失われたはずのカーコート。

その筋の人のためのサーマル。

使わないコンパスとデジタルウォッチ。

きまじめなトラウザーズ。

秋風が吹いて、スエードがそよぐ。

はじめましてのフランス靴。

きみは何者なんだい?

古顔のニューヨーカー。

やってきたブレイシズの季節。

いつか教壇に立つときのダブル。

斜に構えた手袋。

3つの天然素材の茶色い味。

不便なものは美しい。

長いシューホーンを使う男たち。

わたしのツイードコレクション。

まじめに履くべからず。

葡萄酒を飲み、パンをかじり、
リバーを着る。

食わず嫌いのネル三昧。

お口に合ったローカリズム。

パリで3時間待たされても。

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FEATURE

About SA Issue

「SA / ISSUE」はスティーブンアランが毎月のトピックスを今シーズンのムードに乗せてお届けする連載ウェブコンテンツです。
捻りのきいたSteven Alan(SA/エスエー)らしい世界観をぜひお楽しみください。

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失われたはずのカーコート。

失われたはずのカーコート。

カーコートはオープンカーに乗るときのためにつくられたという丈の短いコートだ。短いといっても太ももくらいまでの着丈で、今季の<AVIREX>別注はそんなカーコートを意識した。フライトジャケット由来のレザークオリティに、薄いキルティングをつけ、冬も着られるように。着ごたえはあるが、着ると重たさは気にならない。時代的にカーコートを着ていてもオープンカーを所有しているというステータスにはならないのは少し残念。
※2025年<AVIREX>の設立50周年を記念しアメリカの<HAV-A-HANK>にて制作された、特別なデザインのバンダナが付属されます。

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その筋の人のためのサーマル。

その筋の人のためのサーマル。

流行っていないから市場にもないサーマルアンダーウェア。日本では、ほんの一部の好きな人の“熱”だけで支えられている存在である。一方、アメリカでは「LONG JOHNS」の名で市民権を得ていて、防寒着として生活の一部となっている。選んだのは、ノースカロライナ生まれの<INDERA MILLS>。シャツの中には薄手の5oz。冬本番は軍仕様の肉厚な9.1oz。スラックスにはスパッツを。メリノウールを飛び越えて、TCサーマルに回帰。

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使わないコンパスとデジタルウォッチ。

使わないコンパスとデジタルウォッチ。

まず使うことはないであろうアメリカ製のコンパスがつけられるという理由で、<VAGUE WATCH Co.>のデジタルウォッチ「DG2000」を選んだといっても過言ではない。このフェイスに対して、<Steven Alan>だけのウレタンベルトをつけ、コンパスを装着。時代は進歩しているのか、それとも単に移り変わっているだけなのか。50年以上前に誕生したデジタルウォッチは、相変わらず同じような佇まいで安心する。文字は蓄光で光る。

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きまじめなトラウザーズ。

きまじめなトラウザーズ。

パンツが決まれば、その人のスタイルはほぼ完成する。特にレングスは自分の長さを見つけておくことだ。<Tangent>のトラウザーズは、穿くだけで大きな主張が生まれるライトメルトンの一本で、40年代のイギリス軍のグルカパンツがベースになった。なんといっても腰回り。フロント部の持ち出しによるサイズ調整法、ボタン留めのループタブ、プリーツ入りマーベルトに芯地を入れることで吸いつくようなウエストの美学をつくり出した。

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秋風が吹いて、スエードがそよぐ。

秋風が吹いて、スエードがそよぐ。

<Cale>との取り組みも長くなってきた。驚くほど薄くて軽いこのスエードを使って、何ができるだろうと考えた。物性の限界まで薄く漉かれた、革らしからぬしなやかさをどう表現するべきか。形は古いものを意識したショートジャケットとし、シャツの代わりにもなるような、ミッドレイヤーとしての役割を与えた。色は一言で言い表すのが難しいニュアンスカラーで3色。ためしにシャツのように3枚重ねてみたが、このとおり収まった。

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はじめましてのフランス靴。

はじめましてのフランス靴。

スティーブンアランとして初めての<MEPHISTO>は、ちょうど60年前にフランス・ロレーヌで創業した。スニーカーに見えるが、アニリン仕上げのトップグレインレザーを贅沢に使った革靴である。ハイグレードなシボ革に対してのグラフィックの入り方のバランス感は、アメリカにもイギリスにもないフランスメイド。足入れ時のフィット感を大事にし、ソールシステムの技術にこだわることで、足取りも軽くなる歩き心地を追求。

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きみは何者なんだい?

きみは何者なんだい?

フルジップパーカを着なくなって久しい。あの頃から30年ほど経ち、アメリカ製の厚手のものをアウター代わりに着ていたという記憶を、山形のニットブランド<BATONER>に託した。希少なジャンベルカ編み機で編まれたハリコシのあるコットン地に、染めや加工を施すことで、着始めの気恥ずかしさをほぐした。思い出したかのようにフード裏にワッフルを付けると、やっぱりフルジップパーカはアウターだなと思えた。

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古顔のニューヨーカー。

古顔のニューヨーカー。

<Steven Alan>のベーシックをあらためて考えたときに、<J.PRESS>がその昔「シャギードッグセーター」と名づけたシェットランドセーターに立ち戻った。今はスコットランドの<Jamieson’s>製となったが、別注は本家アメリカにはない色を糸帳から選んだ。日本の<J.PRESS ORIGINALS>では古顔のニューヨーカーを想像して、定番4つボタンダブルブレストブレザーをコーデュロイでオーダー。<J.PRESS>は古くて新しかった。

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やってきたブレイシズの季節。

やってきたブレイシズの季節。

アウターを脱いだらサスペンダー。ちょっとよくないですか? マッキーノにネクタイを締めるように、Tシャツとレザーなのにサスペンダー。一度慣れると病みつきに。1820年に創業したロンドンの<ALBERT THURSTON>は純粋なサスペンダーブランドであり、このとき世界で初めてサスペンダーが誕生した。先ほどからサスペンダーと連呼してしまっているが、それはアメリカ呼びで、イギリスではブレイシズが正式。

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いつか教壇に立つときのダブル。

いつか教壇に立つときのダブル。

タイドアップが前提のテーラードジャケットが、物理的にも精神的にも気楽に羽織れるようになるには? <Pelemele>はカバーオールをシャツジャケットとして再解釈。どこまでも軽いつくりを目指し、このダブルブレストも生まれた。コットンフランネルの小さなハウンドトゥース柄に、シルエットは背中を摘んで出すという高等技術を。ピークドラペルの派手さでバランスを取りながら、<Steven Alan>はベーシックを再考中。

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斜に構えた手袋。

斜に構えた手袋。

寒くなれば、必ず手袋をしている。着けたり外したりとせわしなくないかと聞かれても、それ自体も楽しいので仕方がない。なので、今季は手袋を3双用意した。高級ゴートスキンが使われた<FILSON>はアメリカ製。イギリスの<DENTS>は着けたことも忘れる「シークレットフィット」が特徴のミトンにもなるフィンガーレス。<Rab>もイギリスだがこれは機能的なので雨や雪の日に向いている。手袋ひとつで人格も変わる。

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3つの天然素材の茶色い味。

3つの天然素材の茶色い味。

アメリカに行くと茶色いものばかりを食べている。ハンバーガー、フライドチキン、マッカンチーズとすごくおいしいのだけど2日くらいで飽きてくる。でも、秋の茶色、<Steven Alan>の茶色は、体にやさしい天然素材のものだからもりもりと食べられる。カバーオール型のスエードジャケット、ベロアのポロニットに、ヘビーコーデュロイトラウザーズ。茶色を基本に、ボルドーやパープルなどの秋野菜の色味を合わせるのがおいしい気分。

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不便なものは美しい。

不便なものは美しい。

不便益という言葉がある。決して便利とはいえない蝋燭の小さな灯火やレコードに針を落とすまでの手間に愛おしさを見いだすもので、便利なものだけが有益ではないという話だ。<FILSON>のマッキーノもそうで、大自然で働くという用途が機能となった頑丈な生地とつくりは、現代には不向きかもしれないが、どうにも手放せない美しさを宿している。そんなマッキーノをどう着るか。深く考えずに、レコードを掛けるように楽しむといい。

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長いシューホーンを使う男たち。

長いシューホーンを使う男たち。

ローカリズムの話をもうひとつ。こちらは福岡の<FUJITO>が、同じく福岡の糸島にある<DOUBLE=DOUBLE FURNITURE>の木工職人、酒井航さんに製作を依頼したステッキのようなシューホーン。国産のナラ材から一本ずつ削りだされた工芸品のようなプロダクトで、屈まずともすっと靴が履ける。ただ玄関に置いてあるだけでも絵になるので、新築祝い、引っ越し祝いも、もうこれで迷わなくなる。

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わたしのツイードコレクション。

わたしのツイードコレクション。

イギリスをイメージしたわけではないが、結果イギリスのような飾らない柄のツイードとなった。親しげな手ざわりは少しイタリア的な要素もある。古い機屋で織られた、そんな尾州産ソフトツイードを使って、ショートジャケット、ワイドスラックス、バケットハットを仕立てた。好きなもので媚びていないものをつくるのが<Steven Alan>。お洒落という得体の知れない言葉よりも、身嗜みということを大切にしたいと思える3ピースとなった。

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まじめに履くべからず。

まじめに履くべからず。

ふつうのローファーを履くだけではもう満足できない体となってしまったので、マドリードの<CASTELLANO>におもしろいものを頼んだ。シボのあるスコッチグレインレザーに、キルティタンとモンクストラップを目立たせずにそっと添えたもの。マッキーノやシャギードッグに合わせたくて仕込んだが、サーマルスパッツがスラックスの裾から覗く足元も悪くなかった。デザインを生かすのは欲望たっぷりのスタイリングである。

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葡萄酒を飲み、パンをかじり、リバーを着る。

葡萄酒を飲み、パンをかじり、
リバーを着る。

まあ、たとえばフランスの大学の教授が、講義も終わり家路に着く途中に、街の商店でワインやパンやチーズなんかを買う。ワインなんかは内ポケットに入れておく。そんなことができるのが、この<Steven Alan>のハーフコート。「PAOLA社」に別注したダブルフェイスリバーメルトンを使ったリバー縫製によるリバーシブル仕様で、着心地も軽いから物もポケットにたくさん入る。外付けのポケットなんて脇をまたいだ大きさである。

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食わず嫌いのネル三昧。

食わず嫌いのネル三昧。

こういう人は案外多いのだと思うのだけど、ふだんからシャツといえばドレスシャツばかり着ていて、フランネルシャツになんて一向に興味を持たない。ただ、一度その味をしめるともう全部が好きになっちゃう。ニューオンブレチェックとストライプはドレスシャツの雰囲気を少し残しながら。マドラスダークチェックとグラフチェックのものはボックスのオープンカラーで。どこにも属さない柄行が<Steven Alan>のネルの楽しみ方。

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お口に合ったローカリズム。

お口に合ったローカリズム。

<SOWBOW(蒼氓)>は九州の工芸や技術に生産背景を持つ、東京と熊本が拠点のブランドである。民芸や工芸が地域にドシッと根を張るように、服飾もローカルならではの強さが際立つようになって久しい。上下、コーデュロイのペイズリー柄で、シャツはインラインとは別の型のシンプルなもので別注。ボタンは佐賀の有田焼の磁器製。宮崎・都城の染め工房で特別に洗い上げて、糸の中に水分が残るようなしっとりとした風合いに仕上げた。

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パリで3時間待たされても。

パリで3時間待たされても。

思いやり、気がね、遠慮、謙遜。こういったものは世界のどこにも例のない美しい国民性だが、こちらもほんのりやさしさが香るセットアップ。ガーメントダイの着古したツイル地の印象を裏切るような、生地裏のやさしい肌ざわり。ジャケットはすべてを削ぎ落としたコンテンポラリーなカバーオール。パンツはミリタリーをベースに太めに仕上げたノープリーツ。たとえ出張先で飛行機が飛ばなくても、おおらかでいられるセットアップ。

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