
ヒト
2023.10.19
『STAFF OF THE YEAR 2023』グランプリが語る、販売員の魅力とやりがい。
短時間勤務という限られた時間のなかで、自分ができることを模索し、オンラインストア内のスタイリング投稿に力を入れるようになったという〈ユナイテッドアローズ〉新宿店の仲 希望さん。今では投稿数もPV数も、常に全国TOPをキープしている。先日おこなわれた、アパレルブランドに所属する店舗スタッフのなかから日本一の“令和のカリスマ”店員を決めるコンテスト「STAFF OF THE YEAR 2023」では、全国8万人以上を勝ち抜き、見事グランプリを受賞。そんな仲さんに、日頃心がけている接客やスタイリング投稿へのこだわりを伺うとともに、販売職の魅力ややりがいについて語ってもらいました。
Photo:Yuco Nakamura
Text:Shoko Matsumoto
お客さまはもちろん、共に働くメンバーとも楽しさを共有したい。
入社は2003年。初めは〈ユナイテッドアローズ 〉(以下、UA)心斎橋店、そこから関西や都内店数店舗経験し、産休、育休を経て、2017年に復職しました。その年に〈ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ〉(以下、BY)丸の内店に異動し、その後、現在の新宿店で5年目になります。
−販売員を選んだ理由を教えてください。
中学、高校はバスケ部に入っていて、キャプテンを務めていました。もともとスポーツしかしてこなかったので、引退したときに、体育大学へ進学して教師を目指すか、好きだったファッションの道に進むかの二択だったんです。スタイリスト科に通っていたので、スタイリストになるか販売員になるか迷い、働き方のイメージがつきやすい販売員を選びました。
−接客業で心がけていることやモットーを教えてください。
働いていくうえで、来店されるお客さまに対して喜んでもらいたい、楽しい気持ちでお買い物していただきたいというのはもちろんのこと、それを一緒に働くメンバーとも共有したいと思っています。みんなで楽しく働くことが、お店の雰囲気に繫がって、結果お客さまが入りやすいお店になるのかなと思います。お客さまも、一緒に働くメンバーのことも、同じくらい大切に思いながら働いています。
お客さまの求めるものを分析、想像し、スタイリングで応えていく。
ちょうどコロナ禍に入ったころです。それまでは自分の写真を撮ることにすらすごく抵抗があったのですが、当時の店長から「これからはオンラインストアにも力を入れていかないといけない」と言われ、さらに「絶対にできると思う」という言葉に後押しされて、始めることにしました。
−実際に始めてみてどうでしたか?
やるからには、きちんと全うしたいと思いました。でも、朝はバタバタしていて時間がなく、撮影をお願いするのが申し訳なくて。自分のなかでは、投稿枚数を増やせばもう少し結果に繋がるはずだと思っていたので、それをストレスに感じていました。それでも続けていくうちに、たとえば撮ってくれる人がいないのなら三脚を使えばいい、日中に撮れないのなら朝少し早く出勤して撮ればいい、と、ストレスだった部分を自分自身で解決することができるようになり、だんだんとやりやすくなっていきました。
お客さまがオンラインストアに何を探しにきているのかというのを、毎日売り上げを見て、常に考えるようにしています。たとえば、オフィスカジュアルは自分では着る機会があまりないのですが、弊社の強みのひとつ。自分の好きなテイストだけでなく、お客さまが求めていて、かつ自分の得意なテイストを3つくらい提案するようにしています。また、店頭でリアルに売れているもの以外も、きちんと着て見せるようにしています。というのも、来店されるお客さまだけではなく、オンラインストアでは北海道から九州まで、全国のお客さまが見てくださっています。東京はまだ蒸し暑くても、北海道では少し涼しくなっているなど、気温の変化もあるので、お客さまとの会話や売り上げの数字などさまざまな角度から分析しています。
やるからには手を抜かない。全身全霊で挑んだ『STAFF OF THE YEAR 2023』。
「STAFF OF THE YEAR 2023」の一次審査のロープレ場面 写真提供:「STAFF OF THE YEAR 2023」
わたしはもともと人前に出るのが得意ではなく話をするのも苦手なほうなので、勇気が出ませんでした。でも、昨年の『STAFF OF THE YEAR 2022』を初めて見てどういう大会かわかりましたし、勇気が出ないからといって挑戦できないというのも矛盾しているなと思ったので、今回は一年かけて大会のことをイメージしていきました。ただ、実績の一次審査で8万人から500人くらいに絞られるので、UA社のなかで一位通過しなければ、たぶん出ていなかったと思います。それくらい自分に課さないと、全国では通用しないだろうし、自分に自信が持てないと思ったので、一位通過出来れば最終審査に進もうと思っていました。
「STAFF OF THE YEAR 2023」の二次審査の自己PR
自分ひとりではなく、UA社の代表として出ているプレッシャーがあったので、できるだけ社内を巻き込んで盛り上がれるよう努力しました。自分が大切にしてきたのは人と人との繫がりなんです。大会では応援してくれた方々の期待に絶対に応えないといけないと思いましたし、「応援してほしい」と自分で自信を持って言えないといけない。自分の事だけで一生懸命になっているからこっちができないとならないよう、全部を全力で取り組まなければと思いました。
−ストイックですね。
そうかもしれません。この大会で優勝できなかったら、この先どうしようかと思っていました(笑)。これだけやって結果が出なかったら、この先何をどう頑張るべきか分からない、自分のなかでは、そのくらいの気持ちでプレッシャーをかけました。
−そして見事「STAFF OF THE YEAR 2023」グランプリを受賞されました。率直な感想を聞かせてください。
正直、ほっとしました。客席で喜んでくださっている会社の方々の姿を見て、すごく幸せな気持ちになりました。応援してくれた皆さんの協力もたくさんあり、第一、第二審査と一般票が一位だったと聞きました。グランプリを受賞したことで、この会社がすごく素敵なところなんだということもわかっていただけたんじゃないかなと思います。
ご来店いただくお客さまの中には、この大会をご存じない方もいらっしゃると思うので、その分、責任とプレッシャーは増えました。そのことが、より店頭で接客をしたいという気持ちになっていますし、「スピーチを聞きました。今度お店に行きます」などのご連絡をいただくことが多くなり、大変嬉しく思っております。
−接客や仕事に対する考え方は変わりましたか?
特に変化はありません。今までやってきたことをしっかり続けていくことが、自分にとっては大切なのかなと、改めて感じています。
共に働くメンバーの指針になれるよう、そして会社に貢献したい。
自分がこのように評価されることで、メンバーの具体的な指針になれたらいいなと思っています。そして、わたしもきちんと会社に貢献し続けていかないといけないなと思いました。
スタイリング投稿を始めてさらに思うことですが、お客さまに、洋服の着方をきちんとお伝えすることです。試着して着ている自分をイメージできればご購入いただけるのですが、自宅に帰ってから手持ちのアイテムと合わせるときに迷う方がいるかもしれません。なので「ワイドパンツと合わせるときは、シャツの手首を少しまくるとスッキリ見えますよ」とか、着こなしのポイントを、わたしの思い付く限り、お伝えしています。せっかく購入したお洋服を、悩むことなく、たくさん着てもらいたいですから。
お客さまともスタッフとも、思い入れがたくさんありすぎて、ひとつに絞れません。直近では、地方から新宿店にお買い物にきてくださり、「おめでとう」と声を掛けてくださったこと。またスタイリング投稿を始めたことや「STAFF OF THE YEAR 2023」に出場したことで、直接お会いしたことがない方ともやりとりができるのは、輪が広がったなと思います。
−今後の展望についてお聞かせください。
今まで、言われたことはしっかりとやるけれど、自分からこうなりたい、こうしたいということがなかったんです。スタイリング投稿を続けたその先に何があるんだろう…と悩んでいたときに、尊敬するバスケットボール選手の言葉が励みになりました。「朝、早く起きてハードワークするとき。夜、遅くまで起きてハードワークするとき。何もしたくないけれど、それでもやり遂げたとき。それが夢を生きてるということなんだ」夢というのは目的地のことではなくて、一生懸命頑張っている、旅路そのもののことを言うんだって。わたしにはこうなりたいという意志があまりなかったんですが、その時やれることを一生懸命続けたことが、このような結果に繋ったのだと思います。これからも堅実に、自分のできることにしっかり取り組んでいきたいと思っております。
INFORMATION
PROFILE

仲 希望
2003年の当社入社後、複数の店舗勤務を経て2019年より「ユナイテッドアローズ 新宿店」に所属。2020年よりオンラインストアのスタイリング投稿を開始。現在は常にトップクラスのフォロワー数やPVを獲得。「STAFF OF THE YEAR 2023」にてグランプリを受賞し、10月より社内のDXセールスマスターにも任命される。