いつまでもアメリカの叔父さんを
見ている。

微妙に微起毛したSteven Alan秋冬シャツのスタンダードナンバー。寸足らずのパンツに、白いソックス、こういったシャツのタックインを天然でやりのけるアメリカ人の格好よさには、いつまでも憧れ続けている。トーンで配色されたオンブレチェック、まるで無地のようなピンストライプに、3本ラインを交互に組み合わせたトリプルチェック柄を、満を持してご用意。アメリカの80年代の青春映画を観るとその格好よさがわかる。

日本に帰ってきた半纏。

福岡・久留米に3代続く織元、桑野新研産業がアメリカ向けに立ち上げたというブランドがKUWANO HOME。つまり、普段は日本ではほぼ見ることがないKUWANO HOMEを逆輸入。中わたはコットン70%、ポリエステル30%の混率で、コットンの吸湿性が保温力を高め、体温が伝わることで心地よくあたたかくなるのが布団由来の古典機能。こういう工芸のようなものづくりが大好きだし、半纏をジャケットの上に羽織るのがやりたくて。

イギリス田園びいき。

1993年にイギリス・コッツウォルドでビスポークフィッシングラゲージメーカーとして誕生したCOTSWOLD AQUARIUS。スローンレンジャーも愛した英国一美しいといわれる田園風景の中で作られるのは、MADE IN GREAT BRITAINにこだわった、ブリティッシュトラディショナルなフィッシングゲームバッグ。入れはしないが、釣った魚もしまえるくらいの高密度ナイロンにラバー加工の防水仕様。ブラックがSA別注。

あまりものには福来る。

フランスが拠点のWASTE YARN PROJECTは、セーターを編む際に出る残りものの糸を使って編み立てるニットブランド。糸を紡ぐ過程でさまざまな色が混ざり合うことで生まれる天然の配色を、ポジティブにものづくりに生かす。生産工程は2、3人の職人が12時間ほどかけてハンドメイド。ゆっくり几帳面に、あまりもので作られるニットは、10枚頼んで、10枚アソート。選べる楽しみも一緒にお届け。服もこういう時代です。

デニム、素足、タッセルローファー。

スペイン・マドリードの小さな靴工房からはじまったCASTELLANO。「4511」という品番のタッセルローファーを、シボ革と、通常ラインにはないゴツいラグソールに替えて別注。ドレスでもカジュアルでもなく、スーツやジャケットに合わせれば、ハズしのよきコントラストが生まれ、デニムに素足で履けば、いやらしさもなくすんなり馴染む。レザーの産地であり、靴作りも盛んなスペインならではのものづくりを、悪くないお値段で。

一点ものジャンクション。

飾るだけがアートではない。着られるものなら着てみたいので、東京の刺繍アーティスト、アポロさんが作るスウェットを。綿100%の刺子糸を使った刺繍に加え、ペイント、シルクスクリーンといった手法を用いてスウェットをキャンバスに自由に描く。よく入る刺繍は、「IT DOES NOT HAVE ANY SPECIAL MEANING」(特別な意味はありません)。描くイラストやドローイングには思想や哲学はなく、本能的な記憶と願望が交錯。

はじめて見る、
茶色いパイルソックス。

現存するアメリカ最古のソックス工場で作られているお馴染みのTHE RAILROAD SOCK。コットンを主体に厚手パイル編みによるクッション性と通気性、吸水性を備えた安心安定の履き心地が自慢のアメリカ製。こちらはスタンダードな3Pクルーソックスだが、白でも黒でもネイビーでもなく、珍しいブラウン。いや、むしろ、人生ではじめて見るようなブラウンのパイルソックス!

レザージャケットの快感。

昔の映画を観ていると、だいたいみなさんこんなレザージャケットを着ている。あくまでもそんな印象ってだけだが、何気なく着ているふつうのレザージャケットってやつが格好いいのである。そんな一着を、やわらかくも腰のあるインディアシープを使ってSteven Alanでも作った。合わせるなら、ブルージーンズに白いタートルネック。近年のインドのものって気になるものが多い。

語る大きな背中。

POSTALCOの「フリーアームシャツ」のビッグサイズを待ち望んでいたのは、私たちだけではないはず。オーガニックコットン100%の生地で仕立てられた一枚は、“フリーアーム”の名のとおり、肩の構造に合わせたパターンを発明し、これまでのシャツにはなかった機能美を作り出した。ある意味、シャツという堅苦しさからシャツを解放。色別注しなかったのは、空の模様のようなブルーストライプがやっぱり格好いいから。

これからの三つ揃え。

アウトドアやミリタリーものでよく使われるパーテックス(表地)とプリマロフト(中わた)のコンビを、ちょっとモードなセットアップに。簡単にいうと、かるくて、撥水性や防風性があって、着心地もいいという時代に適した万能型の三つ揃え。着るというよりまとう感覚のオーバーバルカラーコートに、インナーにも使えるジップアップジャケット、パンツはスノーカモ型でゆったりと。合わせても合わせなくても、冬の新しいスリーピース。

生地ストックの奥地から、
こんにちは。

フランネルハウンドトゥースに、やわらかな細畝のコーデュロイ。70年代、いや下手したら50年代の古着でありそうな、まったく今どきではない生地をINDIVIDUALIZED SHIRTSの生地ストックから掘り起こしてきた別注シャツ。創業当時からの襟型として存在するミディアムスプレッドカラーに、角を削ったカフにはアジャスタブルなボタンを2つ。正真正銘のアメリカンシャツだが、クラシックなヨーロッパが鼻先をくすぐる。

ふたたび不思議なベルト。

ベルトはちょっと変わりものの、こういうのが気分。技術的にも難しい革巻きバックルを使ったイタリア・パルマのAnderson'sの型押しドレスベルト。シルバー細工が入ったNYのs.k. manor hillのイタリア製クロコダイルエンボスレザーベルト。イギリス、KINGSLEY WALTERSのキングスレー・ウォルターズ自身がハンドメイドする珍しいオーバルバックルのブライドルレザーベルト。ベルトひとつで人生も楽しくなる。

あとからやって来たゴリラ。

空前のトラウザーズブームが去り、あとに残ったのは、デニムかチノか? Steven Alanからの提案はワークパンツのBEN DAVIS。モデルは、「US GORILLA CUT」と定番「ORIJINAL BEN’S」の間をとったはきやすいオリジナルの一本と、最も細い「TRIM FIT」を。ワークパンツといえばのポリエステルコットンの厚手の生地に、タグにもどこにも表からはゴリラが見えない仕様で、ブラックのみを展開。これがSAのゴリラだ。

ふわかるの美学。

とにかく見た目の重厚な存在感に比べて、すごくかるい。隣の知らない人にすすめたくなるくらいかるい。それはなぜか? 1等級のカシミヤにブルーフォックスをブレンドした糸を使い、いい分量と弾力感でふわっとしっとり編まれているから。もはや、触るだけでかるさを感じ、着ればあたたかい空気を含んだニットにやさしく包み込まれる。ニットの産地、山形で生まれたBATONERの工芸的クラフトマンシップの美学が存分に宿る。

ダッドのキワの攻防。

軍からメゾンまで、フランス人の足元を彩ってきたMarbotとのものづくりは、フレンチミリタリーのスリムなラストに、ハンドで編み込まれたモカシンをバランスよく。ステアハイドを使い、足当たりもやさしく。短靴は、街場の靴店の仕事靴のような得体の知れなさを形にし、ブーツはブーツすぎないミッド具合で、カジュアルさの中にも緊張感を表現。本格派のおじいさんがギリギリ履かないくらいの、ダッド感の妙を味わえる。

ふつうコンプレックス。

単純なチャコールグレーやブラウンではない。トーンの近い配色で玉虫シャンブレーとなった太畝7ウェールコーデュロイを、ダブルワッシャーをかける(生地の状態で2回洗う)ことで、ギュッと密度を上げ、派手に映りかねない玉虫感を抑え、奥行きのある色合いに。シルエットは裾までしっかり太さを保つズドンとしたストレート。ふつうなようでふつうでなく、品はあっても、カジュアルに。せっかくはくなら、こういうコーデュロイ。

フライトジャケットの憂鬱。

MA-1フライトジャケットの中でも、50年代後半から60年代前半までの第3モデルをベースにしたAVIREX製の一着。AVIREXでも最上グレードのヘビーナイロンツイルの表地に、ヴィンテージリブ、ポリエステル100%のインサレーションを使用。着崩すほどに洒落るのがMA-1の特権なので、大きいのから小さいのまで好みで選べるサイズ展開に。MA-1が似合う人間になりたい。

生真面目なニットポロ。

いつでも着られるように、素材はコットンベースにほんのりカシミヤをブレンド。3本撚りの7ゲージ天竺を甘めに編み立て、かすかなカシミヤのソフトタッチを残しつつも、見た目も触感もコットンらしいさわやかさが出るように。3つボタンのポロ型で、ちょっと真面目な装いをしたいときにも、休みの日の仕事着にも。意外とそういう格好って難しい。

気分はいなたいイタリアン。

2色の先染め糸を使い、立体的な模様が浮き出るドビー織りで織られた生地は、深みのある色合いと品のいい光沢感としなやかさでセットアップに花を添える。ワイドテーパードパンツには、新しい羽織りとしてのダブルブレステッド6つボタン1つ掛けを。エスプレッソもジャケットも時代はダブル。エスプレッソには砂糖を入れて飲むように、ためしに黄色いポロシャツでも中に着てみると、とってもいなたくなって、美味しくなる。

レザーコートの正しい調理法。

どこぞの格好いいポリスマンが着ていそうなPコートを、レザーブランドのCCUにオーダー。形はU.S.NAVYのPコートをベースに、たっぷりとやわらかいシープレザーを使い、薄く中わたを入れることで、さらなるしなやかさとあたたかさが備わるように。平たくいうと、めっちゃ着やすい。昔からレザーを好んで着ているのは、世の中を憂いている反骨心のある人と相場は決まっている。だから、今の時代にぴったり。

Photographer
Toru Oshima

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