ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ヒト

2016.04.28 THU.

Hとヒト「集英社日高麻子さんとビューティ&ユースブランドディレクターが語るエイチ ビューティ&ユースのチャレンジ。」

4月29日、場所は青山。「東京大人のクールな服」をテーマに、メンズ、ウィメンズ、ストリート、ドレス、さらにはヴィンテージまであらゆるテイストのアイテムを3フロア構成の洗練された空間に取り揃え、地下には代官山の人気ピザショップ「PIZZA SLICE」も併設する当社最大規模のコンセプトショップ「エイチ ビューティ&ユース」がいよいよオープンします。そこでビューティ&ユースのメンズディレクター松本真哉とウィメンズディレクター深沼薫が、MEN’S NON-NO、UOMOの編集長を歴任してこられた日高麻子女史を招き、オープン直前の店内をナビゲート。メンズファッションのすべてを知るといっても過言でない氏に、エイチ ビューティ&ユースのチャレンジについて、思いを語っていただきました。

Photo_Taro Hirano
Text_Kai Tokuhara

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ボーダーレスこそ今のスタンダードであり、ショップのあるべき形。

―今日は日高さんにいち早く新しい「エイチ ビューティ&ユース」を見ていただきました。率直にどのような印象を受けましたか?

日高:最初に青山への出店のニュースを聞いたときは、単純に、若い人たちがもっと青山エリアに足を運ぶきっかけになれば、という感想でした。でも今日あらためて松本さんと深沼さんにお店をご案内いただき、ビューティ&ユースが青山でやっていこうとしていることは、(お客様が)若いとか若くないとか、男性であるとか女性であるとか、そういったレベルのことでないのだなと。すごく新しさを感じますし、ここからの展開がより楽しみになりました。

松本:これまでのビューティ&ユースと比べて価格もクオリティもHIGHの部分を少し増やしてはいますが、店作り全体のテーマとして掲げているのは「カジュアルの格上げ」。これからはドレスとカジュアルに格の違いがあってはだめだと思いますし、そこはメンズ、ウィメンズともに共有している認識です。ドレスシューズで例えるなら、チャーチも同じ形でメンズとウィメンズ両方を並べています。それをきちんとしたソファに座って選ぶのではなく、スニーカーに近い感覚でカジュアルに買っていただきたい。ストックもあえて見えるようにし、いつでもお客様の前に出せるようにしています。そのように良いと思ったものを気負いなく買えるムードを作っていきたいですね。

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日高:なるほど。私は仕事柄、昔からメンズファッションが大好きでしたが、近年のジェンダーレスの流れもあって今の女性はよりメンズ服のよさというものをわかるようになってきているはずです。それが仕切りなく一緒に置かれているというのはとくにうれしいことだなと。ストリートなグラフィックTシャツのコーナーのすぐ側に女性もののジュエリーコーナーがあるのも印象的でしたし、メンズとウィメンズが混在したスニーカーのディスプレイなんかもまさにそうだなと思いました。

深沼:そうなんです。スニーカーに関しては、ウィメンズになると急に色やデザインがあれ?っていうのも多かったですよね。今の女性が求めているのはそうではないし、メンズのデザインのまま、もしくは近いデザインでサイズが小さいものが欲しいのに、という感覚は常々ありましたね。だからスニーカーのセレクトやディスプレイもエイチ ビューティ&ユースの特徴のひとつになっていると思います。

日高:そのようにメンズとウィメンズ、カジュアルとドレスなどあらゆる仕切りを取っ払った店作りは、まさにセレクトショップ本来のあるべき姿なのかなとも感じますが、コンセプトを詰めていく中で松本さんと深沼さんの間で意見が食い違う部分などはあったのでしょうか?

松本:もちろんありました(笑)。ただ、もう20年一緒に仕事をしているので。シーズンディレクションがどうだとか、今季はこういう色やアイテムをおさえるべきだとか、そのあたりのイメージを完全に統一していくのは難しいですが、「これ、なんかいいよね」という感覚的な部分は二人ともすごく近いものがありますし、そこからどんどん話が盛り上がってアイデアに繋がっていくことも多かったです。そこがメンズとウィメンズのリレーションがうまくいった理由なのではないかと思っています。

深沼:それに元々ビューティ&ユースはメンズライクなものをミックスする提案が得意なブランド。既存のビューティ&ユースの店でも、メンズフロアでC.E.のTシャツを買ってくださるお客様がたくさんいらっしゃいます。そういった方々に、例えばもっと女性らしいボトムを合わせてヒールを履いてもOKということを、よりリアルに提案できる環境を今回作ることができたと思っています。女性も男性も、若い人も大人も、エイチ ビューティ&ユースならより自由に買い物が楽しめる。そういう提案が今後この場所でできればいいですね。

日高:楽しみです。私たち買う側の人間だけでなく、エイチ ビューティ&ユースがきっかけで世の作り手側の意識も変わってくるといいなと思いました。

深沼:はい、そういう流れを作ることができればうれしいですね。

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いい店というのは心地よさと刺激の両方を与えてくれるもの。

―元々日高さんの中で、ビューティ&ユースはどういうセレクトショップと位置づけされていましたか?

日高:ネーミングがすごく強いので、ユナイテッドアローズよりも若い、カジュアルである、というイメージはある程度ありました。若くてきれいな人じゃなきゃいけないんだ、って(笑)。そんな中でも、展示会では毎シーズン欲しいなと思うものがすごく多かったです。まだ知られていないような若くてかっこいいブランドをいち早く取り入れられていたり、面白いコラボを展開されるなど軽やかで自由度の高いセレクトなんですけれど、その上で「いま選ぶべきスタンダード」というものが明確に提案されているという印象でした。

松本:ありがとうございます。それこそ以前、展示会で日高さんに「この別注のスニーカーが欲しい」っておっしゃっていただいたことがありまして。でも日高さんにうちの店に買い物に行っていただくのは本当に申し訳ないなと(笑)。

日高:そんなことはないですよ!(笑)

松本:語弊のある言い方かもしれませんが、当時は日高さんのようなキャリアのある大人の方々に向けて僕らもお店を作っていなかったといいますか、そこが店作りの軸ではなかったんですよ。そうやって業界の中で「あれ欲しい」と言ってくださる方が増えてきたことも、店作りについて再考するきっかけのひとつになりました。

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―日高さんの考える、いいセレクトショップの条件とは?

日高:まず自分が心地いいかどうかが一番。その中で常に見たことがないものを見せてくれる、刺激を与えてくれるお店が私にとってのいいお店でしょうか。

松本:同感です。お店でしか衝動買いはないですからね。

日高:見たことがないものを見せてもらえると、ワクワクしますから。気持ちよくはありたいですが、それだけではないといいますか。チクッとくすぐられるものを常にお店に求めている気はします。

深沼:とても参考になります。おっしゃるように、心地よさと刺激。相反するようですが、店作りにすごく大事なことのように思えます。

日高:「見せ方」もすごく重要。私の立場に置き換えさせていただくと、例えば雑誌の表紙はお店のエントランスのようなもので、お客様の中で「これは自分の本であるかどうか」の判断がまずそこでなされます。そしていざ開いていったときに、自分の気持ちにフィットするな、世界観が自分に近いなと思ってもらえてはじめて買ってもらえるわけです。中面で紹介しているアイテムが物撮りなのかモデルが着ているのか、そしてそれがどう語られているのか。他誌と同じものが載っていたとしても、キャプションも含めて「どう編集されているか」で全然違ったものに見えますからね。お店にも同じことがいえるんじゃないのかなと思います。そういう意味では接客もすごく大事ですよね。

松本:エイチ ビューティ&ユースは接客のあり方もこれまでと少し変えています。何でも「よろしければ」から始まる接客はもう古いのではないかと。なるべくそのお客様にとってベストなタイミングで、かつキャプション控えめの雑誌のようなスタンスでいきたいと思っています。接客するというよりホテルのサービスに近い感覚でしょうか。ホテルというのは、一度入っていただくとお金をいただいているのであとはサービスするのみ。そのように、どちらかというと「勧める」ではなく「手伝う」ことを意識していきたいですね。

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あらゆる人が集える、プラットフォームのような場所に。

―世の中にユナイテッドアローズ=原宿というイメージが定着している中での青山出店。それだけでもかなりチャレンジングなことといえますよね。

深沼:そうですね。ただ、原宿というエリアがマストかと言われたら、そうではない時代になってきているのかなと。とくにエイチ ビューティ&ユースは根底にカジュアルの格上げというものがあるわけですから、青山の方がより新しい提案を明確に表現しやすいといいますか。ラグジュアリーブランドの店も多く、すごく難しい場所だとは実感しながらも、その分大きなチャンスがあるエリアだと捉えています。

松本:いまや原宿の感覚=日本全国の感覚ではありませんし、さらに言うなら世界にも発信していきたいという中で原宿だけではお店のイメージ効果として物足りなくなってきています。そういう意味でも、エイチ ビューティ&ユースの青山への出店は必然だったのかもしれません。

日高:いいお店って、人の気持ちさえも変えてしまう力がありますし、そのエリアに新しい人の流れを作ることだってできると思うんです。

深沼:そういうお店を作ることができれば本当にうれしいですね。

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―最後に、ここから始まるエイチ ビューティ&ユースの新しい展開について、日高さんが最も期待したいこととは。

日高:青山ってセレクトショップが少ないじゃないですか。そういう意味では、リアルでありつつ提案性のある新しいものをまとめて見られる環境は人々にとってすごくありがたいことだと思います。私自身が買いたいものもたくさんありますしね(笑)。値段が安いとか高いとか、有名なブランドであるとかそうでないとか、アメリカものであるとかイタリアものであるとか、そういう境目をなくし、本当にいいものを自由に選べるお店になるとよいと思います。そもそも日本人はそれができる人たちなんですよ。欧米に比べて洋服の歴史が浅い中で、いろんなものを短期間で見て、消費し、自分たち流に発展させて今ここまでこられている。だからこれからも感度の高い人たちにどんどん出てきてほしいですし、このエイチ ビューティ&ユースという店がそういう人たちを育てる場所になってくれるとうれしいですね。

深沼:ありがとうございます。ボーダーレスなことが、新しいだけではなく、実際に求められている時代になってきていると私たちも思いますので。日高さんのおっしゃるような店作りができるようにがんばりたいですね。

日高:セレクトショップの魅力って、やっぱりそこですもんね。

松本:そうですね。ファッション単体だけじゃなく、来る人たちもミックスできる、そんな場所にできればと思います。今日はありがとうございました!


Hとモノ
「PIZZA SLICEのHOW TO ENJOY PIZZA」

Hとウツワ
「青山であることを意識する、大切なスタンダード」


INFORMATION

PROFILE

日高麻子

鹿児島県出身。1980年に(株)集英社に入社。1986年の創刊からMEN’S NON-NO編集部に在籍し、2006年に編集長に就任。その後2012年にUOMO編集部に異動し、同誌をリニューアル成功に導く。2015年に編集長を退任後、現在は部長としてMEN’S NON-NO、UOMO、MORE、Marisol、BAILAなどの発展に尽力している。

松本真哉

1996年入社。ユナイテッドアローズ渋谷店や有楽町店、原宿ブルーレーベルストアの販売スタッフを経て、2002年より商品部に異動。バイヤーやデザイナーを経験したのち、2010年にビューティ&ユースのメンズファッションディレクターに就任。その後2012年よりクリエイティブディレクターを務めている。

深沼 薫

1996年入社。ユナイテッドアローズ渋谷店やビューティ&ユース渋谷公園通り店の販売スタッフを経て、2001年より商品部に異動。アシスタントバイヤーを経験したのち、2010年よりビューティ&ユースのウィメンズディレクター兼バイヤーを務めている。

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