型より置き型を床に置くのがベター。また、即席でできる除湿剤として、飲み終わったコーヒーの殻を乾燥させたものを不織布の袋に入れたものをいくつか置いておくと除湿効果があります。また、コーヒーには脱臭剤としての役割もあるので、一石二鳥です。

箱にしまいこまずに、「掛けて収納」が洋服のためにもおすすめです。あとは、朝晩2回扉を開けて換気してあげるだけでも変わると思います。今日撮影したくらいのゆったりとした間隔で洋服が掛かっていれば風通しもいいし、湿気が衣類に染み込んでもその場で乾くので安心です。除湿剤と防虫剤は環境に応じて置いて、さらに仕上げに好きな香りの芳香剤を置けばついついクローゼットを開けたくなりますよ。

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バッグや帽子などの小物は、“飾る”イメージで収納すると、毎日ワクワク感を持って選べるのでおすすめ。余裕を持って収納することで形崩れやカビ、汚れの心配ナシ!


物選びの観点が変わることで、
素材選びにまで興味が湧いてくる。

一小山田さんにとって精神面にもいい効果を与えた“サステナブル・クローゼット”ですが、サステナビリティの観点ではどうでしょうか?

サステナブル・クローゼットに生まれ変わって、買い物や物選びに対しての観点が変わることで、自ずといままで目を向けてこなかった素材選びにまで興味が湧いていきました。最近は植物由来のエコレザーやリサイクルポリエステルなど、自然環境に配慮し環境負荷の少ない素材を使ったアイテムがたくさん出ていますよね。そういった新しい素材は、企業の努力の賜物だと思いますし、挑戦しない手はないと思いますね。

一ユナイテッドアローズでも、サステナブルな素材を使ったアイテムが続々登場していますよね。ぜひ手にとって欲しいですね。

はい、世界的な潮流としても「SDGs」はいまや当たり前になっているので、おしゃれを楽しみながら自分のできることから気をつけていきたいですね。

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PROFILE

小山田 早織

1987年、埼玉県出身。女性ファッション誌や広告、タレント等のスタイリングを手掛ける。自身のInstagramYouTubeでもファッションについての発信を続けている。プライベートでは2児の母として子育てに奮闘中。

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