ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ヒト <UNITED ARROWS PODCAST>

2021.06.08 TUE.

PODCASTでお送りするOMOIDE EPISODES #1
セレクトショップの新しい“てにをは”について。

ユナイテッドアローズの30年の軌跡を振り返る写真集「United Arrows」の発売に合わせて、インスタグラムとサイトで〈UNITED ARROWS ARCHIVE〉がスタート。OMOIDE EPISODESは、この中で様々な方にご登場いただいて、それぞれの思い出を語っていただく音声コンテンツです。第一回目となる今回は、〈ビームス〉メンズカジュアルディレクター中田 慎介さんとユナイテッドアローズ社(以下UA)クリエイティブディレクター松本 真哉さんのお話をお届けします。 対談のテーマは「セレクトショップの新しい“てにをは”について。」 早速、二人のクリエイティブディレクターのお話を聞いてみましょう。 PODCASTでは、全文をお聴きいただけます。

Photo:Kenta Sawada

松本:すいません、わざわざお越しいただいて。

中田:いえいえ、ありがとうございます。

自分はちょうど2000年のタイミングにアルバイトで、〈ビームス プラス〉というレーベルからスタートをしたので、アメリカ服のノウハウをどちらかというと徹底的に、音楽とか映画とかカルチャーを叩き込まれて今の現職の立場をやらしてもらっているので。やっぱりそのモノのディテールだったり、素材みたいなところに、やはり〈ビームス〉のモノづくりは絶対そこを外しちゃいけないなと。

松本:同じ感じですよね、やっぱり。あまりいじったりしないっていうところが、やっぱりそうなんだなというのと。元々そのアーカイブそのものを一番セレクトの中では愛している側かなっていう(笑)。UAの場合だと、ワークウェアなのに、なんか色っぽく持っていきたいとか。男っぽく着たいとか。それでもムードを出したいみたいな着方をしたいっていうのが、デザインしたり、別注したり、そういうところに反映しているのかなと。

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中田:すごく感じます、自分も。〈エイチ ビューティ&ユース(以下H)〉のお店に行かせてもらうと絶対ベースになったモデルがちゃんと見えるんですけど、しっかりアレンジされている。袖振りの感じとか、肩幅とか、“モテる”改造がされているなって(笑)。〈ビームス〉はどちらかというと物欲を形にしちゃっているようなところも、ちょっとあるのかなって。

松本:やっぱり〈ビームス〉で買うべきものと、UAで買うべきものやっぱ違うなって思って。

中田:それ、自分も思います。

松本:例えばプリントTとか、うちだったらハンガーで綺麗にブティック出ししている感じの方が、お客様には映えるのかなっていう。僕が〈ビームス〉に行って一番思うのは、なんかレコードを買う感じ。その感じのTシャツは〈ビームス〉さんの方が圧倒的に楽しくて。だから着方も違うんですよね。

中田:そうやって言っていただけて嬉しいですけど。やっぱり源流が御社と一緒だなっていう風には思っているんですけど。きっちり、ちゃんと会社の色が分かれているのが自分的にはすごく楽しいなって。多分同じところを狙っているようで、実は狙ってない。けれど、お客さんが両軸見たいなって思わせるようなブランディングが両社できたら一番楽しいですよね。お客さんにとっても。

松本:僕らもなんか、〈ビームス〉さんとはもうシェアスピリッツで。そっちは〈ビームス〉さんで、こっちは僕で、みたいな。僕だけじゃなくてバイヤーとかもよく言いますけど、やっぱりそこにシェアする感じはありますよね。

中田:ありますよね。あと、自分は今メンズカジュアル全体を見るようになってまだ10年も経ってないんですけど、僕がもっとカジュアルを見るようになる前から、変わらずスタッフ同士はめちゃくちゃ仲が良かった。よく飲みに行ったり、ご飯に行ったり、情報交換したりしていたので。そういう意味でいうと、なんか従妹みたいな。

松本:そうですよね、〈ビームス〉さんとはありますよね。


ここで話は2016年にさかのぼります。この年はある種UAにとっても、また〈ビームス〉にとっても特別な年でした。4月28日には新宿に「ビームス ジャパン」がオープンし、その翌日29日には南青山に「H」がオープンしたのです。その時のことをお二人はどう思っていたのでしょうか?

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中田:僕があのユナイテッドアローズさんで印象に残っているのは、自分はやっぱり「H」はちょうどオープンのタイミングが僕らの「ビームス ジャパン」とほぼ一緒のタイミングで。

松本:めちゃくちゃ意識していました。

中田:なんかUAさん、すごいのを青山に作ろうとしているって言う噂から始まって、すごいブランド集めてるよと聞いて。その時「ビームス ジャパン」も結構バタバタなスピードで動いている時だったので、これほんとに、まじでやらないとやばいよって。僕らって足し算なんですよね、考え方が。足し算なのを、逆に引き算でプロモーションと雰囲気と、あとスタッフのいわゆるユニフォーム的なディレクションの仕方に「うーわ。これ。」ものの良し悪しっていうよりも戦略の部分ですごくやられた。青山エリアで僕らとしてなかなか入り込めないって勝手に線を引いていたところを、やっぱり開いてくれた瞬間でしたし、自分の中ではすごい衝撃だったんですよね。

松本:そんなに言っていただいて、ありがとうございます。

中田: 「ビームス ジャパン」は完全にカテゴライズされていたので、やっぱり元々僕らの仕込んでいる時からベクトルは違うもんだっていうふうに思っていたので。

松本:いやいや。そういう意味でいうと、やっぱり「ビームス ジャパン」の存在で。できた時もそうだけど、できた後の活用の仕方もそうですし。あの時を自分から見ていると、前からそうだけど、あの「ビームス ジャパン」ができたことを機に、〈ビームス〉さんが正直日本の真ん中に出始めたって感じがしているんですよね。“THIS IS JAPAN”ていう感じが、そこはやっぱり〈ビームス〉がすべき、なんていうんだろう、リーダーみたいなっていうのを感じていて。だから見ていて気持ちいいというか、日本人としていいなっていうのは思いましたね。だからできたときは、本格的に〈ビームス〉が〈ビームス〉になったなっていう感じで思いましたし、今でも思います。

中田:ありがとうございます、本当。ありがたいですね、そう言っていただけると。「ビームス ジャパン」って、ディレクターがいっぱいいるっていう新しいカテゴリーだったので、結構ごちゃごちゃになるのかなって思っていたんですけど。逆にそれが日本のミックスカルチャーみたいなところと、うまくこう波に乗れたっていう例ではありますね。

松本:その感じがすごくいい。

中田:よくも悪くも整えられないっていう(笑)。やっぱりディレクターが強いので、うちって各々。やっぱり同じ道を一緒にいきましょうっていう考え方だと、あんまりうまくいかない。

松本:ああいう十人十色みたいなのがすごい〈ビームス〉っぽいなって思っていて、元ビームスでフリープランナーの種市暁さんの言葉ですけど「何を着るかじゃなくて誰が着るか」だと。僕はすごい影響を受けていて、やっぱりヒトが大事だし、十人十色こそ最高の価値だと思っていて。なんか〈ビームス〉さんのあの表し方ってすごく爽やかに、整えてないのも含めて爽やかになるのは、やっぱ現在進行形の取り組みですけど、印象的だなって思いますね。


店舗スタッフを経験し、現在はディレクターとして指揮するお二人です。ディレクターとして、どのような使命を感じているのか、お話を伺いました。

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松本:ディレクターの使命……。どちらかといえば、全員で一つのことをやるっていう感覚でいるので。でも一つ言えるなら、やっぱりムードメーカーっていうのはあるかなって思っています。ヒトのコミュニケーションを、チームのコミュニケーションを司るっていう。ディレクターってそういう仕事なのかなって思っていますね。

中田:やっぱりディレクターって、どれだけ楽しいかっていうのをみんなに伝えられるかっていうのが使命かなって思っているので、やっぱり楽しさをどれぐらいお客さんまで楽しさの度合いを薄めずに伝えなきゃいけいない。なるべくコミュニケーションをして、いろんな得たものを共有していくっていうのが使命なのかなって思いますね。

松本:全然違うところでもないですけど、ディレクターの使命っていうと、これがなんでかっこいいのかをチームで一番追求しなきゃいけない係と思っていて。だからこういう演出するんだよ。こういうお店に陳列するんだよ、このボタンじゃなくて、このボタンなんだよって、全部自分の中で分解して、一番こう生真面目に、なんでこれがかっこいいかって考えると、全部のことが決まってくるなとは思ってはいるんですね。

中田:一番0から100まで全部の答えを持ってなきゃいけないっていう、そういう使命はありますね。勝手な自分への宿題っていうのがあるのかもしれない。やっぱ一番分かってないといけない存在っていう使命感は勝手にありますよね。


両社が考える新しい“てにをは”、つまりコミュニケーション方法についてはどうでしょう?

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中田:僕が思うヒトの繋げ方っていうのは、自分らはより今後、個々の動きにフォーカスしていくっていう動きをしていっていて。もう洋服の着方とか表現の仕方とかっていう、大きい土俵はあるにしろ、表現の仕方は各々自由だし、好きな人のコーディネートをお客様側が情報をとにかくとっていく時代。お客さんが選べる自由を持ってくる時代になるだろうと。その方が、もしかして面白い化学反応が起こるんじゃないのかなっていうところに期待値がある。だから、なるべく表現の自由の幅を振り切っていこうかなって。ちょうど思っている最中です。お客さんが選ぶ楽しみを掴んでもらえる会社になったら面白いなって。そしたらお店をやる側も楽しいだろうなって。そういうシステム作りを会社全体はし始めていますね。

松本:もうヒントやアイデアだけを、良質なアイデアをたくさん渡して、っていうこちらの決めつけがないっていうファッションが、これからのファッションかなって思っていて。あとはジェンダーレス。男の人が女性の服を着る、女性が男性の服を着るっていう。やっぱり30~40%までしか作っておかなくて、残りは何をどうやって着るっていうところで100%に持っていってもらうっていう方が、ファッションとしてイケてるなって思ったんですよね。

中田:若い子を見れば見るほど、そう思い始めていて。若い子の方が楽しんでいるなって。その反面、僕らは変な、見えない固定概念に固められちゃっているなっていうタイミングがあって。まあそれはそれで楽しいので、それはそれで選ぶのも「お客さん」みたいな感じでしてあげられると一番いいなって思って。

松本:もう個人個人がばらばらのモノを着るし、アイテムが違うだけじゃなくて、テイストがガチャガチャ。むしろ、それがかっこいいじゃないですか?こういう方々を一同にお相手できる商売をやるって、やっぱり都合の良い商売のスタイルや考え方を捨てないと。一つのモノがたくさん売れることがいいことじゃないし、それってお客様側からみると、当然それを求めてきたわけじゃないですし。これからのヒトとモノを繋ぐっていうと、ほとんどヒトから始めて、その後考える。で、その後モノの都合っていうのをどう解消していくかっていう、サステナブルっていうのも含めてやってかなきゃいけないのかなっていうのは思うところですね。

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今日はビームス 中田 慎介さんとUA 松本 真哉さんの対談をお届けしました。次回もお楽しみに。

PROFILE

中田 慎介

ビームス メンズカジュアルディレクター 1977年生まれ。2000年「ビームス プラス 原宿」のオープニングスタッフとして入社。2012年に〈ビームス プラス〉のディレクターに就任後、〈ビームス〉のチーフバイヤーを兼任し、2015年3月より現職に。ビームスのメンズカジュアル全体を束ねるビームスの仕掛け人。

松本 真哉

株式会社ユナイテッドアローズ チーフクリエイティブオフィサー ユナイテッドアローズ渋谷店や有楽町店、原宿ブルーレーベルストアの販売スタッフを経て、2002年より商品部に異動。バイヤーやデザイナーを経験した後、ビューティ&ユースのメンズファッションディレクター、クリエイティブディレクターを担当。2021年より現職。

JP

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