ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ヒト <UNITED ARROWS PODCAST>

2021.08.11 WED.

PODCASTでお送りするOMOIDE EPISODES #5
服には思い出が詰まっています。

ユナイテッドアローズ(以下UA)の30年の軌跡を振り返る写真集「United Arrows」の発売に合わせて、インスタグラムとサイトで〈UNITED ARROWS ARCHIVE〉がスタート。その中の〈OMOIDE EPISODES〉は、毎回様々な方をゲストにお迎えして”思い出”を語っていただく音声コンテンツです。第5回目のゲストは、UA社の設立メンバーである鴨志田 康人さん。UAのみならず、〈Camoshita UNITED ARROWS〉という自身の名前を冠したブランドの洋服は、世界からも評価される稀有なクリエイターのひとりです。そんな鴨志田さんと対談するのは、吉田 恵理子さん。〈ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ(以下BY)〉のウィメンズのディレクターとしてさまざまな洋服づくりに携わり、現在は〈6(ロク)〉のディレクターとしてウィメンズウェア手掛けています。実はこのお二人、UA原宿本店で同時期に働いていたことがあるんです。今回お届けするのは、思い出がたっぷり詰まったUA原宿本店の隣にあるUA BARから。二人が今までに制作や仕入れに携わった忘れられない洋服の話をお聞きしたいと思っています。たくさんの想いが込められた服を。 PODCASTでは、全文をお聴きいただけます。

Photo:Kenta Sawada

吉田:UA渋谷店が最初に出来たじゃないですか?私、その時まだ高校生だったんですけど、原宿本店がその後出来て。で、レセプションに母と一緒に行って。その時の印象は本当に忘れられないです。3階が〈STYLE for LIVING〉だったんですね。まだその時って恥ずかしい話、お水って、今当たり前ですけど…ペットボトルのお水を買うのっていうのは……。

鴨志田:ステータスになってた。

吉田:そう、ちょっとステータスになっていた時代で、エヴィアンホルダーみたいなものも出てきてたじゃないですか?日本のライフスタイルが変わっていく中で、UAで〈STYLE for LIVING〉が展開されていて、あの記憶って幼いながらに残っていました。すごくかっこよくて。

鴨志田:まぁね。早かっただろうし、やっぱりお店の中にカフェっていうものが海外には少しずつ出てきていた時代だから。そういうのが併設されているショップって大人だよね、かっこいいよね、みたいに思えてた時代だから。今でこそ当たり前だけど、本当にやりたいことの一つだった。そのカフェに吉田 恵理子さんがいつしか立つようになって。懐かしいね。

吉田:懐かしいですね。

鴨志田:その思い出が詰まってるお店だもんね。僕はメンズドレスだったから地下一階に鎮座してて、そこからスタートだね。アルバイトから入って、メンズに入ったね。

吉田:そうですね。メンズも経験して、もう全部経験したっていうか…UAのウィメンズのドレスも。メンズカジュアルは経験してないですけど。

鴨志田:メンズドレスから入ったもんね。〈ドルチェ&ガッパーナ〉のミニタイトスカートを履いて(笑)。

吉田:ここで言いますかね?

鴨志田:有名な話だけど(笑)。それを売り場で、颯爽と。

吉田:多分30センチしかスカート丈がなかったと思うんですけど、あれを最初に。

鴨志田:階段を上がってくよっちゃんを、みんなの眼差しが熱く…(笑)懐かしいなぁ。

吉田:知らなかったんですけど(笑)何も怖いものはなかったです。あの時。

鴨志田:とんがっていたよね。その後、ウィメンズの販売を経験して……。

吉田:UA有楽町店に行ってUA横浜店へ。その後、バイヤーになりました。

鴨志田:バイヤーを経験して、よっちゃんなりにUAらしいオリジナル作るようになったよね。

鴨志田:こんな話をこうやって20、30年近く経って会話をするって、面白いね。

吉田:私がUA原宿本店にいた頃は、鴨志田さんはもう神のような存在だったんで(笑)。

鴨志田:まあでも、販売だけじゃなくて色々飛び回ってたんで、あんまりいなかったけど。

吉田:でも最初にメンズのVゾーンっていう、このYシャツ合わせて、ネクタイ合わせてっていう。鴨志田さんにも色々アドバイス聞きながら……。懐かしい思い出です。


UAのクリエティブディレクターとして、また自社企画ブランドの〈Camoshita UNITED ARROWS〉のディレクターとして鴨志田さんが服作りに置いて大切にしていたこととは何だったのでしょうか?

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鴨志田:俺の場合バイイングもしてたから、調達するモノ、作ろうが買おうがとにかく店頭に並ぶものという視点で言ったら、正直まだ答えはないんだけどさ。創業から“UAらしさ”って0から始まってるから、とにかく今までの世の中にはない新しい価値を作っていきたいなというところから始めて、いまだにそれを続けてる感じだから。他にはないUAでしか出せない価値観、付加価値観っていうものを漠然と求めてるかな。俺たちが海外に行って必ず行かなきゃいけないと思うお店ってあるじゃない?で、日本に来たらまずUAに行かなくちゃいけないなと思わせるような、そういうような品揃えのお店にしたいなって。ベーシックな服ってどこにでもあるじゃない、別にネームとっちゃえばあんまり分からない。メンズのスーツとかって特にそうで、差をつけるのは難しいよね。その中で本当に細かいスペックやディテールの違い、フォルムの違いで、いかに“らしさ”を出していくかっていう地道な作業なんだけど。でもなんか圧倒する、そんな強さが欲しいっていうので、そういうモノ作りをしたいなって思ってやってたな。

吉田:私が記憶してるところで、UAができる前の日本のビジネスマンのスタイルというのは、ソフトスーツとか、セカンドバッグとか、そういう景色が見えてたんですけど。UAができてから鴨志田さんがディレクション、バイイングされてたのが、クラシックで色気があって。日本の男性のビジネスシーンにおけるファッションがすごく変わった、変えたというか、そこの価値観ってもともとなかったと思うんですけど。

鴨志田:日本にね。全然なかった。

吉田:そこを変えていった時って、どんなことを考えていたんですか?

鴨志田:「変えてやろう」なんてこれっぽっちも思ってなくて。かっこいいからこれ売りたい、ただそれだけで。それまでの80年代の服って言った通り、ソフトスーツ全盛で、テロテロで、今見るとちょっと新鮮に見えてきちゃうんだけどさ(笑)。何でもありの時代でしょ、80年代って。〈ジョルジオ アルマーニ〉のイタリアっていうイメージの中で、すごく仕立てのいいスーツに展示会で出会ったの、「あ、こんな世界があるんだな」って、それまで全然知らなかったの。クラシックって言ったら俺たちの世代は、ブリティッシュかアメリカントラッドぐらいで、イタリアはいい意味でクリエイティビティ溢れる国だけど、クラシックっていうものは全く存在しないだろうくらいに思ってたから。じゃあこれ売ろうってなったのがUAで、それがうまい具合に火がついて、だんだんオシャレにうるさい人からそういう格好し始めて、徐々に広がっていって。いつしかビジネスマンがみんな3つボタンを着るようになっちゃった。変えてやろうなんていうのは、別にないのです。

吉田:そうなんですね。パンツ丈もすごく短い。

鴨志田:〈ジョルジオ アルマーニ〉の時は2クッション、3クッションが当たり前で、俺は少なくともみんなが着ていると着たくないっていう性格だから。例えばこのスーツは思い入れのある服って言うんで持ってきた中の一つ。割とイタリアンクラシックが世にだいぶ広まった時に、自分的にはそこに飽きがきていて。スーツって俺にとっては、ワードローブの中で一番真ん中にくるもので、それは普段着も含めての話ね。スーツを何で着るかって言ったら、かっこいいから着るわけでしょ?かっこいいスーツを求め続けてきて、クラシックが浸透してきた時に、人とはちょっと違うなって思われたいなとか。やっぱり格好つけたいじゃん。それで、当時ワイドラペルのものって世の中にあまりなかったんで、このルーツって〈レノマ〉とか〈イヴ・サンローラン〉とか70年代ぐらいにフレンチスタイルとして出たものをベースに作ってるんだけど、こういう2つボタンのワイドラペルにちょっと肩パッドが入ってなんかセクシーだな、みたいな。で、これにダンスシューズ履いちゃう。そんなスタイルって誰もしてないなって。浸透してきたら次に何を提案しようというよりは、常に自分で着たいなと思うところをそのまんまUAを通して世の中に出してきたけど。そういう意味でこういうのは、俺にとって思い出があるとこだなと思ってね。何の話してたっけ。

吉田:UAらしさ。

鴨志田:ですよね(笑)。自分にとってはそういうちょっと斜に構えるじゃないけど、ど真ん中じゃないところに豪球一発、ストライクゾーンじゃないけど、「もう、参りました」っていう球がいいなって思っています。

吉田:私もそれは同感です。違和感とかコンセプト通りに着たくないとか。ちょっとノイジーな。反骨精神?そういう感覚っていうのはすごくUAとして持ち続けたいなというか。表現の方法の一つとしてあるなとすごく思います。

鴨志田:だから今改めて、みんな着なくなったタイドアップしたスーツ姿って、やっぱりかっこいいなって思うし、例えばUAのお店を見ていても、売れそうだなって思うものばっかりってつまらないじゃん。そこにノイズなのか、主張なのか…UAらしさって多分そういうところに出てくるじゃない。「あ、この時代にこれ置いてるんだ」みたいなものってやっぱりあって欲しいし、それってアティチュードっていうか、うちはこうだ!みたいな主張ってあるじゃない?多分よっちゃんも〈ロク〉にいてそういう気持ちでやってるんじゃないかって思う。〈ロク〉でさ、まだやり切れてないことってある?ブランド通して自分が表現しきれてない部分って、絶対あるじゃん。

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吉田:やりきってはないですけど、実現はしていますね。さっき言ってたような“スタイル”、それがお店の、スタッフの“スタイル”っていうところまで、重松さんが言ってた「ヒト・モノ・ウツワ」みたいなところの“らしさ”みたいなもの、全部ひっくるめて、表現できているような気が…。

鴨志田:自分である程度、確信を持てる何かがあるわけだよね。もちろん、これからもそれを大切に継続したいよね?なんか達成しちゃうとさ、もう終わりって気持ちになっちゃったりしないかなって逆に思ったりするんだけど、そんなこともないんだね。

吉田:必ず何か出てきますよ。「どういうところを目指していけばいいか」っていうのはよくスタッフから話をもらっていて。私が出張行きはじめた頃に、日本の女性のファッションってすごくカテゴライズされていて、それが海外出張へ行った時に、自分のためのファッションというか、“媚びない”みたいな、自立した女性をたくさん見た時に、こういう風に自分も成長したいなって思って。私はどちらかっていうとフランスよりもニューヨークの方が都市としては好きなんですけど。

鴨志田:じゃあ世界で一番好きな街って言ったら、ニューヨークって答える?

吉田:そうですね。多分、音楽とその街のカルチャーの、なんていうのかな…いろんな音楽が生まれたところで。で、多分〈マークジェイコブス〉に2000年くらいの時に行った時に、お店のかっこいいスタッフのお姉さんが、私よりも年上で成熟していて、カッコ良くて。セットアップスタイルにビーチサンダルを履いてたんですよ。それでも80万円くらいで毛皮を売っていて。で、その時BGMにピクシーズが流れていて。音楽とスタッフのスタイルとが自立していて、すごくエモーショナルな気持ちになって。それをこういつか自分もお店で表現したいなって思って。

鴨志田:それってセンスだもんね。

吉田:あとスニーカーで色っぽい女の人もたくさんいたんですよ、ニューヨークで。ヒールを履かなくても、こんなに色っぽいんだっていう女の人たちを見て、私はカジュアルセクションですけど、カジュアルの中でもそういうことを表現していきたいなっていう風に思ったのを覚えています。

鴨志田:そうやって自分が、時代と共に成長してくか、視点が変わっていけば、当然モノを作る側としても価値観が全部変わっていくだろうし。当然時代が動いていくんだから、服ってそれによって変化していくものだからね。終わりもないだろうし、だから面白いよね。


昨年から続くコロナ禍で生活様式も大きく変化しました。そんな中トレンドワードのように注目された一つの言葉が“断捨離”でした。鴨志田さんも自身のクローゼットと向きあったようです。

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鴨志田:断捨離、ここ一年で時間もあるからやるじゃん? 20年前の服とか出てきてさ、経年変化してること自体もかっこよくて。新品よりもちょっと履き込んだ靴とかジャケットとかの方がよりかっこいいじゃない。その時代に、ある時期はなんかダセエなって思ったモノ?例えば、80年代の服とか二度と着ないよって思ってたけど、今見るとなんかかっこ良かったりするじゃない?みたいに。その時々によると思うんだけど、なんか新鮮に見えるなーって、いいスパイス効いてるなって思うのが特にあって。メンズの服って経年してこそ、家具とか工芸品とかも同じなんだけど、本当の味が出てきて、本物になっていくってメンズって楽しいなって思う瞬間。結局断捨離して、ガッと捨てようと思ったけど、どれも愛着あるなって。結局全然捨てられないまま(笑)。捨てない方?

吉田:全然捨てられないです、私。

鴨志田:靴とかムカデの足の数よりもあるからさ。本当に整理しなきゃいけないと思いつつも、着なくてもいいから、履かなくてもいいから、なんかとっておきたいなって思っちゃうよね。

吉田:残っていくモノってどういうモノなんですか?

鴨志田:今言ったように時間経ってますます味が出てくるもの。で、これからもこれは絶対廃れないな、飽きないなって思えるものは、美術品のように着なくてもいいからとっておきたいなって思う。着てなんぼのものなんだけどさ。職業柄っていうか、まあ捨てらんないよね、思い出がいっぱいあるもんね。

吉田:私も、このコロナ禍でよりファッションに対して貪欲になっているっていうか、逆に熱くなっている自分がいるっていう(笑)。毎日違う格好したいし、毎日違う自分でいたいみたいな。年齢を重ねて、なんとなく落ち着くじゃないですか?ワードローブも少し研ぎ澄まされていくというか。それがちょっとつまらなく感じてしまって。変革したい、改革したいみたいな。ファッションのお仕事させてもらってる中でその気持ちがどんどん…。

鴨志田:すごくわかる。あまりにも世の中がコンフォタブルになってるから、余計刺激ないじゃない?そこでね、バチっとね、いきたいよね。だから俺はスーツを着たいし。よっちゃんは、今日着てる、ね?よっちゃんはベースが男前なところがあるから。そこにどうフェミニンさを足すかみたいな。

吉田:そうですね、セットアップは私の中でも〈ロク〉の中でもすごく重要なアイテムで。

鴨志田:いいんじゃない。そういう格好してる人が少なくなってるから。よっちゃんが持ってきたこれって?

吉田:〈ダリア〉のものです。

鴨志田:懐かしいね。って言ってもいつも着てるから、どのくらい前のやつ?

吉田:15年前のやつ。

鴨志田:コンディションいいねー。よく着てたもんね、マンダリンジャケット。これこそ、BYっぽいし、よっちゃんっぽいし、〈ロク〉っぽくもある。時間を超越した良さがある。

吉田:BYのディレクターを始めたぐらいに、“チープシック”っていう概念を先輩方に擦り込まれて(笑)。なんだろうな、その辺の用品店で売ってる、例えば、ワークブーツとか。そういうものを面白く着たりとか、こういう民族衣装とか。そういうノンジャンルでミックスするっていう。そこに新しいあの価値を加えて、スタイリングしていく面白さを、多分その時に私は身についた感じがしてて。その当時はマンダリンジャケットを着てる人が全然いなくて、自分の代名詞、私と言えばというか。裏がトラディショナルなチェックのリバーシブルになってるんで、そういうひねりが効いたところもUAっぽいっていうか。なので持ってきました。鴨志田さんがお持ちいただいてる〈シャルべ〉のシャツはどんな思い入れが?

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鴨志田:やっぱり〈シャルべ〉のシャツってシャツの原点なのね?シャツ屋さんを世界で最初に作ったのって〈シャルべ〉なのよ。もちろんオーダー専門店として店を構えたんだけど、で世界中のセレブリティが着ているような、男性にとったら憧れのシャツ。ある意味ブランドって大事だなって思うの。もちろん〈シャルべ〉のシャツってクオリティ高いし、仕立ても綺麗だし、いいのよ?ただクオリティだけで言ったら、イタリアの数あるいいシャツブランドもいっぱいあるから、そんなに〈シャルべ〉が圧倒的にいいわけでもないんだけど、やっぱりでも〈シャルべ〉を着る喜びってね、あるのよ、男性にとって。このブランドを着るって、大人の仲間入りするっていう、この歳になって思ったりするから(笑)。だから、ブランドってすごく大事だなって思うの。だって白いシャツでさ、ここに〈シャルべ〉のタグがついてなかったらさ全然価値違うじゃない? だからUAっていうネームがついてるものに憧れるようなモノをもっと作んなきゃって思いつつ、こういうブランドに敬意を表したいなって思ってね。あとはいろんなブランド買い付けしているじゃない?ビームス時代からいつか買いたいブランドっていうのがあって。その中に〈エルメス〉があって、〈ラルフ・ローレン〉もいつか買い付けしたいなって思ってる時期もあったの。その中に〈シャルべ〉もあって。でも敷居が高すぎて、入れもしないなって。

吉田:鴨志田さんでも?

鴨志田:日本では日本橋の三越だけでエクスクルーシブでやってたの。だから到底無理だろうなって思ってたんだけど、ツテを辿ってパリのヴァンドームのお店へね。社長がまた、怖い人なの。

吉田:緊張しそうですね。

鴨志田:俺あんまり緊張しないんだけど、これは緊張するなっていうぐらい。全く無表情で座って、面接?「君はどっから来たの?」「君はウチの何を知ってるの?」みたいな。ずーっとそういう感じ。で、「もう若い頃から憧れてまして、若い頃にも作ったことがあるんです」って。そしたらいきなり調べ出して、いつぐらい?って。そういう人。

吉田:熱意のある人ですね。

鴨志田:もう、めっちゃ語った。そしたら、「うん、いいよ」って感じ。でも今はもう親友ぐらいすごく仲がいい、すごくいい人。そんなのもあってさ、すごく思い入れの強いブランド。

吉田:どんな気持ちになるんですか?

鴨志田:高揚感ですね。アガる、引き締まる。ドレスってそうじゃない?やっぱ着て背筋が伸びるみたいな。女性がハイヒール履くのと一緒かな?そういう気持ちにさせてくれるシャツ。いいよね。よっちゃんにとってさ、その例えば俺にとっての〈シャルべ〉みたいなモノを買ったり、着るって大人の仲間入りするような気持ちになるモノってある? 

吉田:私、あんまりないかもしれないです。

鴨志田:もう大人だからだ。(笑)

吉田:もういい大人だからそういうブランドを本当はたくさん持っていても良いんでしょうけど、なんかあんまりそこの欲がない。“アンチ”ってことではないですけど、そのハイブランドを身に付けるっていうマインドがあんまりなくて。

鴨志田:決してハイブランドにこだわるっていうだけではないと思うの。例えば、雪駄履くのもさ、大人の仲間入りになる気分になったりするじゃん?割とフラットにモノを見るのかな?

吉田:かもしれないです。言われてみて、自分がそこにあまり重きを置いてないのかなって思っちゃいました。

鴨志田:俺みたいに、ブランド云々っていうよりかは、とにかく何と何を組み合わせて、自分らしいスタイリングを組むみたいな。

吉田:そうですね、“スタイル”を作る。何と何を合わせて新鮮に見せるかとか。昔から使ってる〈ファンニ レマメイヤー〉のニットとか、着てるんですけど。

鴨志田:着てるんだ(笑)。この前整理してたらレインボーが出てきた。

吉田:私もレインボーカラーを何枚か持ってて。それを古臭くないように、今の時代にチューニングして着たいっていう、そこにエネルギーが注がれている気がしました。

鴨志田:カタログの「スタイリングエディション」なんてね、本当にこの前さ、リッツォーリの写真集の編集で関わったじゃない?で昔のスタイリングをバーって見直してさ。その当時はそんなにすげーって感動しなかったけど、10年、20年、多分時間が経過しないと分からない何かっていうのがあるんだと思うんだけど。すげーの俺たちっていうか、みんなで作ってきたんだなって結構感動して。今でも全く色褪せてないっていうか、今の方がカッコよく見えちゃうんだよね。あれは何なんだろうって。そう思った?

吉田:思いました。時代を切り取っていて。

鴨志田:超越しているじゃない。

吉田:それがまたこう冊子の中で色々ミックスされて、おそらく時代も前後して。

鴨志田:だから面白く見えるんだよね。

吉田:年代ごとに見ないとか、やっぱり視点を変えるみたいなのは、あのリッツォーリの写真集から感じて。

鴨志田:キュレーションもいいんだろうな。

吉田:そうですね。

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今回は鴨志田 康人と吉田 恵理子の対談をお届けしました。次回もお楽しみに。

PROFILE

鴨志田 康人

ユナイテッドアローズの創業に参画し、メンズクロージングの企画・バイイングなどを担当。2007年には自身のブランド〈Camoshita UNITED ARROWS〉を立ち上げる。現在、クリエイティブ・アドバイザーとして活動している。

吉田 恵理子

ユナイテッドアローズ 原宿本店や有楽町店などで販売スタッフを経て、商品部へ異動。バイヤー、MDを経験した後、ビューティ&ユース ユナイテッドアローズの立ち上げに携わる。その後二度の出産を経て、現在は育児と仕事を両立させながら、ロクのディレクターを務める。

JP

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