<コンバース> GLR オールスター クップ OX レザー
こう見えて足し算されている「オールスター」
シンプルだけではない奥行きのあるデザイン
これは“白い革靴”として履いてみたい。
一見するとわかりにくいかもしれませんが、これは、コンバースの「オールスター」をヨーロピアンテイストにアップデートしたシリーズ。通常の「オールスター」よりも、細いシューレースをあしらったり、スムースレザーと同色のステッチにしたりすることで、洗練された印象を受けました。今回の別注は、シュータンに箔押しされるロゴが、かかとに素押しされたデザインへ変更され、より控えめなムードに仕上がっているのではないでしょうか。
FUG.

その一方で、シンプルやミニマルを目指した引き算だけのデザインということでもないと思いました。むしろ、スニーカーのルックスに革靴のエッセンスを散りばめて、ドレッシーに仕上げた、足し算のアプローチともいえる。「オールスター」の特徴であるラバーのトゥではなく、レザーパーツを使っている点も、スポーツブランドのシューズというより、革靴を作る視点から生まれた「オールスター」と言えるかもしません。ミニマルを追求しすぎると、スニーカーは物足りなく感じることもありますが、これは足し引きのバランスが良くて、じつは奥行きがある。加えてこの別注では、パーツごとにわずかなトーンの変化をつけていて、白の中に陰影を感じます。
FUG.

シンプルな白スニーカーではなく、トーンの違いを楽しんで、“白い革靴”として履いたら面白いのではないかなと。そう思ったら、ジャケットやオフィスカジュアルと合わせても、品よくまとまると思いました。もっとさまざまな場面でスニーカーを選びたいけれど、ビジネスシーンなどでは難しいことも少なくないですよね。これなら悪目立ちせず、スニーカーを履きたいという満足感も得られるはずです。


小澤 匡行
1978年生まれ、千葉県出身。大学在学中に1年間のアメリカ留学を経たのちに編集、ライター業をスタート。著作に「東京スニーカー史」(立東舎)、「1995年のエア マックス」(中央公論新社)など。