知ってほしいブランドについて
ファッションライターが語る連載コラム

ピッピシック|独学から始まった靴づくりと、愛されるパンプスの秘密

    知ってほしいブランドについてファッションライターが語る連載コラム

    2026.09.24

    ピッピシック|独学から始まった靴づくりと、愛されるパンプスの秘密

    文:市谷未希子

    おしゃれは足元から、とよく言われます。けれど実際にシューズを選ぶとき、デザインと履き心地のどちらかを諦めた経験はないでしょうか。「高揚感のある靴を、毎日の装いのなかで履きたい」── その願いに応え続けて2002年にスタートした、日本のシューズブランド<ピッピシック(PIPPICHIC)>の歩みを辿ります。

    ( 01 )

    インポートシューズへの憧れから、靴の世界へ。

    <ピッピシック>のデザイナー、佐藤葉子さんの経歴はちょっと異色です。ファッションの専門教育は受けておらず、会社員として働いていた時期もあったとか。当時、新宿の<バーニーズ ニューヨーク>の靴売り場に通っては、<クリスチャン・ルブタン>や<マノロ・ブラニク>といったインポートブランドが描き出す、ファンタジーあふれる世界にうっとりしていたのだそう。

    けれど、インポートシューズは簡単に手が出る価格ではありませんでした。かといって、手頃な価格帯の日本の靴では、あの売り場で感じたような高揚感が得られない…。「それなら、自分で作ろう」と考えて、独学での靴づくりが始まりました。ただ、道のりは決して平坦ではなかったようです。靴づくりの現場には頑固な職人が多く、微妙な形やニュアンスの違いがなかなか伝わらない。同じ言語なのに通じ合えないもどかしさのなかで、絶対にわかってもらうという覚悟で臨み続けたといいます。

    その粘り強さが実を結び、迎えた初めての展示会では大きな成果を収めました。多くのオーダーと取引先の獲得につながり、職人たちとのコミュニケーションもそこからスムーズに回り始めたそうです。「上質でデザイン性のあるシューズを、手の届く価格で届けたい」という思いが、市場にどれだけ求められていたかを証明した瞬間でした。

    ANNA|シャープなオープントゥに、リボンとパールでエレガントさをプラス。パーティーからリアルクローズまで、シーンやスタイルを選ばずに履くことのできるフラットシューズ。

    ( 02 )

    女性らしさと凛々しさ、その先にある「長く履ける」安心感。

    <ピッピシック>のデザインには、一貫した軸があります。「服ありきの靴」──靴単体の美しさではなく、全身のコーディネートのなかで足元がどう見えるかを何より重視していること。この設計思想があるからこそ、どんなスタイリングにもすっと馴染む一足が生まれるのだと思います。

    たとえばポインテッドトゥのシャープなシルエットには、パールやリボン、コサージュといったフェミニンな装飾をポイントで添える。華やかに装いながらも品を崩さないバランスは、女性らしさと凛としたかっこよさが同居する<ピッピシック>ならではのものです。

    CHU CHU PEARL|コロンとしたイミテーションパールがアイコニックなフラットシューズ。安定感のあるフラットタイプで通勤や歩き回る外出にもぴったり。浅めのはき口が可憐な足元を演出してくれる。

    もうひとつ見逃せないのが、時代のムードをしっかり捉えながらも、ベーシックなフォルムを崩さないこと。トレンドに流されるのではなく、流行を咀嚼して自分のスタイルに落とし込む。その姿勢があるからこそ、ワンシーズンで終わらない靴が生まれるのでしょう。

    そして、すべてメイド・イン・ジャパンであること、佐藤さんが木型からこだわり日本の工場と二人三脚でつくり上げていることも、品質への信頼感を支えています。初めて足を入れたときの「あ、痛くない」という感覚は、フィット感と開放感のバランスを追求し続けてきた双方のこだわりの賜物。一足一足が物語るブランドの歴史は、何よりも確かな信用になるのだと実感します。

    AMBER|人気の木型で履き心地が抜群なフラットシューズ。サイドとフロントのカッティングをアクセントに、さりげない肌見せが足元から女性らしさを引き出してくれる。

    ( 03 )

    いつもの一日を、足元から少し特別に。

    <ピッピシック>の魅力は、ラインナップの幅広さにもあります。たとえばイミテーションパールやビジュー、コサージュといった華やかな装飾を纏った一足は、足元から一気に気分を上げてくれる<ピッピシック>の真骨頂。一方、「AMBER」に代表されるシンプルな木型のモデルは、トゥ先の薄さとノーズの長さが足のラインをきれいに見せてくれる。装飾に頼らず、フォルムだけで勝負できる洗練がそこにあります。

    甲のVカットで女性らしい印象を生む「ANNA」や広めのスクエアトゥでモードな空気をまとう「LINDA」など、シリーズごとにシルエットの個性がはっきりしていて、自分のスタイルに合う一足を見つけやすいのも嬉しいところ。華やかにもミニマルにも振り切れるのに、どれを選んでも<ピッピシック>らしいエレガンスと実用性が貫かれている。この一貫性こそが、多くのセレクトショップが長年にわたって信頼を寄せ続ける理由なのだと思います。

    REMY|伸びやかなポインテッドトゥのシルエットが洗練された雰囲気に。鮮烈なレッドカラーがコーディネートを引き締め、ミニマルなスタイリングとも相性抜群なフラットシューズ。

    <ピッピシック>にはもうひとつ、知っておきたい特徴があります。それは、大量に作って大量に残すのではなく、必要とされた分だけを丁寧に届けるというスタンス。これは、ブランドの規模を身軽に保ちながら、ものづくりに責任を持つという佐藤さんの哲学そのものです。

    フラットシューズからパンプス、ブーツまで幅広く揃い、ラグジュアリーブランドのトレンドをいち早く取り入れる感度の高さがありながら、足元に寄り添う実直なものづくりを手放さない。特別な一日のための靴ではなく、いつもの毎日を少しだけ特別にしてくれる靴。<ピッピシック>の一足には、25年変わらないその想いが詰まっています。

    ( Writer Profile )

    ファッションライター

    市谷未希子

    1989年生まれ。美容師、ファッションメディアの編集者を経て、フリーランスのエディター/ライターとして独立。現在はファッションブランドの広告制作やオウンドメディアのコンテンツ企画、ファッション誌・ウェブメディアでの編集・執筆のほか、映画やカルチャー領域の記事も手掛けるなど、ジャンルを横断して活動中。

    ※掲載している商品は、販売終了によりご購入いただけない場合がございます。あらかじめご了承ください。

    ( Item Lineup )

    #BEST BRAND YOU MUST KNOW
    #WOMEN

    Share