連載コラム【音楽のある風景】 Vol.162
MEN
2025.10.31
グリーンレーベル リラクシングの店舗BGMを選曲されている、選曲家の橋本徹さんより、コラム【音楽のある風景】が届きました。
どうぞお楽しみください!
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10月の選曲は、“水瓶座のソウル・ミュージック”に心から追悼の思いをこめて。
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昭和~平成の頃に比べると、秋が心地よい季節が短くなってしまった印象もありま
すが、食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋、そしてファッションの秋を、皆さん楽
しんでいらっしゃいますか?
早くも寒い日もちらほらという感じですので、お気に入りのコーディネイトに身を
包んで、風邪などひいて体調を崩されませんように。
UNITED ARROWS green label relaxingのショップBGMも、「退屈じゃないベ
ーシック」をテーマにクリスマス・ソングもフィーチャーして、11月中旬に衣替え
いたしますので、ぜひクリスマス・シーズンに向け気分高まり身も心も温まる、冬
支度に備えてお店に足を運んでいただけたら嬉しいです。
今月のこのコラムは、10/14に惜しまれながら逝去した、僕も本当に愛してやまな
い音楽家ディアンジェロ(D'Angelo)について、心からの追悼の思いをこめて綴ら
せていただきます。
僕は30年前、1995年の彼のデビュー・シングル「Brown Sugar」を初めて聴い
たときの衝撃と感激を、今でも忘れていません。
酩酊感と色気のある多重ヴォーカルのフロウに、ジャジー&メロウでループ感のあ
るトラック、それは1960~70年代のクラシック・ソウル/オーガニック・ソウル
の質感を、ジャズやファンクの要素も溶けこんだヒップホップ感覚で再現したよう
な中毒性の高いサウンドで、夢中にならずにはいられませんでした。
そんなセクシーでチルでストリート感も脈打っているのに、教会育ちでゴスペル音
楽のフレイヴァーを宿した彼の個性は、同年の記念碑的なファースト・アルバム
『Brown Sugar』でも花開き、彼は一躍ネオ・ソウル時代(当時はニュー・クラ
シック・ソウルと呼ばれていましたが)の幕開きを告げる寵児となったのです。
僕は同じ1995年のライヴ録音で、1996年に当初は6曲入りで日本のみでCD化され
た『Live At The Jazz Cafe, London』に推薦文を寄せたり、やはり1996年に、
タワーレコードのフリーマガジン『bounce』の自分が編集長になって初めての号
で、ディアンジェロにインタヴューする機会にも恵まれたのですが、さらに彼の真
価が発揮された金字塔的な傑作が、2000年に発表された『Voodoo』というセカ
ンド・アルバムでした。
敬愛し憧憬の念を抱いていたプリンスやマーヴィン・ゲイ、あるいはアル・グリーン
やスライ・ストーン、スティーヴィー・ワンダーやカーティス・メイフィールドの影
響も昇華して、クエストラヴ/エリカ・バドゥ/Q・ティップ/コモン/J・ディラ
らが名を連ねるソウルクエリアンズの面々と作り上げた、言ってみれば“水瓶座のソ
ウル・ミュージック”。
この『Voodoo』については、本当に語りたいことが尽きないのですが、センシュ
アルな歌の魅力はもちろん、その黒く深く脈動する粘っこいグルーヴ、揺らぎ~も
たり~ためる~ずらす気持ちよさを、ぜひ未聴の方も体感してみてください。
僕はディアンジェロに惹かれる理由をひとことで表すなら、「強さと繊細さ、官能
と痛み、ロマンティシズムとブルースが共存しているところ」だと思っています。
というわけで今月は、ディアンジェロをフィーチャーした僕のコンピ5作を、最後に
推薦させていただきましょう。
彼の名刺代わりの名作で僕が7インチ・シングルのリイシューも監修した「Brown
Sugar」をセレクトした『Ultimate Free Soul 90s』、今年やはり亡くなり追悼
の意を表したいロバータ・フラックの名曲カヴァー「Feel Like Makin' Love」を
セレクトした『Free Soul 21st Century Standard』、甘美でスピリチュアルで
チル&メロウでサウダージな彼の最も美しい曲「Africa」をセレクトした『Mellow
Voices ~ Beautifully Human Edition』、J・ディラ/コモンとの黄金トリオによ
る珠玉の逸品「So Far To Go」をセレクトした『Free Soul Decade
Standard』、エロティックなMVも話題を呼んだソウルフル極まりない人気作
「Untitled (How Does It Feel)」をセレクトした『Heisei Free Soul』、いずれ
も自信をもっておすすめいたします。
追記:
UNITED ARROWS green label relaxingのショップBGMに、11月中旬から新た
に加わる日本語詞の曲は、下記の7曲です。
①Original Love & Ovall「接吻(M.D.L. Version)」
②曽我部恵一「痛快ウキウキ通り」
③キリンジ「今日も誰かの誕生日」
④スガ シカオ「夜空ノムコウ(Live)」
⑤ピチカート・ファイヴ「大都会交響楽(アルバム・ヴァージョン)」
⑥吉田美奈子「頬に夜の灯」
⑦佐野元春「CHRISTMAS TIME IN BLUE」
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10月の選曲は、“水瓶座のソウル・ミュージック”に心から追悼の思いをこめて。
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昭和~平成の頃に比べると、秋が心地よい季節が短くなってしまった印象もありま
すが、食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋、そしてファッションの秋を、皆さん楽
しんでいらっしゃいますか?
早くも寒い日もちらほらという感じですので、お気に入りのコーディネイトに身を
包んで、風邪などひいて体調を崩されませんように。
UNITED ARROWS green label relaxingのショップBGMも、「退屈じゃないベ
ーシック」をテーマにクリスマス・ソングもフィーチャーして、11月中旬に衣替え
いたしますので、ぜひクリスマス・シーズンに向け気分高まり身も心も温まる、冬
支度に備えてお店に足を運んでいただけたら嬉しいです。
今月のこのコラムは、10/14に惜しまれながら逝去した、僕も本当に愛してやまな
い音楽家ディアンジェロ(D'Angelo)について、心からの追悼の思いをこめて綴ら
せていただきます。
僕は30年前、1995年の彼のデビュー・シングル「Brown Sugar」を初めて聴い
たときの衝撃と感激を、今でも忘れていません。
酩酊感と色気のある多重ヴォーカルのフロウに、ジャジー&メロウでループ感のあ
るトラック、それは1960~70年代のクラシック・ソウル/オーガニック・ソウル
の質感を、ジャズやファンクの要素も溶けこんだヒップホップ感覚で再現したよう
な中毒性の高いサウンドで、夢中にならずにはいられませんでした。
そんなセクシーでチルでストリート感も脈打っているのに、教会育ちでゴスペル音
楽のフレイヴァーを宿した彼の個性は、同年の記念碑的なファースト・アルバム
『Brown Sugar』でも花開き、彼は一躍ネオ・ソウル時代(当時はニュー・クラ
シック・ソウルと呼ばれていましたが)の幕開きを告げる寵児となったのです。
僕は同じ1995年のライヴ録音で、1996年に当初は6曲入りで日本のみでCD化され
た『Live At The Jazz Cafe, London』に推薦文を寄せたり、やはり1996年に、
タワーレコードのフリーマガジン『bounce』の自分が編集長になって初めての号
で、ディアンジェロにインタヴューする機会にも恵まれたのですが、さらに彼の真
価が発揮された金字塔的な傑作が、2000年に発表された『Voodoo』というセカ
ンド・アルバムでした。
敬愛し憧憬の念を抱いていたプリンスやマーヴィン・ゲイ、あるいはアル・グリーン
やスライ・ストーン、スティーヴィー・ワンダーやカーティス・メイフィールドの影
響も昇華して、クエストラヴ/エリカ・バドゥ/Q・ティップ/コモン/J・ディラ
らが名を連ねるソウルクエリアンズの面々と作り上げた、言ってみれば“水瓶座のソ
ウル・ミュージック”。
この『Voodoo』については、本当に語りたいことが尽きないのですが、センシュ
アルな歌の魅力はもちろん、その黒く深く脈動する粘っこいグルーヴ、揺らぎ~も
たり~ためる~ずらす気持ちよさを、ぜひ未聴の方も体感してみてください。
僕はディアンジェロに惹かれる理由をひとことで表すなら、「強さと繊細さ、官能
と痛み、ロマンティシズムとブルースが共存しているところ」だと思っています。
というわけで今月は、ディアンジェロをフィーチャーした僕のコンピ5作を、最後に
推薦させていただきましょう。
彼の名刺代わりの名作で僕が7インチ・シングルのリイシューも監修した「Brown
Sugar」をセレクトした『Ultimate Free Soul 90s』、今年やはり亡くなり追悼
の意を表したいロバータ・フラックの名曲カヴァー「Feel Like Makin' Love」を
セレクトした『Free Soul 21st Century Standard』、甘美でスピリチュアルで
チル&メロウでサウダージな彼の最も美しい曲「Africa」をセレクトした『Mellow
Voices ~ Beautifully Human Edition』、J・ディラ/コモンとの黄金トリオによ
る珠玉の逸品「So Far To Go」をセレクトした『Free Soul Decade
Standard』、エロティックなMVも話題を呼んだソウルフル極まりない人気作
「Untitled (How Does It Feel)」をセレクトした『Heisei Free Soul』、いずれ
も自信をもっておすすめいたします。
追記:
UNITED ARROWS green label relaxingのショップBGMに、11月中旬から新た
に加わる日本語詞の曲は、下記の7曲です。
①Original Love & Ovall「接吻(M.D.L. Version)」
②曽我部恵一「痛快ウキウキ通り」
③キリンジ「今日も誰かの誕生日」
④スガ シカオ「夜空ノムコウ(Live)」
⑤ピチカート・ファイヴ「大都会交響楽(アルバム・ヴァージョン)」
⑥吉田美奈子「頬に夜の灯」
⑦佐野元春「CHRISTMAS TIME IN BLUE」
橋本徹さんが7インチ・レコードでのリイシューも監修した、ディアンジェロの名刺代わりの名作にしてニュー・クラシック・ソウルの幕開きを告げたデビュー・シングル「Brown Sugar」が収録された、2016年に橋本徹さんが選曲した名コンピレイション『Ultimate Free Soul 90s』
今年亡くなった女性ソウル・シンガー、ロバータ・フラックが歌って1974年に大ヒットさせたユージン・マクダニエルズ作の名曲「Feel Like Makin' Love」のディアンジェロによる絶品カヴァーが収録された、2015年に橋本徹さんが選曲した名コンピレイション『Free Soul 21st Century Standard』
名盤『Voodoo』のエンディングを飾る、甘美でスピリチュアルでメランコリックでサウダージなディアンジェロの最も美しいチル&メロウ・チューン「Africa」が収録された、2009年に橋本徹さんが選曲した名コンピレイション『Mellow Voices ~ Beautifully Human Edition』
ディアンジェロがフィーチャーされた、ソウルクエリアンズの盟友J・ディラ/コモンとの黄金トリオによる珠玉の逸品にしてヒップホップ×ジャズ×ネオ・ソウルの至宝「So Far To Go」が収録された、2014年に橋本徹さんが選曲した名コンピレイション『Free Soul Decade Standard』
エロティックなMVも話題を呼んだ、ディアンジェロのセンシュアルでソウルフル極まりない人気作にしてセクシーかつチルな魅力の最高峰として名高い「Untitled (How Does It Feel)」が収録された、2019年に橋本徹さんが選曲した名コンピレイション『Heisei Free Soul』
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橋本徹(SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。『Free Soul』『Mellow Beats』『Cafe Apres-midi』『Jazz Supreme』『音楽のある風景』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは350枚を越え世界一。USENでは音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作、1990年代から日本の都市型音楽シーンに多大なる影響力を持つ。最近はメロウ・チルアウトをテーマにした『Good Mellows』シリーズや、香りと音楽のマリアージュをテーマにした『Incense Music』シリーズが国内・海外で大好評を博している。
http://apres-midi.biz
http://music.usen.com/channel/d03/
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