
ヒト
2017.06.02 FRI.
ハワイアンシャツの代表格、「レインスプーナー」とともに作る
これからの時代の新しい浴衣。
ハワイアンシャツのパイオニア的存在として世界中で親しまれている〈レインスプーナー〉は1956年創業、1962年にはあの有名なアラモアナショッピングセンターにてその歴史をスタート。以来、オリジナルの生地「スプーナークロス」を軸に、アイビーを彷彿させるフォーマルさも備えたモノ作りで「ハワイアントラディショナル」という確固としたアイデンティティを築き上げてきました。今季ユナイテッドアローズでは、その〈レインスプーナー〉との新しい取り組みをスタート。通常展開となるハワイアンシャツのコレクション以外に、スプーナークロスを使ったメンズの浴衣やウィメンズのドレスなどこれまでにないコラボアイテムの数々をリリースします。そのプロジェクトの全貌について、〈レインスプーナー〉代表のカーク・ハバードさん、ユナイテッドアローズの着物・浴衣部門を取り仕切るメンズフォーマルディレクター諸田佳宏さんに話をうかがいました。
Photo:Shunya Arai Go Tanabe(Interview)
Text:Kai Tokuhara
伝統素材、スプーナークロスがもたらした新しい可能性。
―まずはカークさんにうかがいます。〈レインスプーナー〉といえば創業以来コットン55%・ポリエステル45%の混紡素材「スプーナークロス」を使用したハワイアンシャツで有名ですが、その独自の素材が生み出す魅力やメリットとは?
カーク:はい、おっしゃる通りスプーナークロスを使ったハワイアンシャツは我々〈レインスプーナー〉のシグネチャーアイテムといえます。スプーナークロスができてから50年近く経ちますが、生地はプリントが裏使いになっているため表から見るとシャンブレー調のかすれ感が出ます。そこが他のブランドにはない特徴といえますし、新品でもナチュラルに洗いざらしたような風合いを表現できるのが何よりのメリットですね。我々のアーカイブルームでは、1970年代くらいからの、およそ2000種類以上のスプーナークロスをストックしています。
ホノルル市内にあるレインスプーナーの工場にて。ずらりと並ぶスプーナークロスの束から素材をピックアップし、一枚一枚、職人たちが丁寧に仕立て上げていく。
−諸田さんは、その〈レインスプーナー〉とどのように出会われたのでしょうか。
諸田:正直いって今回が初めての出会いといってもいいかもしれません。ユナイテッドアローズで浴衣を展開するにあたり、これまで国内メーカー様との取り組みが中心で、今回のレインスプーナー含め海外ブランドと何かを一緒に取組むということは想像もしていませんでした。ですので、今回のお話をいただいたことがきっかけでレインスプーナーのことを深く知るようになりました。
―そこから今回のコラボレーションに至った経緯とは?
諸田:浴衣を展開していく中で日本の伝統や歴史などを伝える事ができればという思いと同時に、以前から何か別の切り口でユナイテッドアローズらしい新たな提案をしたいと考えていました。今回、〈レインスプーナー〉のブランド背景を聞かせていただき、これまで展開してきている日本の浴衣ブランドと並べても違和感なく店頭で陳列されるイメージが浮かんだので、是非とも取り組まなければいけないなと思いました。
―カークさんは、スプーナークロスを使って日本古来の浴衣を作ることに対してどのようなイメージを持たれましたか?
カーク:諸田さんが最初に持ってきてくださったサンプルを見て、非常に品質が高く、バリエーションも多くてすぐにスプーナークロスにフィットする商材だと思いました。実はスプーナークロスの柄のオリジンは日本にあるのですが、そういう面でも非常にマッチしたコラボレーションになると手応えを感じました。
―カークさんは元々ユナイテッドアローズのことをよくご存知だったそうですね。
カーク:はい、日本に来た時には必ず行くショップのひとつです。現代的なクールさがありながらトラディショナルな部分がしっかり息づいていて非常にユニークなショップという印象です。さらにファッションアイテムだけではなく雑貨やスポーツアイテムも充実しており、私にとっては足を運ぶたびにフレッシュなアイディアをもらえる場所ですね。以前にビューティ&ユースで〈レインスプーナー〉のポップアップショップを展開していただいたこともありますね。
メイド・イン・ジャパンによる、新しいハワイアントラディショナル
―諸田さんに伺いますが、今回の取り組みで最もこだわった部分とは。
諸田:メイド・イン・ハワイである〈レインスプーナー〉とのコラボレーションで浴衣を作るのであれば、やはり大前提としてメイド・イン・ジャパンであるべきだと思いました。〈レインスプーナー〉が提唱する「ハワイアントラディショナル」と我々が持つ「ジャパントラディショナル」に共通性を感じ、それらを融合させることで新しい価値観を生み出せるのではないかと考えました。ですから、日本の伝統や歴史がしっかり息衝くところで作りたいという思いはやはり強かったです。
―メイド・イン・ジャパンクオリティの浴衣やウィメンズのドレスの仕上がりを見て、カークさんはどのような印象を持たれましたか?
カーク:大変満足しています。シックで落ち着いた〈レインスプーナー〉の柄の雰囲気と、浴衣特有のムードがとてもマッチしていて非常に驚きました。
諸田:私自身もそのあたりはとても重視しました。
男性の浴衣は女性の浴衣に比べて自由度が高く気軽に着用できるアイテムだと思います。夏のファッションの一部として認知度もあがってきていますが、今回の〈レインスプーナー〉とのコラボレーションをきっかけに浴衣や日本文化により興味を持って欲しいと感じています。
ファッションとして浴衣を楽しむ。そんなスタイルを広めたい。
―今回のコラボレーションは〈レインスプーナー〉の代名詞である「ハワイアントラッド」が、ジャパニーズトラッドの象徴のひとつである浴衣という形でアウトプットされていますが、実際にどのようなオケージョンでどういう風に着こなしを楽しんでもらいたいですか?
諸田:今の生活スタイルの中で浴衣を取り入れる事は洋服に比べまだまだ少ないのかもしれません。日本の伝統文化のひとつですが、近くにありて遠い存在。私は浴衣を着ることを楽しんでもらうことが日本を体感することができるひとつだと思います。
―一度袖を通して見ると何か感じることがあるということですね。
諸田:はい。例えば旅行に行くことと同義かなと。。レインスプーナーの地元であるハワイも、現地に行かなければ感じる事が出来ないと同様、浴衣を身につけなけなければ洋服との相違点、あるいは共通点を感じられることも出来ません。日常的に着用している洋服の自分とは違う一面の演出が出来るのも一つの楽しみではないでしょうか。
カーク:〈レインスプーナー〉はハワイの文化を表すブランドであると同時に、インディゴブルーをはじめ日本の生地を使っているものも多い。そういう意味でも今回の取り組みは必然だったのではないでしょうか。浴衣というと、旅館や温泉、花火大会、夏祭りなどに着ていく服というイメージがありますよね。でもせっかくユナイテッドアローズと我々によるコラボレーションが実現したのですから、よりファッションとしての観点で楽しんでもらいたい。〈レインスプーナー〉を知っている人にもそうでない人にも、今回のアイテムは純粋にカッコイイ商品だと思って着てもらえるのではないでしょうか。
諸田:同感ですね。花火大会やお祭りだけのものではないと思っています。浴衣はリゾートウェアでありリラックスウェアでもあると考えています。国内外問わずリゾート地での非日常の時間を浴衣とともに過ごす。そんなスタイルを今回のレインスプーナーならリアルに提案できるのではないかと。是非「MY浴衣」として持っていっていただけたらうれしいですね。
メンズの浴衣に対して、ウィメンズはこちらのハワイアンドレスを展開。こちらはレインスプーナーを代表する柄を部分的に使用している。ホノルルにあるレインスプーナーのストアにて。
INFORMATION

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PROFILE

カーク・ハバード3世
1963年8月生まれ。レイン・マックロー氏とルース・スプーナー氏によって1962年に創業したレインスプーナー社を、2009年からプレジデントとして率いている。伝統を重んじながらも現代のライフスタイルにフィットしたマネージメントで、レインスプーナーをさらにグローバルブランドへと成長させている。

諸田佳宏
1961年静岡県生まれ。ミシン販売を生業としていた父親、洋裁の先生であった母親の影響で幼少から洋服に興味を持ち、学生時代からアパレル業界で働く。様々な会社を経て2003年にユナイテッドアローズ入社。現在は、和服やフォーマルウェアのスペシャリストとして、バイイングや商品企画に携わる。