
ウツワ
2019.07.25 THU.
物流が担う、行き届いたサービスの未来形。
ユナイテッドアローズでは、物流において安定したクオリティと省コスト化を狙い、大型物流センターを国内3拠点体制から2拠点体制へと再編。なかでも重要な位置付けを担うのが、千葉県流山市に新設され、昨年5月から稼働を始めた新物流センター(以下新センター)です。とりわけ注力したのは、大型マテリアルハンドリング機材の導入による機械化と省人化。ユナイテッドアローズが目指す新たな物流のカタチを、新センターでシステム構築を統括する、物流推進部 物流管理チームの宇野洋平さんの話から紐解いていきます。
photo_Yusuke Oishi
text_Masashi Takamura
物流からサービスの向上を見直すために。
千葉県流山市にある常磐道流山ICを降りてすぐ。大和ハウス工業の指揮の元で建設が進む物流拠点、DPL流山の一画に、昨年5月から新センターが稼働を開始しています。ユナイテッドアローズの物流における重要な拠点のひとつで、在庫管理、集品、店頭配送(実際の配送業務は外注)などが行われています。
ネット通販を中心に物流業務にスポットライトが当たる昨今、ここでの改革は急務のひとつでした。物流改革を推進する任務を負ったのが、宇野洋平さん。大手物流企業の営業を前職とするまさにスペシャリストといえる人物です。
「当社に入り感じたのは、やはり物流業務に関わっている人が非常に多いなというところ。これまでは、物流業務全体を外注していたので、社内に物流を完全に把握している人もいなかったと思います。逆に言うと、物流のきちんとしたノウハウをもって社内管理することで、イノベーションの余地は十分にあるということ。まずは何が課題であるかを顕在化させて、どこにメスを入れるべきかを判断していきました」(宇野さん談、以下同)
前職で10年余り大手物流企業の営業職を務め、現場における課題解決には長けていた宇野さん。工場の生産管理を志していたということからも、効率化にかける思いは人一倍。結果的に、この業種に楽しみを見出しているという。
「そこで取り組んだのはブランド特性の把握です。それにより、何を機械化すればコストメリットが出るかというのをチェックし、同時に、社内における物流セクションの意義についての啓蒙も行いました。やはり、大きな資金を動かしますので、社内に対して一定の理解が必要でした。売上高物流委託費が上昇、と一口にいってもなかなか体感できないものなので、そのあたりの噛み砕きをするのも重要な任務ですね」
大型マテハンとトロリーシステムによる大胆な効率化に成功。
「この改革の成功の要因は、私がプロジェクトに参加したことです(笑)」
冗談めかして笑う宇野さんだが、実際大きなコスト減に貢献しているという。新センターの「目玉」といえるのが、大型マテハン(マテリアルハンドリング機材)の導入です。
「回転率が高く、商品数も多いブランドは、機械化が必要と判断しましたので、大型マテハンを導入しました。これにより、ハンガー商品以外の在庫管理、店舗からの受注後による集品や店舗ごとの分配までを自動で行えるようになりました」
実際に工場内を見渡すと機械式のコンベアーが「折りコン(=折りたたみ式コンテナの略)」を、手際よく運び、自動振り分けされるマシンによって、商品が保管されるべきアドレスに自動で配分。オーダーがかかったアイテムは、これも機械と人の手を経て集品され、全国の店舗ごとの段ボールに配られていきます。
倉庫内を、自動化された「大型マテハンエリア」と二分するのが、ハンガーを扱う「トロリーエリア」。こちらは、天井に鉄道のレールのように張り巡らされたトロリーレールに、専用のラックを吊り下げることで、倉庫内の移動を楽に、そして、効率よくできるようになっています。
「ハンガー商品については、従来の車輪式のラックではなく、レール移動可能な吊り下げ式のトロリーというラックシステムを採用しました。これにより、大量のハンガー商品を、女性一人でも楽々と運べるようになりました。機械ではないですが、とても重要な設備を導入できました。ほかにも、新センター専用の特注品が多くてコストがかかり、怒られもしましたが、お釣りがくるほど役立っていると思っています」
こうした改革の結果、従来よりも5〜6倍ほどの省スペース化、省人化に成功しています。「大規模なブランドは、オートメーション化に最適だったといえます」
これからの物流のカタチとは?
お客さまにとって「物流の改革」が、どんなメリットをもたらすのか、わかりにくい部分がある点は確か。このあたりはどのような点が挙げられるのでしょうか。
「自動倉庫のメリットは、外的な損害がほぼ皆無なことです。当たり前ですが、損傷のリスクは極端に下がるわけです。品質の安定化ですね。同時に、適切なものを適切な場所へと移動させることができる。早く正確な作業というのは、何においても求められますよね。当然、物流も同様です。また、今年の秋に予定している、オンラインストアの運営体制の変更に伴い、新センターからオンラインストアの配送が開始されます。これからは直接お客さまとの関係が生まれますので、作業自体の丁寧さ、正確さがいっそう求められていきます。従来以上に納期の遅れや欠品などがないような対策を講じていくことになるでしょう」
ユナイテッドアローズの物流改革は始まったばかり。宇野さんもまだまだ道半ばだという。
「今、世間的には、インターネットを軸にした物流に注目が集まっていますが、私個人としては、そうした方向性とは違うものを、当社は目指したほうがいいと考えています。強みは、店舗を多数もっているということ。お客さまと顔を合わせるチャンスが多いからこそ、店舗の信頼性が大事。セレクトショップって訪れるだけでも気分が上がる場所ですからね。的確な物流でそうした面にも貢献したいんです。現在は、配送の部分を外注していて、その働きには大変満足しているのを前提にはしていますが、例えば、バックヤードの作業まで自社で物流セクションが担当すれば、店舗の負担も減ると思うんですよ。実現にはハードルはいくつもありますが、こういう面でも、まだまだ改良の余地もあると思っています」
PROFILE

宇野洋平
1981年生まれ。新卒から物流大手企業にて流通営業担当を経て、2016年入社。物流センターの再編業務において、新センターの企画立案、オペレーションの統括を担当する。