連載コラム【音楽のある風景】 Vol.142

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2024.02.29 

グリーンレーベル リラクシングのBGMを選曲されている、選曲家の橋本徹さんより、コラム【音楽のある風景】が届きました。
どうぞお楽しみください!


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2月の選曲は、“音のアロマセラピー”のような香りと音楽のマリアージュをテーマにして。
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春の訪れが待ち遠しい芽吹きの季節、三寒四温の日々の中で、少しずつ瑞々しく柔らかな色合いに移りゆく早春の風景と心象に包まれ、今月も様々な思いや希いを素敵な音楽にこめて、選曲に励んでいました。
UNITED ARROWS green label relaxingのショップBGMも、近づく春の足音にささやかな歓びを感じるような、メロウ&グルーヴィーで心地よく明るいテイストに衣替えしていますので、気分も新たに、春の装いに身を包んで軽やかな毎日をすごしたいですね。

僕は3/13にリリースされる新しいコンピCD『Incense Music for Bed Room』の制作が終わったところで、先週末はNujabesの14回目の命日に合わせたトリビュート・ツアーで、福岡〜大阪〜東京〜京都をDJでまわってきたばかり。
このコンピレイションは去年の秋に、MAISON KAYSERやGODIVA cafeといったショップBGMの選曲でもつながるインセンスミュージックワークスから、NujabesやCalmから桑田佳祐や藤原さくらまでのジャケット・デザインなどで知られるFJDこと藤田二郎と組んで、新コンピ・シリーズをスタートさせてもらえませんかと、オファーをいただいたのでした。

先方は当初、やはり僕とFJDのコンビで2010年代に国内外で好評を博した、「Good Mellows」シリーズの続編的なイメージを考えられていたようですが、最初の打ち合わせで、インセンスミュージックワークスからのリリースなら、“香り(インセンス)と音楽(ミュージック)”のマリアージュをテーマにするのはどうですかと、逆提案させていただき、「Incense Music」シリーズが生まれました。
心安らげるアンビエント〜ジャズ〜チルアウト〜バレアリカ〜ポスト・クラシカル〜ジャジー&メロウ・ビーツの珠玉の名作群を集めて、生活の中で心地よくリラックスできる時間と空間を大切にしたいという気持ちが募っていたからです。
結果的にFJDの美しいアートワークと共に、Nujabesも敬愛していた海外でも評価の高い日本のトップ・アーティストCalmが素晴らしいマスタリング・サウンドに仕上げてくれて、まさしく“音のアロマセラピー”のような素敵なライフスタイル・コンピレイションができあがりました。

そして今回の企画で何よりも嬉しかったのは、僕の信頼するアーティストにコンピごとに毎回2組・2曲、新録音源の制作をお願いして、7インチ・ヴァイナルとしてシングル・カットもしたいという依頼でした。
僕はファースト・ミーティングですぐに、Uyama Hirotoによるファラオ・サンダースの名曲「Moon Child」カヴァーと、haruka nakamuraによるビル・エヴァンスの名曲「Soiree」オマージュをぜひ、というアイディアをレーベルに伝えました。
彼らふたりは、ご存じのようにNujabesの盟友・片腕で、彼の遺作サード・アルバム『Spiritual State』を完成させたアーティストですが、今回も僕の期待をこえるくらい素晴らしくオリジナリティーあふれる、かつコンピレイションのコンセプトに合った名ヴァージョンを吹き込んでくれました。

今回のコンピは、何かに導かれる必然のように、FJD〜Calm〜Uyama Hiroto〜haruka nakamuraと、存命なら生誕50年を迎えたNujabesの仲間・同志、リアル・フレンズが集まっていったことも特筆しておきましょう。
天国の彼もきっと喜んでくれるだろうね、なんて話しているうちに、Nujabesの「Spiritual State」も選曲に加えようと、曲順を組む直前に思い立ち、エリック・サティ〜マーヴィン・ゲイ〜ヴィニシウス・ジ・モラエスらの名カヴァーも含む、大満足のセレクションが完成しました。
いろいろと大変な時代ですが、心の平穏・安寧を保ちながら、毎日を落ちついて前向きにすごすためのフレンドリーな日常のBGMとなるように、80分間を丁寧に紡いでいきましたので、愛聴していただけたら嬉しいです。

『Incense Music for Bed Room』については、その他にもここに書いてお伝えしたいエピソードがたくさんありますが、長くなってしまいましたので、また来月!
“香りと音楽のマリアージュ”をテーマに、心安らげるアンビエント〜ジャズ〜チルアウト〜バレアリカ〜ポスト・クラシカル〜ジャジー&メロウ・ビーツの珠玉の名作群が80分間にわたって紡がれ、美しいアートワークと素晴らしいマスタリングにより、生活の中で心地よくリラックスできる“音のアロマセラピー”のように繰り返し聴きたくなる至福のライフスタイル・コンピとなった、橋本徹さん選曲の素敵なコンピレイション『Incense Music for Bed Room』

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橋本徹 (SUBURBIA)

編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。
サバービア・ファクトリー主宰。
渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。
『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』『Good Mellows』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは350枚を越える。
USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作。
著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。

http://apres-midi.biz
http://music.usen.com/channel/d03/
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