ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ウツワ

2019.11.08 FRI.

カリフォルニアを拠点にする羽毛サプライヤー、
アライドフェザー&ダウン社が誇るトレーサビリティとは。

1987年に誕生したアライドフェザー&ダウン社(以下アライド社)は世界最大規模の羽毛(ダウン)サプライヤーでカリフォルニア州のモンテベロに拠点を置く。ユナイテッドアローズ社(以下UA)がアウトドアブランドをはじめとするアパレル産業や寝具メーカーから絶対的な信頼を得ているアライド社のダウンを取り扱うようになって約10年。ダウンといえば寒い地域で生産されていると思われがちだが、なぜダウンサプライヤーが温暖なカリフォルニア州にあるのか? また、彼らが提唱するトレーサビリティとは具体的に何なのか? そういった謎を解明すべく本社に潜入した。

Photo_Shunya Arai(YARD)
Text_Megumi Yamano

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30年以上前にファミリービジネスとして1,000㎡の小さな工場から始まり、いまでは東海岸やサウスカロライナ、中国、ベトナム、チェコ共和国にも工場を構えるビッグカンパニーへと成長を遂げたアライド社。厳しい精製基準をクリアしたダウンは軽量で柔らかく、フィルパワーと呼ばれる「かさ高性」に優れたハイクオリティな素材のみにこだわっている。そしてUAとは約10年の付き合いの中で、ハンガリーダウン、シベリアダウン、チャイナダウンと遍歴を重ねてきた。またアライド社は創業当時からサステナブルなビジネススキームを標榜し、UAとしてもそれに強く共感。昨今の時代の流れもあって、今シーズンからリサイクルダウン「RENU CIRCLE / レニューサークル」を使った商品をビューティ&ユース(以下B&Y)で展開することになった。

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ダウン業界全体の中で見れば、バージンダウンは依然として全体の約90%〜95%を占め、リサイクルダウンは約5〜10%といわれている。しかし、アライド社がなぜリサイクルダウンに力を入れるのか。弁護士としての顔も持つ社長のダニエルに話を聞いてみた。「私の父、スティーブが会社を設立した時点ですでにトレーサビリティに焦点を当て始め、持続可能性(サステナビリティ)の観点からだけでなく、品質の観点からも原料がどこから来たかを知ることができるようにし、一貫して最高品質の素材だけにこだわってきました。つまり、社会に対してより責任を持ち、消費者に対して多くの情報を伝えることができるようにしようという動きがその頃からあったんです。私たちが考案したリサイクルプログラムは最も持続可能で地球にも動物にも優しいと信じています。廃棄されるはずだった衣類や寝具から出るダウンは、我々のもとで再処理され、サプライチェーンに戻されます。それは画期的な一歩であり、今後より必要とされる動きだと思います。市場全体に大きな影響を及ぼすと確信し、多くのブランドがこれに続くと期待しています。なぜならダウンの素晴らしさのひとつに、適切な方法で処理されている限り、半永久的に本来の美しさを味わってもらうことができるからです。もちろんその過程におけるエネルギーにしても化学物質にしても最低限に抑える方法を模索し続けていて、数ヶ月ごとにプロセスの見直しにも力を入れています」。

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アライド社ではダウンの処理に使用される水もリサイクルできるように取り組んでいるという。処理する際に使用するすべての化学物質もブルーサインによって認証されているため、環境への影響を最低限に抑えると同時に、労働者と消費者の健康面にも安全を保証することに努めている。そして、グローバルな視点と地球環境問題に考慮したモノ作りにおいては、バージンダウンにしてもリサイクルダウンにしても生産段階から最終消費段階、そして廃棄段階まで追跡を可能としたトレーサビリティシステムを取り入れている。ダウンの産地や品質を追跡することができるトレーサビリティシステムを導入することで業界をリードし、限りある資源を子どもたちの未来につなぐために信頼のもてる素材のみを扱うことを提唱している。またカリフォルニアの乾燥した気候はダウンを保管するのに適しているといえる。

5__DSC9510バージンダウン、リサイクルダウン問わず工場内に何箇所か設置された除塵機で工程ごとにゴミなど細かい不純物を徹底的に取り除く。

6_DSC9512グレーと呼ばれるリサイクルダウンを熱風乾燥したあとの様子。この状態で常温まで冷まされた後、フェザーとダウンに選別される。

7_DSC926750パウンドずつ乾かすのがアライド社のこだわり。熱風乾燥することでリサイクルダウンでも本来のダウンが持つ保温力がよみがえる。

8_DSC9298工場内のラボではベテランスタッフの手作業で油分や不純物のチェックが行われる。フィルパワーチェックも含め徹底した品質管理。

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アライド社は創業当時から信頼のできるダウンの調達経路を模索し続け、2008年にはダウンの採取において倫理的な方法を遵守して採取していることが公式に認定された優秀なサプライヤーだ。ヨーロッパのダウンを中心にストックされいる本社工場には最先端の技術を駆使した機械が並ぶ。寝具やダウンジャケットなどを解体してリサイクルされるダウンは白以外にも微妙に色が混ざるためグレーと表記されている。もちろんリサイクルに使用されるダウンも品質が大きな鍵となる。それらの調達経路もグローバルパートナーと模索し連携して集められている。リサイクルダウンはすでに所有している消費者たちからの回収となるためその量の見通しを立てることは難しいが、ヨーロッパを中心に多くの人がリサイクルに協力的だ。回収されたダウンは耐久性や弾力性のテストが厳しく行われ、品質基準をパスしたものだけが使われる。それらの配送システムにも独自のルートを開発し、二酸化炭素の排出を最低限に抑えるべく常に環境に優しいプログラムの見直しに取り組んでいる。

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アパレル業界でも広く認知されつつあるResponsible Down Standard(RDS)という国際基準の認定を受けているアライド社。素材の品質はもちろん、羽毛採取や強制的な餌付けなどがされていないことを保証し、業界全体のサステナビリティの取り組みを牽引している。

11_DSC942112_DSC943713_DSC944814_DSC9484リサイクル用に集められた布団や枕は工場内にある専用の小部屋で手作業により解体され、羽毛を痛めないよう取り出される。品質チェックをクリアしたものだけが次の段階の洗浄へと進むことができる。廃棄物として焼却されないことで二酸化炭素の抑制に繋がる。

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ダウンを洗浄する作業は特殊な機械と工場内で浄水された水を使い、全11工程行われる。まずリサイクルダウンは汚れなどが付着しているため仮洗いをすることから始まる。その後、500パウンド(約226キロ)を一気に洗い、すぐ乾かさずしばらく寝かせる。その後、かくはん機で膨らませてから50パウンド(約22キロ)ずつに分けられ乾かされる。効率的ではないがこうして丁寧に乾かすのがアライド社のこだわりだ。またゴミや不純物を取り除く作業は全工程の中で7回も行われる。そして小部屋にあるダウン選別機に空気を飛ばし、ダウンとフェザーに選別される。工場内にある専用のラボでは品質管理を徹底して行っており、今シーズンからB&Yが使用しているレニューサークルはダウン80%フェザー20%で、フィルパワーと呼ばれるかさ高性は700FPが保証されている。

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工場を案内してくれたクリエイティブディレクターのマシューに今回「レニューサークル」を使ったB&Yとのコラボレーションについて聞いてみた。「今回のコラボを通してグローバル市場にレニューサークルを知ってもらえるのはとても嬉しいです。ダウンに限らずファブリックが環境に及ぼす影響はとても大きいので、再利用できるということを知ってもらえることは素晴らしい機会だと思います。日本のブランドはアウトドアアイテムでもうまくライフスタイルに取り入れていますよね。我々のレニューサークルをB&Yのデザイン性のあるアウターで実現してもらえると思うとワクワクします。そして今後、消費者の方に自分が着る洋服がどこから来たものなのかということに興味を持ってもらい、“リサイクル”という考えがさらに浸透することを期待しています」。
B&Yのエクスクルーシブとして今季日本デビューを果たした「レニューサークル」。今後の展開やさらなる進化にも注目していきたい。

JP

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