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ヴィンテージのシルバーカトラリーを新たなモノへ、「BLIND MAN TOGS」が表現するジュエリーの形。

モノ

2024.06.07

ヴィンテージのシルバーカトラリーを新たなモノへ、「BLIND MAN TOGS」が表現するジュエリーの形。

ヴィンテージのシルバーカトラリーを用いて新たなジュエリーを生み出しているブランド〈BLIND MAN TOGS〉。ブランドネームはデザイナー自身が盲目であることに由来する。60、70年代のヒッピーカルチャーなどをバックボーンに持ち、「UP CYCLE」をコンセプトに掲げて構築されるジュエリーはヴィンテージカルチャーそのもの。世界中に多くのファンを持つ〈BLIND MAN TOGS〉ですが、6月15日よりユナイテッドアローズ(以下UA) 原宿本店にてPOP UPを開催します。これを機に、デザイナーの小笠原 浩さんにプロダクトに込めた思いやブランドのストーリー、今回のPOP UPについて教えていただきました。

Photo: Takehiro Sakashita
Text: Ryo Tajima(DMRT)

古着の買い付け時に見つけた小物に惹かれて。

−〈BLIND MAN TOGS〉の成り立ちについて教えてください。

若い頃にパンクロックなどを好んで聴くようになり、アーティストがどんなファッションをしているのかが気になりはじめ、アメリカのカルチャーに興味を持つようになりました。そこから古着を掘るようになり、好きが高じて26歳のときに大阪でヴィンテージショップ「NEW AIR」をはじめました。そこがブランドに繋がるきっかけでした。

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−小笠原さんが1996年から2014年の間に運営されていた「NEW AIR」ですね。そこからどのようなことがきっかけでブランドをスタートさせるに至ったのでしょうか。

お店に置くアイテムを探しにアメリカに買い付けに行くようになって、最初はミリタリーものなど、いわゆるアメカジのヴィンテージを探していたのですが、実際に現地に行くと、ウェアだけではなくジュエリーやメガネとかハットなど、身につけるもの全般があるわけじゃないですか。それまで自分が知らなかった小物などに徐々に惹かれるようになり、洋服以外のものを買い付けることが多くなってきました。

−そこでアクセサリーに興味を持つようになっていかれたのですね。

はい。それまで、青春時代に好きだったロックスターが付けていた〈CRAZY PIG(クレイジーピッグ)〉のジュエリーなどはすごく好きだったんですけど、アクセサリーに対する深い知識があったわけではなく、アメリカで過去に生み出された魅力的なものを見ているうちに惹かれていったんです。その頃、徐々に視力も低下していく中で、なにを置いたらショップに来てくれるお客さまが喜んでくれるだろう、なにか自分らしい打ち出しはできないだろうか、といったことを模索していって、古い素材を使ってジュエリーを作るというアイディアに行き着いたんです。そして、2008年に〈BLIND MAN TOGS〉をスタートさせるに至りました。

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ポップアートやヒッピーカルチャーがバックボーン。

−プロダクトには、小笠原さんの趣味趣向がプロダクトに反映されると思うのですが、いかがでしょう?

そうですね。私が好きなのが60~80年代のポップアートや70年代のヒッピーカルチャーに見られるデザインなんです。だから、ピースマークなどを起用しています。

−デザインや製作について、どのような流れで行われているんですか?

まず、私が作りたいものを頭の中に思い浮かべて、それをできるだけ詳細に文章化して、実際に製作してくれる職人さんに伝えるんです。例えば、星のマークを施したいと思ったとき、星の形もいろいろあるじゃないですか。そんなときには、ピーター・マックスっぽいファットシルエットな星にしてほしいとか、自分のイメージしているデザインを具体的に伝えて、デザインが想像しやすいようにしています。

画像 発注したデザインを確認する際は手で触れて、余白と装飾の部分のバランスを確認しながらイメージ通りのものになっているかをチェックしていく。

−そうした職人さんとのやり取りでデザインがより良く変わっていくことはありますか?

もちろんあります。完成系のイメージは自分の中にあるのですが、出来上がってくるものがイメージ通りのものかどうかは正直、判断できないんです。最後には自分で触れて確認するのですが、ある程度は関わる人の目や判断に任せたりする部分はありますし、職人さんが形にしてくれることで、自分の想像を超える化学反応が起きています。

−デザインを考えている際に行っていることはありますか?

行き詰まったら音楽を聴くことが多いです。ビジュアルが思い浮かぶわけではないですけどリラックスできるんです。UKのインディーロックであったり、世代的に90年代のオルタナやグランジは好きですね。自分には欠かせない要素です。

−〈BLIND MAN TOGS〉がコンセプトに持っている「UP CYCLE」について教えてください。

プロダクトを生み出すときにゼロから新しいものを生み出すのではなく、ヴィンテージのシルバー製カトラリーを使用していて、もともとある装飾を活かしながら自分なりのオリジナリティを付与していきたいと考えているんですよ。そのときに配慮していることは、素材の良さを壊さないということですね。ブランドとして行っていることが、文字通り素材を“再利用”ということなので、「UP CYCLE」をコンセプトに掲げています。

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−改めて、ヴィンテージのシルバー製カトラリーを材料に選ばれる理由を教えてください。

細部まで細かく装飾が施されたカトラリーを見たときに衝撃を受けたんです。それで調べていくと、70年代のヒッピーカルチャーの中にスプーンリングなどがあることを知ったんです。ヒッピーの人たちがキッチンのスプーンをカットして丸めてアクセサリーにしていたり、ナバホ族の人たちがスプーンを叩いてシルバーをカットしたりしていて。買い付けに行ったときに、そういう光景を目にしてすごくカッコよく感じたんです。そういった体験もあったので、自分がブランドとしてなにか新しく作るということには魅力を感じられなくて、ヴィンテージのシルバー製カトラリーを「UP CYCLE」させる、ということになったんです。

画像 〈BLIND MAN TOGS〉が常に提案しているプロダクトの種類はリング、バングル、ブレスレット、ネックレス。今回のポップアップにもブランドらしいアイテムが取り扱われる予定。


〈BLIND MAN TOGS〉らしさが感じられるものを置きたい。

−UAとの取り組みについてもお伺いしたいのですが、いつ頃から繋がりがあるんですか?

私は2015年からアーティストビザを取ってロサンゼルスで暮らしながら活動していたんですけど、その時期にUAのバイヤーさんとお会いしまして、そこからの付き合いになります。以前、〈NEXUSVII(ネクサスセブン)〉さんとコラボした際に、UAの店舗で取り扱っていただいたことがあるんですが、直接的にPOP UPを開催するのは今回が初になります。

画像 〈BLIND MAN TOGS〉流に表現したコインやドッグタグ。ヘッドフォンやスターのモチーフなどが効果的に配置され、ブランドらしさを表現している。

−では、POP UPではどういったアイテムを展開される予定でしょうか?

基本的には〈BLIND MAN TOGS〉のプロダクトをラインナップさせていただく予定です。リングやバングル、ブレスレット、ネックレス、キーホルダーなど常にブランドが扱っているものですね。先ほどお話させていただいた通り、古いシルバー製のフォークやスプーンといったカトラリーを使ったアイテムを製作しているのですが、そこに注目していただけたからこそのPOP UPだと思うので、〈BLIND MAN TOGS〉らしいものをしっかりとご用意したいと考えております。このイベントは期間限定でヴィンテージカトラリーのオーダー会も実施いたします。お好きなカトラリー柄とデザインを組み合わせることができ、リングサイズや手首周りのサイズ調整などお客さまのサイズに合わせたオーダーが可能です。そちらも楽しみにしていただけたら嬉しいですね。

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ミュージシャンと一緒に仕事をしてみたい。

−今後、実現してみたいことがあったら教えてください。

個人的にはミュージシャンの方と一緒になにかを作ってみたいですね。衣装なのか、ギターストラップなのか。はたまたギターのペグなどのパーツなのかわかりませんが、なにかご一緒するのが夢です。ブランドとしては最近、ペイントアーティストと一緒に作品作りを進めているんです。これまで展開してきたジュエリーが軸であることは変わりませんが、アート的なアプローチにもすごく興味があるので、才能溢れる方々と一緒にお仕事させていただきたいと考えています。

PROFILE

小笠原 浩さん

小笠原 浩さん

1990年代後半から約18年間、アメリカでバイイングに携わり、ウェアやジュエリーなど多岐にわたる貴重なヴィンテージアイテムに触れ、その中でヴィンテージのシルバー製カトラリーと出会い、それらを素材に使用してジュエリーを制作するというコンセプトのもとに2008年にブランドを始動。10歳の時から徐々に目が悪くなり始め、今では両目共に完全に見えなくなり、ブランドネームの「BLIND MAN TOGS / ブラインド マン トグス」はそういう自分自身の特徴の一つを表している。

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