ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2022.07.21 THU.

大阪ブルワーズアソシエーション×グリーンレーベル リラクシング
クラフトビールが繋ぐ、店舗と街、暮らす人々。

〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉(以下GLR)のプロジェクトである、店舗と地域の繋がりが元気な街を作るプロジェクト“THINK LOCAL”と、〈大阪ブルワーズアソシエーション〉(以下、〈OBA〉)とのコラボレーションが実現。今回の取り組みを始めることになったきっかけや、発売するアイテムのこだわり、“THINK LOCAL”と共通する想いや大阪という地域について、〈箕面ビール〉代表取締役兼工場長であり、OBA設立者のひとりでもある大下香緒里さんにお話を伺いました。

Photo:Go Tanabe
Text:Shoko Matsumoto

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地元に愛されるクラフトビールを作りたい。

—今回のプロジェクトのきっかけを教えてください。

以前から〈UNITED ARROWS〉さんが地方の数社とコラボレーションされているという話は聞いていたのですが、昨年12月に〈箕面ビール〉でもご一緒しませんか?とお声がけいただきました。ちょうど大阪府のクラフトビールの知名度の向上や需要拡大を図ることを目的として、〈大阪ブルワーズアソシエーション〉(以下、〈OBA〉)を6月に設立し、醸造者のなかでの情報交換をメインに活動していたんですが、〈OBA〉の存在自体を知ってもらうために何か発信できるきっかけがあるといいなと思っていたタイミングでした。〈green label relaxing〉が掲げている“THINK LOCAL”という活動内容をお伺いして、できたら大阪府のよりローカルなところで、作り手と飲み手とその真ん中にある売り手のビアバーなどをお客さんが回遊して、クラフトビールの産地として大阪をもっと認知してもらうきっかけ作りをしたいとご相談させてもらいました。ご快諾いただいて、今回のコラボレーションに至りました。

—〈GLR〉のプロジェクト“THINK LOCAL”の考え方について、特に共感したのはどんなところでしょうか。

わたしたちの手がけるビールは「ローカルビール」を謳っているんですが、地元のビールは地元で消費されて、地元に愛されてなんぼだと思っています。イギリスなどの地方にいくと、地元のパブが地元のビールを扱っていて、地元の人たちが集まる。そして地元のサッカーチームを応援する、というのが憧れの文化としてあります。わたしたちの商品もなるべく地元のスーパーやお店に扱ってもらいたいと思っていて、活動や販売を強化しているところです。もちろんクラフトビールを扱うお店は全国にも多いので、首都圏や他の関西地区にも行かせてもらいますが、手に取ってもらいやすい距離、一番新鮮な状態で新鮮なものをお届けできるのは、やっぱりローカルだと思っていて、そこでこそ商品が根付くと思っているんです。地元の人たちが誇りを持って飲んでもらえるようなビールであるべく、お付き合いも含めて、そういう発信をなるべく密に、力を入れてやっているところです。

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本社併設の直営店「MINOH BEER WAREHOUSE」はビールに合わせたフードメニューと一緒に出来立ての箕面ビールを味わえる。時間を問わず地元の住人がひっきりなしに訪れる憩いの場となっている。

—具体的には、どんな活動をおこなっていますか?

いまはコロナ禍で控えていますが、毎年感謝祭をおこなっています。本来だったら6月に開催していて、最初は箕面で自治体とお付き合いのある飲食店に出展してもらって、小さくスタートしたイベントが、今では2日間で6000人ほど集まるまでに成長しました。お客さんは地方や海外からも訪れます。普段はインターネットでも購入が可能ですが、イベントに参加することで箕面はどんなところだろうと気にしてもらったり、箕面を知ってもらって足を運んでもらうきっかけのひとつになれたら、と思い計画しています。今回の“THINK LOCAL”とのお取り組みも、ローカルの活性化に繫がればうれしいですね。

—貴社が本社を構える箕面市の特徴について教えてください。

弊社に来られると、意外と住宅街のなかにあると驚かれますが、箕面の駅に行けば大滝に登るまでの山道があり、何百年、何十年も続いているような土産屋さんもあって、風情を感じられると思います。自然も豊かなので、ランナーやマウンテンバイクをこぐ人たちが、トレーニングのあとに店によってくれるというのが週末は多いです。みんな汗だくでいらっしゃいますよ。今はそんなに出てこないけれど、昔は大滝までの道すがらに猿がわんさか出てくるような場所だったんです。猿もやんちゃな猿が多くて、ものを取ったりいたずらしたり。〈箕面ビール〉が王冠などのモチーフを猿にしているのも、大阪でも猿がいる場所なんだと知っていただきたいからです。また「箕面(みのお)」という漢字はなかなか読み方がわからないといわれる方が多いので、猿のモチーフとの相乗効果でお客さんに覚えてもらえたらと思っています。

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OBAに参加している17社と所在地が描かれている


“横のつながり“を大切にしたモノづくり。

—OBAを設立した経緯を教えてください。

常々、みんなで協力し合えるような団体があった方が便利だよね、と近隣のブルワリー同士で話していたんです。というのも、わたしたちのように、ボトルシェア商品を作っていないブルワーも多く、コロナ禍で取引先の業務店の出荷量が大幅に落ち込んでしまったからです。それはひとつ、設立の大きな後押しになりました。それに、日本に限らず世界中が今クラフトビールブームで、大阪でも新しいブルワリーがここ5年くらいで10社くらい増え、今後まだまだ増えていく予定です。新規参入があるというのは、業界としても活性化に繫がっていくのでとてもいいことなのですが、クラフトビールは日本酒などに比べてまだ歴史が浅く、ノウハウを継承できる場所が少ない。20年くらい付き合いのあるわたしたちは比較的横の繫がりが強く、レシピの共有も頻繁におこなうし、仲のいいところとはスタッフが行き来して勉強し合ったりということを活発に行っていますが、新しい人たちはその接点がなかなかなかったりもします。情報共有できるコミュニティが必要だと感じ、それなら近しいところから、まずは飲み会ベースで親交を深めていってもいいんじゃない?という感じで始めました。

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箕面ビールのビール醸造所。熟練の醸造家による徹底した管理により国内のみならず世界で高い評価を受けるビールが作られている。

—OBAに加盟するブルワリーの特徴について教えてください。

設備や醸造規模はまちまちです。〈箕面ビール〉は一度に3000Lの仕込みをおこないますが、醸造所が併設されているようなブルーパブスタイルだと500Lくらいの小規模の設備のところが多いと思います。ただ、作り方の工程にあまり差はありません。共通することで言うと、大阪の“食”は強く意識しているかもしれませんね。食事と一緒に楽しめる“食中酒”としてのビールを意識しているところが多いのかも。その中でもホップの香りや苦みが特徴的なIPAが人気です。クラフトビールのカテゴリーで今はIPAが人気ですが、ここ3〜4年は原点回帰してピルスナーやジャーマンスタイルなど昔ながらのスタイルにチャレンジするブルワリーも増えてきました。常に新しいものを発信するために定番を持たないというブルワリーもありますし、いろいろとチャレンジしつつ、自分たちのスタイルとお客さんのニーズをすり合わせて邁進しています。

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—〈箕面ビール〉の製造工程のこだわりについて教えてください。

設備を3年前に入れ替えて、新たな設備でやっていますが、ビール工場はほぼ洗浄がすべてだと思っていて。クリーンな麦汁を取るために、衛生面の管理は徹底しています。また定番ビールはバランスを重視しているので、毎回作るごとにデータをとって、細かいブラッシュアップを重ねています。温度やイースト酵母の菌体数など、毎回同じにしても生き物なのでまったく同じにはならないんですよね。季節に合わせるなど、毎回レシピは調整しています。シーズナルビールはだいたい月に1〜2種類作っています。

—近隣の店舗や地元住民の方など、地域との繋がりを強く意識したエピソードはありますか?

OBAを設立したことで、みんなでできることが増えたので、「こういう企画でこういうのをやりませんか?」という声かけが非常に多くなりました。発信力が強くなると、取り上げてもらえる機会も多くなり、目にしてもらえる機会も増えるので、地元の人たちにも「大阪にこんなにブルワリーがあったんだ」と興味を持ってもらうきっかけになっていると思います。


それぞれの“個性“を意識したビールを提案したい。

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—〈GLR〉のブランドコンセプト「Be Happy」にかけて、「Be Hoppy」を今回のビールのテーマに、4つのブルワリーがコラボレーションビールを作られました。それぞれの特徴を教えてください。

“THINK LOCAL”という共通する考えがあるなかで、同じレシピで作ろうかという話もあったんですが、それよりも“THINK LOCAL”が提唱するシチュエーションに合わせて、異なるスタイルでそれぞれの個性を提案しようということになりました。ホップのみ共通でシムコーを使用。〈箕面ビール〉では、「大事な記念日に華を添えるビール」として、副原料に古代米を使用し、赤い色のビールを目指しました。思ったように色が出ず苦戦しましたが、クラフトビール初心者の方にも手に取っていただきやすいビールができたと思います。

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〈箕面ビール〉とのコラボレーションビールの原料の黒米。紫黒色素を持っているのでビールが赤色に色づく。

〈國乃長ビール〉は「週末お家でリラックスして飲むビール」。ゆっくり飲んだり、ぐいっと勢いよく飲んだり、飲み方と時間による香りと味わいの変化を楽しめるビールをイメージして、季節感を出し、少し軽めに仕上げています。〈テタールヴァレ〉は「フェスやキャンプで非日常を盛り上げるビール」。非日常という意味で度数は比較的高めの7%。近々に冷やして美味しい、爽やかな味わいが特徴的です。〈泉佐野ブルーイング〉は「仕事終わりにスカッとするビール」。小麦麦芽を加えることでまろやかな味わいになり、スッキリと飲める軽めのエールが完成しました。シチュエーションにぴったりのラベルもポイントです。今回の4社にそれぞれ他のメーカーも仕込みに参加するなど、ブルワリーの垣根を越えた商品が出来上がりました。


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毎日を楽しむためのコラボレーションアイテム。

—今回発売するその他のアイテムについて、こだわりのポイントを教えてください。

クラフトビールは要冷蔵なので、必要不可欠なクーラーバッグをお願いしました。またクージーやボトルオープナーは、OBAの会員からのリクエスト。バンダナにはOBAに参加している17社と所在地が描かれています。フェスやランを楽しむかたも増えてきているので、クラフトビール好きと〈GLR〉のお客さん、両方が愛用できるようなアパレルのアイテムも展開しています。

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クラフトビールを通じて地元の活性化へ。

—今回のコラボレーションを経て、どのようにクラフトビールが広がっていってほしいですか?

クラフトビールをまだ飲んだことない人、ちょっと苦手意識を感じられているかたにもぜひ手に取ってみてもらいたいなと思っています。今回4社が違うレシピにしたというのも、クラフトビールにはいろんなスタイルがあるということを知ってもらいたかったし、ビール自体がまだまだ奥が深くて、多種多様な世界だというのを知ってもらいたかったから。そして、これをきっかけに自分の地元のビールを手に取ってもらいたいなと思います。それで興味がわけば、ブルワリーに足を運んでもらいたい。そうすることがまた“THINK LOCAL”にもつながっていくのかなと思います。

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INFORMATION

PROFILE

大下香緒里

1976年生まれ。大阪府出身。1977年より小売酒販店を営んでいた父が1996年ブルワリーを起業。 同年、家業を手伝う形でブルワリースタッフとして入社。1998年に工場長に就任。 醸造という歴史や文化が漂う仕事に取り憑かれ、日々奮闘しながら26年。2012年に社長に就任し現在に至る。
http://www.minoh-beer.jp

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