ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ウツワ

2015.10.09 FRI.

「The Tweed Run」が果たすべきこと。

来たる10月18日(日)、今回で4回目となる「The Tweed Run Tokyo 2015」が開催されます。イギリスの伝統的な織物である“ツイード”で仕立てられたウェアを身にまとい、自転車に乗って東京の街をツーリングする、という至ってシンプルなコンセプトを持つこのイベント。しかしそこには、主催者の特別な想いがあるのです。同イベントの実行委員長を務める栗野宏文が、その想いについて綴ります。

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洋服を着る、見られる、街を楽しむ。

2011年にスタートした「The Tweed Run Tokyo」も、今回で4回目を迎えることができました。そもそも最初にこのイベントをやりたいと思ったのは、ユナイテッドアローズのメンバーとして洋服(モノ)や販売態勢(ヒト)を追求する一方で、お客さまにご購入していただいたウェアを着る機会(ウツワ)の提供がまだ不十分である、と思ったからです。

我々としてもせっかくご購入いただいたウェアをたんすの肥やしにしてほしくないですし、洋服は着られることでその魅力を発揮します。だから、“着ていく場”も提供するべきだと思うのです。そして、着ていく場ができあがれば、そこは“見られる場”としても成立する。例えば、フランスのパリにあるカフェでは、テラス席はすべて歩道に向けて設置され、街や、そこを歩く人々の姿を観察できるようにつくられています。つまり、そこでは“見られる意識”というものが存在し、それが人々の美意識を刺激しているのです。このイベントでも同じように、お洒落をして参加していただき、洋服が好きな人同士が目線を交わすことでその意識を養ってほしい、と私は考えています。

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では、その機会がなぜ自転車のツーリングイベントになるのか? それは、ファッションを楽しむと同時に、“街”を感じてほしいからです。私は、海外へ行って日本を外側から眺めるたびに、日本が素晴らしい国であることを実感し、外国人の目で日本の街を廻りたい、という想いを抱きます。日本人として日本にいながら、そうした視点を持つことはできないだろうか? と考えた末に、思いついたのが自転車に乗ることでした。自転車は狭い道を通り抜けることができるし、広い視野で街を眺めることができます。つまり、街の魅力を発見するのに最適なツールであるということです。普段とは異なった角度で街の様子を眺めれば、いままで気付かなかったことを新たに発見することができます。

その考えが生まれて間もなく、ロンドンで「The Tweed Run」というイベントが開催されていることを偶然知りました。ツイードを着て自転車に乗り、街をクルージングする。非常にシンプルで分かりやすいコンセプトだと思い、すぐにロンドンの事務局から日本における開催の許可をもらいました。そして2011年の秋、「The Tweed Run Tokyo」を開催するに至ったのです。

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社会との結びつきを強めるために。

実際に開催してみたところ、イベントは思った以上にスムーズに運行しました。ファッションを楽しんだり、街の魅力を発見する以外にも、自分とは違う業界の方やお客さまとお話する機会にも恵まれ、我々の考える「ウツワ」の提供ができたという実感を獲得したのです。そして、その実感を手に、名古屋でも過去2回に渡って「The Tweed Run」を開催しました。

11月7日(土)には「The Tweed Run Bishu 2015」として、3回目の名古屋開催を行ないます。名古屋一宮市の尾州は、世界有数の織物産地として知られる街で、もちろんツイードも織られています。昔ながらの風情を感じるノコギリ屋根の工場が建ち並び、まさに日本の魅力を発見できる場所であり、我々のイベントとの親和性が強い。今回は一宮市長はじめ尾州産地の繊維企業数十社が参加してくれるということで、街を挙げての開催になるわけです。

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実はロンドンの「The Tweed Run」では、普段立ち入りが禁止されている庭園や公会堂のようなところにも入れるように、ロンドン市が全面的な協力を行なっています。こういったことが日本でも行なわれるようになれば、東京や名古屋だけでなく、日本各地で「The Tweed Run」を開催することができる。今後はそれも視野にいれて、運営を行なっていきたいと思っています。

それと、大事なことをひとつだけ。現在の日本は、社会的に自転車への風当たりが強いです。なぜならば、交通ルールに対するマナーが悪いから。それで、自転車へのイメージが悪くなるのはしのびない。自転車は素晴らしい乗り物だし、なにより使用されるエネルギーは100%クリーンです。自転車を愛する者として、可能な限り現状を立て直したい。だから「The Tweed Run」では、交通ルールを守ろう、という啓もう活動を行ない、交通マナー改善の一助になればと思っています。

我々のような小売業というのは社会の中のインフラであるべきだと私は考えます。つまり、コミュニティの中で欠かすことのできない存在となるべき、と。だから我々はさらに社会を意識して、世の中と深く結びつく必要があり、そのひとつの方法として「The Tweed Run」があるのです。参加エントリーは抽選(東京はエントリー終了)になってしまいますが、20歳以上であればどなたでも応募できるオープンなイベントです。まずはさまざまな方に参加していただき、我々の想いを感じ取って欲しい、そう願っています。

INFORMATION

The Tweed Run Tokyo
http://tweedruntokyo.com/

秋冬のマストバイ!ツイードアイテム特集 http://store.united-arrows.co.jp/_search/search_result.html?p_tagid=37897

PROFILE

栗野宏文

1953年生まれ。クリエイティブディレクション担当、上級顧問。 1977年からファッション業界に身をおく。Royal Academy of Fine Arts Antwerp(アントワープ王立芸術アカデミー)では度々卒業ショーの審査員も務め、2004年には、英王立芸術大学院「Royal College of Art」からHonorary Fellowship(名誉研究員)を授与。

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