ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ウツワ

2015.08.31 MON.

“トラッドマインド”が注がれた味わいのある家具。

野村不動産の住まい〈PROUD〉と株式会社ユナイテッドアローズが手を取り合い、豊かな住空間を提案する「PROUD with UNITED ARROWS」。インテリアオプション、ゲストルームのプロデュースに続き、今回は家具をリリースしました。このプロジェクトのビジュアル制作において編集を担当したのは、編集者であり、雑誌『アンドプレミアム』のエグゼクティブ・ディレクターも務める柴田隆寛さん。その目に、今回の家具はどのように映ったのでしょうか?

Photo:Yuhki Yamamoto
Text:Yuichiro Tsuji
Specialthanks:UNITED ARROWS HARAJUKU FOR WOMEN

柴田さんが思う〈ユナイテッドアローズ〉のこと。

ーファッションを取り扱う〈ユナイテッドアローズ〉が家具を作るときいて、どんなことを思いましたか?

柴田:違和感は感じませんでした。ファッション的な視点で生活全般を取り扱うセレクトショップである、という認識を持っているので、すごく自然な展開だと思いました。それに〈ユナイテッドアローズ〉のようなトレンドを牽引するセレクトショップがこうしたアプローチを行なうことで、住空間に対する意識が底上げされるのではないかと思います。他者から見えるファッションに比べ、日本人のインテリアに対する意識の低さ、投資のアンバランスさを普段から感じているので。

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ーそうした日本人の偏った価値観にしっかり訴えかけることができるのは、〈ユナイテッドアローズ〉だからこそできることであると?

柴田:そう思います。〈ユナイテッドアローズ〉の魅力は、相反する要素を上手に調和させているところにあると思うんです。その要素というのは、トレンドを牽引する“発信力”と根底にある “トラッド・マインド”。モードとスタンダードって、乖離しがちなものというか、相反する要素として捉えられがちですが、そのバランスをうまく共存させながら、常に僕らの前を前進している。だからいつの時代も幅広い人たちから支持されるし、こうした新しい試みも説得力を持って提案できるんだと思います。

ー実際の商品をご覧になられた、第一印象はどんなものでした?

柴田:地に足が着いたもの作りという印象を受けました。いい意味で新しくない。“経年進化”というコンセプトにあるように、着込むほどに身体に馴染むオックスフォードのB.D.シャツのような佇まいだなと思いました。

ーさきほど話されていた“トラッドマインド”が色濃くでているということですね。

柴田:そう思います。〈ユナイテッドアローズ〉のクリエイティブ ディレクターである鴨志田さんと家具をデザインした佐々木さんのもの作りに対するプライドと気概を感じました。佐々木さんは〈ユナイテッドアローズ〉の店舗をデザインしてきた方なので、鴨志田さんが表現したいことを熟知されているし、もの作りに妥協がない人。二人の経験と技術、そして感性が融合したからこそ、これからのパーマネントになり得るプロダクトが完成したんだと思います。

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洋服屋がつくる家具の魅力。

ー柴田さんが編集を担当したビジュアルの制作ではどんなことを心掛けたんですか?

柴田:プロダクト自体がすごく強いので、余計なことをこちらであまり語りたくないなと思ったのと、モノの美しさをストレートに表現したいと思いました。あと、さきほどお話した“ユナイテッドアローズらしさ”を表現するには、どうしたらいいかも考えました。その結果、UAのブランド哲学や美意識を理解されている方たちと一緒に作ろうと思い、フォトグラファーは高木康行さんに、スタイリングは郷古隆洋さんにお願いをしました。

ーおふたりともしっかりとした世界観を持った方だと思うんですが、どんな部分で〈ユナイテッドアローズ〉と接点があるんですか?

柴田:高木さんは鴨志田さんのことを昔からよく知ってらっしゃるし、モノに対しての美意識が鋭く、自分の視点と眼差しを持っている人。家具への造詣も深い方なので、今回のプロダクトのチャームポイントを写真として切り取ってくれると思いました。郷古さんはもともと〈ユナイテッドアローズ〉の出身で、いまは「Swimsuit Department」というヴィンテージ雑貨を扱うアポイントショップを運営したり、インポートの代理店をしています。スタイリングが本職ではありませんが、家具やデザインに対して深い知識とセンスを持った方なので、今回の家具に対して「このテイストなら、こういうモノを置くといい」といったような深みのあるスタイリングを提案してくれると思ってお願いしました。

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ー「北欧」や「ミッドセンチュリー」のスタイルと、日本の組木などの技法を用いた伝統的なスタイルが今回の家具のデザインベースとしてありますが、高木さんも郷古さんもそこの“良さ”を引き出してくれると。

柴田:そうですね。表面上のデザインだけでなく、今回の家具のベースの考え方やものづくりの姿勢にもすごく共感してくださって。写真でそれを伝えるのはすごく難しいことなんですが、しっかり思いをビジュアライズしてもらえたので、ものすごく感謝しています。

ー具体的にいうとどんなところですか?

柴田:写真の空気感もですが、例えばソファでいうと、肘掛けの形や溝といったディテール、バックスタイルの美しい佇まいとか。挙げたらキリがないぐらいです(笑)。

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ーでは、細部まで注目しないとですね。

柴田:ディテールに対しての妥協のなさは、佐々木さんのもの作りがいかに緻密に計算されているかを証明するものだと思います。それから、ソファの張り地に洋服用のファブリックを取り入れたり、コードヴァンのレザーが使われていたりするんですけど、それは洋服屋でないと出てこないアイデアですよね。使い込んだあとの風景がきちんとに考えられている。それは、鴨志田さんのディレクションによるところが大きいのではないかと思います。

ー今回制作されたカタログは野村不動産の展示会場でも、UAの店頭でもすごい勢いでなくなっていると聞きました。

柴田:カタログを入り口に、一人でも多くの方がショップに足を運んでくれたら嬉しいですね。「作って終わり」では意味がないので。誌面やWEBを通じてお客さんとショップ、そしてプロダクトを繋ぐのが、今回のプロジェクトでの僕らの役割。実際に現物に触れて、商品を買ってくださる人がいて、初めて成功と言えるんだと思います。

“おもてなしの精神”が反映された家具。

ービジュアル制作を通して、冒頭でお話いただいた第一印象と変わる部分や、気付いたことはありますか?

柴田:実際に商品を見たり試したりして感じたのは、ユーザーとの相互関係やアフォーダンスを意識した家具であるということです。「ここにこういうディテールを加えたら、ユーザーはこういう風に使うだろう」とか、逆に「ユーザーはこう使うだろうから、ここはこういうデザインにしよう」とか。パッと見では分からない、作り手の美意識やホスピタリティを感じることができました。

ーひと目見ると素朴なデザインに仕上がっているけど、実はいろんなこだわりが詰まっている、ということですね。

柴田:はい。それに、デザインが押し付けがましくないところがとても好きです。ユーザーに使い方の余地を残しているというか。“使ってみてはじめて分かる良さ”みたいなのものが、この家具にはあると思います。買ったときがいちばんではなく、5年、10年と使い込んでいったあとの姿を明確にイメージして作られている。その考え方は、〈ユナイテッドローズ〉が持つ“トラッドマインド”に通じるものだと思います。

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ー〈ユナイテッドアローズ〉がお客さまに満足していただくために大切にしているもののひとつが「ウツワ(環境、施設、空間)」。今回の家具もその「ウツワ」として捉えることができると思うんですが、柴田さんの目に「ユナイテッドアローズのウツワ」はどのように映っていますか?

柴田:今の話と重複してしまいますが、“押しつけがましくない余地みたいなもの”が〈ユナイテッドアローズ〉の「ウツワ」であり、“おもてなしの精神”なのかなと思います。「ウツワ」って、サービスを提供する側だけじゃなくて、受け手がいてはじめて成立するもの。今回の家具などはまさにその最たる例だと思うんです。ユーザーとの関係性のあり方や、どうしたら長く愛されるのか? といった問いに真摯に向き合った末にできあがっている。そういう美意識というかスタンスに、僕は〈ユナイテッドアローズ〉のイズムを感じます。

INFORMATION

PROFILE

柴田隆寛

編集者・マガジンハウス刊行のクオリティライフ誌『&Premium』エグゼクティブディレクター。雑誌や書籍の編集をはじめ、広告、web、イベントのディレクションなども手掛ける。主な編著書に『Tools』(講 談社)『リサ・ラーソン作品集』(パイインターナショナル)『柚木沙弥郎92年分の色とかたち』(グラフィック社)などがある。

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