知ってほしいブランドについて
ファッションライターが語る連載コラム

ブリーフィング|ミリタリズムを日常へ落とし込んだ洗練の機能美バッグ

    知ってほしいブランドについてファッションライターが語る連載コラム

    2026.09.30

    ブリーフィング|ミリタリズムを日常へ落とし込んだ洗練の機能美バッグ

    文:いくら直幸

    ミリタリーギアにも使われる強靭なファブリックやパーツ、米軍ご用達ファクトリーでの製造などで知られる<ブリーフィング(BRIEFING)>。ただその真の価値は、質実剛健なモノ作りのみにあらず。四半世紀以上にもわたって多くの人々に選ばれ、ファンを増やし続けている理由を、ブランドの歩みと不変の美学から明らかにします。

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    日本人にしかできないメイド イン USA

    軍モノの放出品やヴィンテージ古着といった本物のミリタリーアイテムに、何だか無性に惹かれる方は多いはず。ただ、普段の生活において本当に実用的かと問われると、必ずしもそうとは言い切れません。<ブリーフィング>は、そんな男のロマンと日常のリアルの狭間にあるジレンマを初期衝動として生まれた日本発のバッグ&ラゲッジブランドです。

    コンセプトは「真のミリタリズムの追求」。すなわち、人命を預かるタフさ、極限のミッションのためだけに突き詰められた機能美といったミリタリーギアの本質を深く理解し、それをプロダクトへと宿すこと。この信条を具現化すべく彼らがまず着手したのが、厳格に定められた米軍の仕様書、いわゆるミルスペックに準拠した部材の調達でした。

    たとえばメインのファブリックには、軍用にも供給されている1050デニールのバリスティックナイロンを選定。極太の糸を高密度で織り上げたその生地は、粗く・厚く・重いものの、一般的なナイロンよりも圧倒的に摩耗と破れに強く、防弾チョッキやガンケースにも用いられるほど。ライニングは軽量で丈夫なパッククロス、さらには滑らかな開閉と高い耐久性を両立した YKK 社製のファスナー、戦場で相手に発見されないよう光の反射を抑えたブラックフィニッシュの金具類。そしてバッグの表面に配備された頑強なウェビングテープ。その片側を赤のステッチで縁取ったレッドラインはブランドのアイコンとなっていますが、これも単なる装飾ではなく、拡張用のポーチやカラビナを装着する際の視認性向上と補強の役割を果たしています。このように、ほぼすべての素材やパーツにおいてミリタリー由来の仕様を取り入れたのです。

    主張を抑えたブラックアウト仕上げ、電車・バスでの手持ちや人混みで邪魔になりにくく、かつスマートに背負える薄型ボディなど、ビジネスユースに向けた UA 別注のバックパック。

    これらに加え、日本のブランドでありながらアメリカでの生産にこだわったのも非常に特異でした。しかも製造を依頼したのは、実際に米軍や警察、医療機関の特殊バッグを手掛ける最高峰の技術力をもつファクトリー。通常、そうした軍需工場が一般消費者に向けた民生品を請け負うことなど到底あり得ません。しかし確固たる信念と執念、情熱をもって幾度も交渉を重ね、異例とも言える承諾を勝ち取ったのです。

    ただし彼らが目指したのは、ミリタリーフリークのための商品でも、アメリカ至上主義の産物でもありません。ある意味で戦場以上に酷使されるかもしれない日本の通勤ラッシュにも耐えうる軍用のマテリアルと生産背景にこだわりつつも、あくまで現代のライフスタイルへとアジャストさせる。これこそがブランド最大の任務にして、<ブリーフィング>の真価だと私は考えます。

    スタイリッシュに映える都会的で洗練されたデザイン、デイリーユースに絶妙なサイジング、痒いところに手が届いた適材適所のポケットなど、日本のブランドだからこそのファッション的な美観と緻密な用途設計、そして隅々にまで及ぶ細やかな配慮。その独自のアプローチは “ 日本人にしかできないメイド イン USA ” の姿と言えます。こうして軍モノを再現したレプリカとも、テイストだけを汲んだミリタリー風とも一線を画した、前例のないバッグがカタチになったのです。

    グリーンレーベル リラクシング(以下、GLR)で好評を博す別注トートのサイジングを基に、前面とメイン室の間に大型ポケットを増設。さらにジップ付きのアウトポケットも追加。

    かくして1998年にデビューした<ブリーフィング>。このとき、まだ無名だったブランドにイチ早く目をつけたのが、ほかでもないユナイテッドアローズでした。実は最初の1年間はテスト販売の意味も含め、現在の BEAUTY&YOUTH の前身にあたる BLUE LABEL STORE のみで独占的に取り扱われたのです。ファーストシーズンはわずか4型。すぐさまヒットとはならなかったものの、スタッフからの評価は上々で、本物志向やアメリカ好きの男性客から支持を獲得します。この間に各モデルの改良が図られ、ラインナップも大幅に増やして翌年に本格スタート。いよいよ現在へと続く快進撃が幕を開けます。

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    時代に応じて進化し、次なるフェーズへ

    その後、シーズンを追うごとにバリエーションは拡充され、さまざまな用途やシチュエーションに向けたモデルが続々と登場。併せて、長く好評を博している定番モデルにおいても、いっそうの使い勝手を求めて、また働き方や使用環境、荷物の変化、ファッションの流れにも呼応して絶えずアップデートが続けられています。さらに2016年にはラゲッジアイテムを主とするトラベルラインが、'17年にはバッグだけでなくアパレルも提案するゴルフラインが本格始動し、ブランドの勢いはさらに加速するのです。

    薄手&軽量ながら破れにくい、リップストップ生地を用いた GLR 別注のサコッシュ。内ポケット付きのメインコンパートメントのほか、フロントにメッシュのジップポケットを配備。

    そして、この頃からブランドは次なるフェーズへと突入することに。根幹にあるミリタリーをルーツとするデザイン&機能性、原点であるバリスティックナイロン製の「メイド イン USA」コレクションを堅守する一方、ミルスペックだけを拠りどころにするのではなく、素材の選択肢を広げ、より時代にフィットして柔軟に活躍する新機軸のバッグ開発に乗り出します。その実現には軍需工場では専門外となるファブリックの導入や、アメリカでは困難な作り込みも要することから、マテリアルやアイテムの特性に応じて最良の生産国で製造されるようになりました。

    もちろんメイド イン USA以外の製品においても、ヘビーデューティなモノ作りや優れたユーザビリティは健在。米国生産で培ったクラフツマンシップを踏襲しながら、ブランドの新たな可能性の開拓に成功しています。

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    アクティブに生きる、現代人の装備

    <ブリーフィング>は現在、毎日のビジネスから休日のタウンユース、トラベルにゴルフ、さらにはアウトドアのフィールドまで領域を拡大し、多様なシーンをシームレスに行き来するプロダクトで人気を不動のものとしています。また近年ではメンズだけでなく、リップストップ生地などを採用したライトウェイトなモデルを中心に女性ファンも増加。それらすべてに通底するのは、日々を軽やかに楽しみ、活動的に生きる人々に寄り添う「アクティブライフギア」という哲学なのです。

    前出のサコッシュと共通のデザインテーマ&素材で製作した、GLR による別注のミニショルダーバッグ。2025年から加わったミリタリーカラーのグレーと、万能色のブラックを用意。

    ミルスペックを日常へと落とし込んだパイオニアであり、一部のマニアしか関心を示さなかったその存在と言葉自体も認知させた立役者でもある<ブリーフィング>。それは話題を集めるためのコマーシャルなどでなく、荷物を収納・持ち運ぶ “ 道具 ” に不可欠な信頼へと結実させ、そうして養ったノウハウを幅広いアイテムへと発展させてきた。壊れず、使いやすく、ルックスもよく、非の打ちどころがない完成度となれば、厳しい目をもつ日本のユーザーに長く愛されるのは当然です。現代社会を軽快にサバイブするための装備として、これほど頼もしいバッグはないかもしれません。

    ( Writer Profile )

    ファッションライター

    いくら直幸

    人気アパレルメーカーのPRを経て、1990~2000年代に絶大な影響力を誇ったストリートファッション誌『Boon』の編集者に。現在はメンズ雑誌&ウェブマガジンをはじめ、有名ブランドや大手セレクトショップのオウンドメディアにも寄稿。近年はYouTube番組への出演、テレビ番組のコーディネート対決コーナーで審査員を務めるなど活動の幅を広げている。

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