ユナイテッドアローズ ゴルフで取り扱い、多くのゴルファーから支持を集めている「東家商店」をフォーカスします。
レッスンの現場から生まれ、体感を重視した練習器具で知られる「東家商店」。
その背景には、ティーチングプロ・森守洋が実戦と指導を通じて積み重ねてきた、「原理原則」という考え方があります。
本記事では技術解説ではなく、森守洋という人物がどのような経験を経て現在に至ったのか、
そして、なぜ現場から道具を生み出し続けているのかを、本人の言葉を軸に紐解いていきます。
ゴルフを始めたきっかけや出会いについて教えてください。
森:ゴルフを始めたきっかけは、地元・下田でやっていたキャディのアルバイトですね。 それまではキンメの鱗取りのバイトをしていて、一日働いても6,000円ももらえなかったんですよ。
そんなときに、ゴルフ部に入っている友達がキャディのバイトで12,000円ももらってるのを聞いて、それならやりたいと思いました。 でも、それをするにはゴルフ部に入る必要があって、それでゴルフ部に入ったのが始まりでした。
最初は本気でゴルフをやる気はなくて、バッティンググリーンで遊びながらやっているような感じでした。 当時はティーチングプロもいませんでしたし、僕の場合はほぼ独学です。
友達もみんなすごく上手いわけじゃなかったんですけど、ショートゲームばかりやって遊んでいるのを続けていくうちに、だんだん上達してスコアも良くなってきて、「俺ゴルフ上手いかも」って勘違いして(笑)、そこからどんどんハマっていった感じですね。
アメリカ留学時代のID。「原理原則」へとつながる原点。
どうしてアメリカでゴルフを学ぼうと思ったんですか
森:大学には行きたいと思っていました。 当時、大学でゴルフ部と言えば日大くらいしか思い浮かばなかったので、日大に電話して聞いたところ、学費とは別に1,000万円くらいかかると言われたんです。 うちは母子家庭だったので、それは無理だなと。
そんなときに、ゴルフ雑誌の広告で「アメリカゴルフ留学・年間込み込み200万円」 というを見つけました。それで大学ではなくアメリカゴルフ留学という選択肢を母に相談したら「行ってきていいよ」と言ってくれて。 それで18歳で、ひとりでサンディエゴに行くことになりました。
サンディエゴ・ゴルフ・アカデミーという練習場の中に学校がある施設で、練習には毎日行っていたんですけど、授業にはほとんど出なくて(笑)。
結果的に2ヶ月でクビになってしまい、すぐにフリーターになってしまいました。 それでも練習場には通っていて、ミニツアーに出たりバイトしたりという生活を3年半くらい続けていましたね。
帰国後にレッスンを始めることになった理由を教えてください。
森:サンディエゴは、メジャーなゴルフブランドの本社が集まる場所でもあって、有名なプロ講師もたくさんいました。その中でティーチングプロの井上透さんと出会い、多くを学びました。それで帰国した時には完全に“アメリカかぶれ”の状態で「俺は世界の最先端のスイング技術を知っている」みたいな感じでしたね(笑)。試合にも出ていたんですが、若かったので遊んでしまって。 結局お金がなくなり、レッスンを始めることになりました。
僕は子どもの頃からゴルフをやっていたわけではなく、高校から始めたことと、理屈を知らないと納得できない性格だったので、ゴルフ技術の本を本当によく読んでいました。アメリカで学んだこととその知識をもとにレッスンをしていたんです。
帰国して住んでいた平塚でレッスンをしていました。 自分で言うのもなんですが、コミュニケーション能力は高かったので、すぐに人が集まるようになって、毎回20〜30人くらい来てくれていました。ただ、稼いでは遊ぶ、を繰り返していて、お金は全くありませんでした(笑)。その日暮らすのも精一杯でしたね。
理屈を知らないと納得いかない性格ということで、知識を身につけていったというお話がありましたが、森さんの「原理原則」の考え方とは少し違うようにも感じます。
森:そうですね。現在の原理原則に行き着いた理由は、先ほども話したように、僕がアメリカかぶれで、オンプレーンだとかそういう理論でレッスンしてた頃、26歳のときに井上透さんの合宿が終わった次の日に、陳清波さんと回る機会があったのがきっかけですね。
当時の有名なトッププロたちが集まる合宿で、初日はそんなプロと回って、その次の日に陳清波さんと一緒に回ったんです。最初はおじいちゃんと回るくらいな感じだったんですけど、今でも鮮明に覚えていますが、誰よりもボールをコントロールしていて上手く見えたんです。本当に衝撃的でした。
そのときに、アメリカかぶれを気取っていた自分の大切にしていた理論ではなく、この人は全部知ってるんじゃないかって思って。知識欲と興味が一気に湧いて教えてほしいと陳先生に質問攻めしていたら「仕方ないな、じゃあ教えてあげるよ」みたいな感じで、運良く教えてもらえるようになりました。
ただ、学べば学ぶほど、僕は下手になっていったんです。先生に言われたことをやればやるほど下手になる。でも本人はめちゃくちゃ上手い。ちゃんと言うことを聞いて実践しているのに、なぜだろう、できていないだけなんだろうと思いながらも、どうしても納得がいかなかった。それで、クラブの動きをよく見てみようと、観察することにしました。
先生のクラブの動きを見て、「これか」と思って真似するようにしたら、少しずつ良くなっていったんです。その原体験から、世の中に出ているほとんどのことは、どうでもいいことが多くて、本質を学ぶことが大事なんだと感じるようになりました。そこから「原理原則」という考え方にたどり着いたんです。
だから僕の場合、アドレスも何でもいいし、グリップも何でもいい。感覚表現と実際の動きは違う、という前提で教えています。教えるための表現と、本来の動きの違い。それを研究し続けてきた結果、生まれた理論が「原理原則」ですね。
僕はもともと理論が大好きだったからこそ、その理論が当てはまらない場面に出会ったときに、「ゴルフってこういうものだから」と理論で蓋をしてしまう人が多いことに違和感があって、それが嫌だったんです。だったら、すべてに当てはまるものだけが大事なんじゃないかと思った。今あるゴルフ理論に対するアンチテーゼでもありますし、それが原動力にもなったんだと思います。
東家プロとの出会いや東家商店の始まりについて教えてください。
森:原江里菜プロの紹介で初めて会いましたね。
東家:ゴルフを始めて30過ぎるまで誰にも教わったことがなくて、だいぶ遅いんですけどさすがに誰かに教わった方がいいなって思って。原江里菜プロが大学の後輩だったので紹介してもらった感じですね。誰か紹介してって言ったらダメ人間同士ってことで、森さんを紹介してくれて(笑)。出会う前から森さんのブログは見ていたので森さんのことは知っていましたね。
森:初めて会った時のことは覚えていて「人としてダメだなこいつ(笑)」っていうので嬉しくなったことが記憶に残ってます。
それから一緒にやるようになっていったんですけど、レッスンを続ける中で上手くなるためになんか考えたりするのが好きで、練習器具を作りたいなと思って、わざわざ工場に頼んで作ってもらった最初の道具がこれです。20年以上前に神奈川の町工場の人が作ってくれてできたアイテムで、初めて特許を取った練習器具ですね。特許は取ったもののどうすればいいのかわからず終わったんですけど(笑)。
東家くんは見た目が見ての通りなんですけど、知性があるんですよ(笑)。東家くんならなんでも色々とやってくれるっていう信頼感があったので、その当時にあったある練習器具を使ってブログとか雑誌で紹介していたんですけど、それがめちゃくちゃ売れていたんですよね。ただ気に入ったものを紹介しているだけだから、自分たちで作った方がいいんじゃないってなっていった感じです。 練習器具の作り方なんて僕ら全く分かってなかったので、2人で闇雲に町工場に行って。何件も回ったんですけど、ほぼ相手にされなくてね。こんなにモノって作れないんだって思いましたね。
それでもようやく1個目の練習器具を作ってくれるところも見つかってできたのが「ゴルフブラ」です。僕はベン・ホーガンが好きで、ホーガンバンドみたいな名前で最初考えていたんですよ。だけど、東家くんからゴルフブラで行きましょうって言われて。それを聞いて「面白いな」って思って、そこからなんかふざけた名前をつけるのが主流になっていった感じですね。
東家:胸につけるからブラっていう単純な発想ですね。
森:東家商店という名前にした理由は、基本的に僕は前に出るのがあまり得意じゃなくて、あまり表に出たくないタイプなんです。だから東家くんの名前を使いました。
僕が東家商店にあまり関係ないように思われている人も多いので、そういう意味では成功しているなと思っていますし、東家商店という名前にして結果として良かったですね。
練習器具が生まれる背景について教えてください。
森:僕らの強みは、ずっとレッスンを続けていることなんですよね。現場でお客さんが悩んでいることに対して、「こうした方がいいんじゃないか」と、自然とアイデアが浮かんでくるんです。
一般的な練習器具メーカーって、たぶん商品開発会議とかをして、「次は何を作ろう」とか考えると思うんですけど、僕らはそういうことをしなくていい。僕がずっとレッスンをしていて、たとえば「肘をキープできるようなものがあるといいな」と思ったら、レッスン中に東家くんに「右肘の角度キープ」みたいに箇条書きで送るだけなんです。
そうすると、1週間くらいで東家くんがホームセンターに行って、プロトタイプを自作して持ってきてくれる。これは東家チューブの原型なんですけど、「胸を支点にして腕が外れないように」って送ったら、1週間後にこれを作ってきてくれました。
東家:ホームセンターにあった電気設備の道具を使って、チューブをつけて作ったものですね。
森:東家くんは、試作して形にする能力が本当に高い。僕にはそれがないので、心からすごいなと思っています。
東家:ホームセンターに2時間とか普通にいられます(笑)。森さんがこれを言いたいんだろうなって想像しながら作る感じですね。森さんに教わってきたこともありますし、考え方を共有できているのはすごく大きいと思います。
森:僕が現場でゴルファーの悩みや課題を吸い上げて、それを解決するための要素を書き出す。それを東家くんが形にして、プロトタイプを工場に持っていく。そうやって練習器具が生まれています。だから、まだまだアイデアはたくさんありますし、すべてはレッスンの現場から生まれているんですよね。
練習器具開発の意義は、どんなところにあると考えていますか?
森:僕もそうでしたけど、ゴルフって理論が好きになりがちだと思うんです。本を読んだり、YouTubeを見たり。でも、結局一番大事なのは「体感すること」だと思っています。
頭で理解しても、体感できなければ意味がない。僕が陳先生に言われたことを理解してもできなかったように、体感しないとゴルフは身につかないんです。練習器具は、その体感を手助けしてくれるもの。自習するための道具だと思っています。
現在のゴルフレッスンや技術習得の状況を、どう見ていますか?
森:アメリカの方が進んでいると言われがちですけど、「それって本当かな?」と思うことも多いです。女子なんかは、明らかに日本人の方が上手いですよね。
普通にレッスンを受けていても、なかなか上手くならないことは多い。それに対して、僕は「絶対にうまくさせるぞ」という思いでやっています。だからこそ、言葉よりも体感。「これをつけてやってみて」と言える練習器具は、すごく意味があると思っています。
東家:真面目な人ほど、教わったことを一生懸命やろうとして、かえってうまくならないことも多いですよね。
森:最初は仮定を作って教えていましたけど、今はその人がもともと持っているものに気づいてもらい、引き出すだけなんですよ。ゴルフをやったことがない5歳くらいの子どもは、自然にスイングできる。でも大人がレッスンを受けて、ステップ通りに覚えようとすると、ゴルフを難しく考えてしまう。「ゴルフは難しいものじゃない」ということを、伝えていきたいですね。
これから挑戦したいことについて教えてください。
森:ゴルフを始めたけど、辞めてしまう人って多いと思うんです。それをできるだけ少なくしたいという思いがあります。理論が原因で、「レッスンに行ったけど分からない」「自分にはセンスがない」と思って辞めてしまう人がいる。僕はそれは違うよと言いたい。そうやってゴルフを続ける人が増えれば、業界ももっと活性化していくと思っています。
東家:森さんは昔から、「本当はレッスンプロはいらなくなるのが理想だ」と言っていました。それに近づくような道具を、これからもたくさん作っていきたいですね。
森:現場で見ている僕たちだからこそ、ゴルファーの悩みを解決する道具を、ちゃんと形にしていきたいです。
現在コラボしているユナイテッドアローズ ゴルフとはどんな取り組みをしていきたいですか?
森:今着ているパーカもそうなんですけど、ユナイテッドアローズ ゴルフさんと「グラフィックモノをやりたいよね」という話になり、それなら「5525」さんと一緒にやろうという流れになって実現しました。
僕が教えている契約選手たちが、みんな「5525」のアイテムを着ていたという背景もあって、3社のコラボレーションが決まりました。ゴルフウェアというよりも、練習の時や普段でも着られるものがいいよねという話になって、今回はパーカとTシャツを作っています。興味のある方は、ぜひ手に取ってもらえたらと思います。
それも踏まえてなんですが、ゴルフに必要なのは「スタイリッシュさ」だと思っています。ゴルフって、どうしてもダサいイメージを持たれがちだと思うんです。ゴルフ場ひとつ取っても、デザイン性が足りない場所は多い。だからこそ、ユナイテッドアローズのような会社に変えてほしいと思っています。
ゴルフ場を買ってもらって、スタイリッシュなゴルフ場を作ってほしいですね(笑)。
半分冗談半分本気です。でも、ファッションを通じて、ゴルフに「かっこいい」「スタイリッシュ」というイメージを持ってもらうことは、すごく大事だと思っています。若い人がやってくれないとゴルフは広がらない。感度の高い人たちにアプローチするには、UA GOLFのような存在が必要だと思っています。
僕らは現場で、そのサポートを少しでもできたらいい。だから、これからも一緒に取り組んでいきたいですし、ずっとコラボしていきたいですね。いずれは、東家商店を買ってほしいです(笑)。
東家商店のアイテムはこちら
森 守洋
Morihiro Mori
PROFILE
1977年生まれ、静岡県出身。高校時代にゴルフを始め、1995年に渡米。帰国後、陳清波プロに師事し、その教えを通じて説明や形にとらわれない「原理原則」という独自の指導哲学を確立。ツアープロからアマチュアまで幅広く指導を行っている。
東家 賢政
Yoshimasa Toya
PROFILE
1986年生まれ、熊本県出身。プロゴルファーとして国内ツアーや競技の現場で経験を重ねる。プロゴルファーとして活動する傍ら、「東家商店」を立ち上げ、現場で培った感覚と知見をもとに、ゴルファーの体感を引き出す道具づくりに携わっている。