ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

店舗スタッフだからこそ光る、お客様の声を活かした「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」のモノづくり。

モノ

2025.06.20

店舗スタッフだからこそ光る、お客様の声を活かした「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」のモノづくり。

「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」(以下、BY)では、店舗スタッフが自ら企画をし、モノづくりへ参加できる取り組みが行われています。日々店頭でお客様と接する中で培った感覚やニーズをもとに、商品部とは異なる視点から生まれるアイテムは、実用性とリアリティに富んだものばかり。商品名には企画メンバーのイニシャルが入るなど、スタッフのモチベーション向上にもつながっています。自ら手がけた商品を自らの手で届ける、その背景にはどのような思いがあるのでしょうか。今回は、新宿店の瀧瀬央起さん、神戸三宮店の牧田和久さん、金沢店の水木亮平さんの声を通して、店舗スタッフがモノづくりに関わる意義や葛藤、そして未来への展望を探ります。

Photo:Shunya Arai(makida)、Go Tanabe(takise、mizuki)
Text & Edit:Shoko Matsumoto

金沢店・水木亮平さん|モノづくりへの熱量で、服の未来を変えていく。

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-簡単な経歴と、店舗での担当などを教えてください。

「中途入社で、今年で3年目になります。現在は、店舗のメンズ担当のサブとして売り場を任されつつ、チーム全体の接客力向上にも関わっています。売り場の責任者的な立場でもあるので、日々現場での気づきや声を拾いながら、商品提案にも反映できるよう意識しています」

-商品企画に参加するようになったきっかけは?

「店長から〝商品企画の募集があるよ〟と聞いたのがきっかけです。最初は〝自分なんかが挑戦してもいいのか〟と少し躊躇もありましたが、やってみたいという気持ちが勝りました。作りたいものの輪郭はすでに自分の中にあり、文章にまとめて、いわば〝デモテープ〟のような形で企画書を提出しました。昨年の秋冬で初めて企画が通り、今回で2回目の参加になります」

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-手がけた商品はどんなアイテムでしょうか。併せて商品のこだわりについて教えてください。

「今のメンズトレンドの中でも〝アメカジ回帰〟が一つの流れとして来ていると感じており、そうした背景を踏まえながら、伝統的なアイテムを今のムードで着られるようなシルエットにアレンジしました。今回のフレアのスラックスは、〈BY〉では展開していなかったシルエットになります。裾にボリュームを持たせつつ、ヒップ周りはミニマムに。素材はウールとポリエステルの混紡で、ワンクッションできる丈感に設定しました。シューズのバリエーションが増える中で、足元に変化をつけられる一本になったと思います。〈BY〉で定番化しているものとは、違った角度での提案を意識しました」

-どのようなことを心がけて発売まで取り組んでいったか、商品企画をするうえでの良さや苦労などはありましたか。

「地方店舗に在籍しているので、商品部とのやりとりはすべてメールで進めました。自分の思いをうまく伝えられず、苦労したこともありましたが、サンプルが届いたときは本当に感動しました。お客様に直接届けられるスタイルとして形になる、そのプロセスがすごく面白かったです。地方にいながらでも企画に参加できるというのは、大きなモチベーションになりましたし、店舗に立っているからこそ聞けるリアルなお客様の声を反映できたのは自分の強みだと感じました」

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-店舗スタッフだからこそ活かすことができたポイントはありますか。

「お客様との距離が近いからこそ、〝こんなアイテムがあったらいいのに〟と日々の会話からヒントをもらえるのが一番の強みです。実際、友人やお客様が自分の企画したアイテムを買ってくれたときは、本当にうれしかったです。現場で働いていなければ気づけなかった感覚や視点が、商品に活きていると実感しています」

-商品企画を手がけた他の店舗スタッフの活躍をどう見ていましたか。

「以前から、神戸のスタッフが商品企画に参加しているのを見て、〝悔しいな、いつか自分も〟と思っていました。だからこそ、今回2シーズン連続で参加できたことは本当にうれしいです。中には、価格の影響などで企画が途中で止まってしまうこともあるので、すべてが形になるわけではありません。それでも企画を通して、〈BY〉というブランドのスタイルを提案できるやりがいは、何にも代えがたいと感じています」

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-これから商品企画に携わりたいと思っている社内のスタッフに向けてメッセージをお願いします。

「正直、地方店で中途入社の自分は“名もなきスタッフ”という自覚もありますが、強い思いと熱意があれば、チャンスは必ずあると思います。自身もこの企画を続けられるようこだわって参加し続けたいと思っています。誰かの一歩を後押しできるような存在になれたら嬉しいです」

-今後の展望について聞かせてください。

「店舗でのキャリアはまだ浅いですが、今後はもっとお店全体を回していけるような立場を目指したいです。〈BY〉の店舗に来ていただけるお客様に〝新鮮なムードがある〟〝ここで買えば間違いない〟と思ってもらえるような、安心感と驚きを併せ持つ売り場をつくっていきたいです。そしてチャンスがあれば、商品部での仕事にも挑戦してみたいです」

神戸三宮店・牧田和久さん|王道のその先へ、次の当たり前を見つける服。

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-簡単な経歴と、店舗での担当などを教えてください。

「入社して10年目になります。最初の3年間は心斎橋の路面店で、リニューアルのタイミングで入社しました。その後、〈BY〉大阪店で1年半、商品担当として携わるようになり、そこから再び心斎橋店に戻って2年間、商品のサブ担当を務めました。京都の藤井大丸店を経て、今の店舗に異動。現在は、商品を担当するセクションで、MDチームのリーダーを務めています」

-商品企画に参加するようになったきっかけは?

「最初に立ち上がったときは都内メンバーが中心で、関西時代にお世話になった先輩がいたんです。身近な人が参加しているのを見て、〝自分もやってみたい〟と思い、商品企画の担当者に直接気持ちを伝えました」

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-手がけた商品はどんなアイテムでしょうか。併せて商品のこだわりについて教えてください。

「今回はフルレングスのピケ素材のパンツと、デニムのバギーショーツを企画しました。ピケ素材は久しぶりに〈BY〉で扱うもので、古着ブームのなか、加工感のある表情で提案したいと思いました。ピケ素材特有の生地の凹凸感はフェード加工との相性が非常に良く、色褪せ具合が気に入っています。デニム感覚ではけるアイテムとして、天の邪鬼的な視点から持ち込んだのもポイントです。ショーツは、定番のナイロン系ではなく、天然素材で少しふくらみのあるシルエットに。ファッション好きなお客様にも届くよう意識しました」

-どのようなことを心がけて発売まで取り組んでいったか、商品企画をするうえでの良さや苦労などはありましたか。

「関西ではこの企画自体があまり知られていなかったので、まずは自分が関わっていることを近隣店舗へメールで伝えるなど、広めることから始めました。商品づくりでは、本社との距離を感じながらも、メールでやり取りしながら、サイズ感や色、細かいディテールを調整しました。お客様に届く商品に仕上げるために、現場と商品部の意見をすり合わせながら進めました。実際に自分が関わった商品が売れているのを見ると、本当にうれしいですね」

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-店舗スタッフだからこそ活かすことができたポイントはありますか。

「地域ごとでお客様の反応や特性は違うということを日々肌で感じられるのは、店舗スタッフならではだと思います。都内と関西では売れ行きが違うこともあり、その違いを商品企画に活かせたと思います。お客様に〝実はこの商品、店舗スタッフが企画したんですよ〟と伝えると、驚かれながらも良い反応をもらえて、やっていてよかったと思います」

-商品企画を手がけた他の店舗スタッフの活躍をどう見ていましたか。

「それぞれが個性を活かした商品を提案していて、その人らしさが伝わってきます。瀧瀬さんはメンバーの中で社歴が長く、ご自身の世代のお客様から若い世代に向けての提案の幅の広さが魅力的だと思います。水木さんは若手ながら熱意がすごくて、話している姿から洋服への愛情が伝わってきました。刺激をもらいましたね」

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-これから商品企画に携わりたいと思っているスタッフに向けてメッセージをお願いします。

「都内にいなくてもチャンスがあるこの環境には感謝しています。やりたい気持ちがあれば、場所に関係なく検討してもらえる土台がある。最初はどうしたらいいかわからず、とりあえず私物をバッグに詰め込んで持っていってプレゼンしたんです(笑)。でも経験を重ねるうちに、〝〈BY〉として必要なアイテムとは何か〟〝時代の流れに合っているか〟などと、多角的に考えられるようになりました。若いスタッフには、モノと真剣に向き合う時間の大切さを、ぜひ感じてほしいです」

-最後に、今後の展望について聞かせてください。

「引き続き、良い商品をつくっていきたいですし、新しいメンバーが増えてチームとしても盛り上がっていけたらと思います。個人的には、また〈BY〉単独店に戻って、より〈BY〉を好きなお客様の声をダイレクトに拾っていきたいという想いもあります。接客では、商品知識を深めたことで、逆に〝細かく伝えすぎない〟というバランスも意識するようになりました。これからも、ヒトとモノの両方に向き合う仕事を大切にしていきたいです」

新宿店・瀧瀬央起さん|等身大のリアルを起点にした響くモノづくり。

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-簡単な経歴と、店舗での担当などを教えてください。

「入社して19年目になります。新宿店からスタートして、町田、吉祥寺、立川、渋谷公園通り、横浜、そして再び新宿と、さまざまな店舗を経験してきました。今の店舗には2年半ほど在籍しています。現在は教育チームに所属し、英会話の勉強会にも参加しています。インバウンドのお客様が増えているので、現場で役立つ接客英語をOJT形式でスタッフに教えることもあります。日本と海外では流行のシルエットに違いがあり、日本への期待値も高いので、お客様にサイズ感やトレンド、スタイリングをご提案することで、コーディネートごと購入していただくことも多いです」

-商品企画に参加するようになったきっかけは?

「社内公募がきっかけでした。長く担当しているお客様とともに年齢を重ねていく中で、ベーシックなアイテムはすでに持っていて、新しい提案が日本のデザイナーズブランドに限られていると感じていました。そこで、大人になった顧客層や自分と同世代に響くアイテムを作れたらと思ったんです。ちょうど昨年、商品部の担当者から企画の話をいただいて、これを自分の挑戦の機会にしようと思いました。公募に応募するのは今回が初めてで、ありがたいことに採用されました」

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-手がけた商品はどんなアイテムでしょうか。併せて商品のこだわりについて教えてください。

「私が担当したのは、バンダナ1型2色とカーゴパンツ1型2色です。バンダナは通常のサイズよりも大きい65×65cmのサイズで、首に巻いたり、物を包んだりと多用途に使える仕様にしました。〈BINDU(ビンドゥー)〉という日本のブランドが展開する〝威風堂々〟シリーズの都市柄をベースに、別注で色やサイズを調整し、ネイビーとターコイズの2色に仕上げました。カーゴパンツは、ミリタリーが再注目されている流れを受けて、〈PROPPER(プロッパー)〉に別注しました。丈は長めのクロップドにして、ローファーやサンダルに合わせてもクリーンに見えるよう意識しました。オーバーサイズで、以前の細身シルエットとは違った抜け感を出し、アンティーク加工でヴィンテージ風の風合いもプラス。シャツと合わせたときのバランスも考えています」

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-どのようなことを心がけて発売まで取り組んでいったか、商品企画をするうえでの良さや苦労などはありましたか。

「企画は昨年の夏にスタートして、秋までに2回ほどオフィスに通い、細かく詰めていきました。半年以上かかったと思います。一番意識したのは、大人になったお客様にふさわしいものは何か、という点です。私たちには懐かしくても、若い世代には新鮮に映るのでは?といった感覚も大切にしました。スタッフに〝履いてみたい〟と思ってもらえるかも気にしながら、まずは〈BY〉らしさの土台を作ることが大変でした。ネイビーは外せない色で、先輩方のコーディネートにも多く見られたミッドナイトネイビーのような印象を、どうデザインに落とし込むかを、じっくり考えました」

-店舗スタッフだからこそ活かすことができたポイントはありますか。

「日々店頭で商品を見ているからこそ、〝こんな軸があったら面白いな〟というアイデアが自然と浮かびます。お客様のリアルな声にも日々触れているので、デザイナーズブランドの強さやニーズのすき間を感じることができ、それを今回の企画に活かせたと思います」

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-商品企画を手がけた他の店舗スタッフの活躍をどう見ていましたか。

「若いスタッフの感覚には驚かされました。自分もファッションを追いかけているつもりですが、彼らは本当にしっかりしていて、時代に合った提案ができているなと。下の世代のスタッフが、芯のあるアイテムをしっかり提案していて刺激を受けました。自分の感覚を改めて確認できる機会にもなりましたね」

-これから商品企画に携わりたいと思っているスタッフに向けてメッセージをお願いします。

「〝継続は力なり〟です。販売の現場に長くいると、目標を見失うこともありますが、声を上げ続けることが大事です。私も、この年齢になって参加できるとは思っていませんでした。やってみたいと思ったら、まずはチャレンジしてみてほしいです。洋服が好きでいることが何よりの原動力になります。ただ、視野が偏りすぎないように、広く学ぶ意識も大切だと思いますよ」

-最後に、今後の展望について聞かせてください。

「〝この人から買いたい〟と思っていただける存在であり続けたいです。ファッションを売るというより、その背景にある文化や価値観を共有していく感覚が私にはあります。洋服は一番身近な芸術だと思っていますし、サブカルや政治、経済、芸能といった社会全体の動きともつながっています。そうした情報をお客様と共有することで、その方のライフスタイルや背景も見えてきます。日々の暮らしの中で〝ここに来れば大丈夫〟と思っていただけるような、信頼される存在でいたいですね」

PROFILE

水木亮平

水木亮平

2022年に入社し、ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ 金沢店へ配属。現在はメンズ売り場のサブ担当として、チーム全体の接客力向上に努めている。昨年より商品企画にも携わり、お客様の声を反映したモノづくりに奮闘中。

牧田和久

牧田和久

2016年に入社し、ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ 心斎橋店へ配属。その後、大阪店、京都店を経て、現在はユナイテッドアローズ 神戸三宮店にて商品を担当するMDチームのリーダーをしながら、昨年より商品企画も兼務。

瀧瀬央起

瀧瀬央起

2007年に入社し、ユナイテッドアローズ 新宿店へ配属。その後都内店をいくつか経験し、現在は新宿へ戻り、後輩の育成担当へ。インバウンド対応のため、率先して英会話の勉強にも参加し、海外からのお客様への対応にも力を入れている。年長者としての目線から商品企画へも参画。

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