<アシックス> ゲルカヤノ 14
デザインひとつで変わる見え方
落ち着いたトーンのグレーが
幅広いスタイリングに馴染む
「ゲルカヤノ14」は、アメリカのランニング専門誌で受賞歴を持ち、リリース当初から評価が高いシューズ。たしか発売は2008年とかだったと思うけれど、僕はその存在をしっかりと認識していませんでした。90年代の学生時代に陸上をやっていた僕から見ると、その頃のアシックスは正直、ランニングシューズの域を出ないブランド。ただ「ゲルカヤノ14」は、2018年頃からコラボレーションによる復刻などを経て、近年ではファッションとしても足元の人気を支える代表作です。コラボレーションや再アプローチされたモデルを見ると、配色や素材選びひとつでこんなに見え方が変わるものかと、魅力に気付かされました。アシックスが運動のためのシューズという認識を変えたモデルだと思います。
FUG.

だからアシックスは、ファッション的な視点から配色されたモデルを探すようにしています。このBEAUTY&YOUTHの別注は、「ゲルキンセイ」のディテールを忠実に、「ゲルカヤノ14」へ落とし込んでいるようです。ともにアスレチックシューズ感が強く、アッパーを構成するパーツも多いからこそ、配色センスがより問われるモデルだと思いました。
FUG.

その点において、この別注は服にうまく溶け込むよう、よく考えられている。アシックス特有のスペーシーなシルバーではなく、全体的にマットなグレーが置かれていることもあり、落ち着いた印象を受けました。BEAUTY&YOUTHの別注は、足元が目立つことよりも、パンツとうまくはまるようにとか、スタイリングのバランスを汲んだ発想で作ってくれるから、履きたいと思える。上品なスラックスに合わせても収まりが良く、スポーティなテックパンツと合わせる時でも大人の雰囲気を持たせられる。スタイリングとの親和性を感じることができるのではないでしょうか。


小澤 匡行
1978年生まれ、千葉県出身。大学在学中に1年間のアメリカ留学を経たのちに編集、ライター業をスタート。著作に「東京スニーカー史」(立東舎)、「1995年のエア マックス」(中央公論新社)など。