The Journey into Music

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2025.08.15  NEW

The Journey into Music
Photographer : Taijun Hiramoto
Writer : Takuya Chiba,Mayu Kakihata,Takumi Yuge
Illustrator : Koji Mayumi
Editor : Jo Kasahara
秋を彩る音楽の旅

新しい季節の気配とともに新しい音楽が響いてくる。
気温の変化に合わせてクローゼットの中を入れ替えるように,音楽のレパートリーにも入れ替えが必要。
今の気持ちに寄り添ってくれる音楽を見つける旅に出かけましよう。
Dippin'
_HankMobley
心地よい風とともに思い出す
秋の気配を感じさせる一枚
秋の気配を感じさせる季節に、心地良い風とともに思い出すのが、Hank Mobleyの『Recado Bossa Nova』だ。アルバム
『Dippin'』収録のこの曲は、クールなジャズの中に哀愁を感じるボサノヴァのメロディが響く大名曲だ。90年代にUKと東
京を中心に盛り上がりを見せたレアグル-ヴ、クラブジャズ・ムープメントの中でも再評価され、特にUnited Future Organization(しF.O.)がこの曲をサンプリングして生まれた『I Love My Baby』という曲で光を当てたことで『Recado Bossa Nova』は東京とロンドンのクラブのフロアを繋ぐ象徴的な存在となった。

デジタル全盛の現代において、ジャズのように〃人間の鼓動〃が交錯するバンドという集団が生み出す天然のグルーヴは、身体の芯に響いてくる。
人間にしか生み出せないアナログな音色と情緒。それは洋服であっても同じで、人が大切に作ったものには特別な手触りとム-ドが宿る。夏の残り香、秋の足音、季節のグラデーションとともに感じる郷愁。
それは、せわしない流行の知らせではなく、新しい季節とともに新しい装いをまとう静かな合図。
この曲とともに、ビールやワインを片手に夏を懐かしみ、新しい秋を想像する。それは特別な黄昏の時間になるはすだ。
Takuya Chiba
2018年にTHOUSANDを立ち上げ、ファッション・ライフスタイル誌「Silⅳer』を創刊。クリエイテイプディレクタ-として、ファッションを軸に幅広く活動を行う。
Tapestry
_Carole King
寄り添ってくれる人肌のような温かさ

Sony Music Labels lnc.

60年代から70年代にかけて、その類い稀ないメロディーメイキング、そしてシンガ-ソングライタ-として多くの名曲を世に
送り出し、時代の音楽シーンを彩ったキャロル・キング。彼女の音楽にはそっと隣に寄り添う人肌のような温かみがある。邦題『つづれおり』と名付けられたこの美しいアルバムはそんな彼女が自身の名義で1971年にリリースした2枚目の作品だ。それにしてもこんなにも全てが名曲のアルバムは探してもなかなか見つからない。人生で出会えて良かったアルバムの1枚と断言できるくらい、この作品からどれほど元気をもらい、感動したことだろう。

ルー・アドラーをプロデューサーに迎え、自作だけでなく元夫であるジェリー・ゴフィンと共に作り上げた楽曲の数々が歌われ、ソウルメイトでもあるジェームス・テイラー、ダニー・コーチマー、ジョニ・ミッチェルなど、錚々たるメンバーによる秀悦なサポートにも支えられた本作はこの時代だからこそ実現した鮮やかな音楽の記録だ。他へ提供するための楽曲ではなく、自身のために書いたよりパ-ソナルな内容の飾り過ぎない作りだからこそ、ありのままの自然体な美しさが引き立っている。誰かを愛すること、自分を愛することの喜び、そんな豊かな心がその人自身を輝かせていることを教えてくれるようである。工ンディングに収録された(You Make Me Feel Like)A Natural Womanがその答えなのかもしれない。
Mayu Kakihata
音楽に出会ったきっかけでもある60s-70sROCKを始め、SOUL/FUNK/RARE GROOVE中心に収集。現在はディスクユニオンで勤務しつつ、雑誌『Silver』でも連載企画を持つ。
Andy Pawlak
_ShoeboxFull Of Secrets
ロンドンの街に想いを馳せる青臭くメロウなAOR
ロンドン郊外の景色を思い浮かべ、秋から冬にかけて聴きたくなる-枚が、アンディー・ポーラックの『Shoebox Full Of Secrets』だ。パンクムーブメントが去った80年代初頭のイギリス、OrangeJuice、Prefab Sprout、Aztec Camera、The Smiths、The Pale Fountains、初期のThe Style Councilなどなど、パンクのスピリッツは継承しつつ、新しい感覚のアコースティックサウンドを奏でるアーティスト達が登場しだした。これらを日本の評論家やレコ-ド会社の人間が「ネ
オアコースティック」と名付け浸透する。尚、イギリス本国では基本的にポストパンクと呼ばれることが多い。そして、そのネオアコムーブメントの終わりに遅れて登場したアーティストがアンディー・ポーラック。

1989年にフォンタナからリリースされた、この傑作ファーストアルバム『Shoebox Full Of Secrets』は、商業的成功は収められなかったが、後進のコアな音楽ファンのハートをガッチリと掴んだ。青臭くメロウでロマンティックなメロディーメーカーは、高いソングライティング能力で洗練された透明感溢れる完成度の高い、所謂AOR的な曲達をこのアルバムに収めた。今現在でも知る人ぞ知る隠れた名盤的な扱いをされ、音楽ファンの中で語り継がれている。
Takumi Yuge
2018年6月、代々木上原にADULTORIENTEDRECORDSをオープン。そのレコードプティックから派生したファッションプランドADULT ORIENTED ROBESを2020年11月からスタートさせた。
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