ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

質を高め、循環していく「グリーンダウン」が届ける新たな価値。

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2023.11.28

質を高め、循環していく「グリーンダウン」が届ける新たな価値。

〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(以下、GLR)〉は、オリジナルのダウンアイテムに、羽毛循環サイクル社会を目指す活動団体「一般社団法人グリーンダウンプロジェクト」による、リサイクルした羽毛「グリーンダウン」を使用しています。その理由は、「グリーンダウン」がクリーンかつ高品質であるとともに、この活動がもたらす社会や環境のための新しい価値に賛同しているから。今回は、「グリーンダウンプロジェクト」の会員企業である河田フェザー株式会社(以下、河田フェザー)さまに焦点を当て、羽毛リサイクルの意義や価値について紐解いていきます。

Photo:Takeshi Wakabayashi
Text:Hisamoto Chikaraishi (S/T/D/Y)

キレイで温かい、リサイクルされた「グリーンダウン」。

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〈GLR〉で採用している「グリーンダウン」とは、これまで家庭で使われていた羽毛ふとんや愛用されていたダウンジャケットに詰められた羽毛を、国内屈指の羽毛専門メーカーの〈河田フェザー〉がキレイに洗浄し、高い保温性などの羽毛本来の機能を回復させたリサイクル羽毛(ダウン)を指します。

羽毛製品の回収、羽毛の精製、リサイクルダウンの製品化、販売を循環して行うことで羽毛のリサイクル社会を目指す「グリーンダウンプロジェクト」のもと、189社(11月21日現在)が本活動に関わっています。

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食肉用の水鳥から回収された羽毛は、以前は使い終わった製品とともにゴミとして廃棄されていました。動物に対する命の尊厳や自然環境の上に成り立つリサイクル社会、それを支える循環型のビジネスモデルを実現するために、羽毛を再生可能な資源として活用するシステムを推進することが「グリーンダウンプロジェクト」の意義なのです。

画像 どちらもメンズアイテム。(左)スタンドカラーと比翼仕立てのフロントが特徴のダウンベスト。重ね着しやすく、ボリュームがスタイルのアクセントに。 (右)フード付きのミドル丈がオンでもオフでも活躍。キルトのないすっきりしたデザインで上品な印象に。

画像 どちらもウィメンズアイテム。(左)袖を取り外してベストとしても着られる2WAY仕様。中わたの分量を増やした裾や袖が、愛嬌のある丸みを帯びたシルエットを作ります。 (右)程よくゆとりのあるショート丈のボディは、裾とウエストのドローコードでシルエットをアレンジできます。フロントを開けても閉じても様になる、高さのあるスタンドカラーがポイント。


羽毛の洗浄・回復に欠かせない豊富な天然水。

〈河田フェザー〉が手がける羽毛が高品質な理由は、独自の加工技術と恵まれた環境にあります。高品質な羽毛を生み出す条件のひとつが洗浄力。羽毛の精製を行う工場を置く三重県の多気郡明和町の西方は、世界有数の雨量を誇る大台ヶ原山地を有します。

画像 河田フェザー提供
地下に大量の水が流れる大台ヶ原の山々。

伊勢平野の地下深く流れる天然水は、カルシウムやマグネシウムのミネラル等をほとんど含まない、飲料可能な超軟水。硬度が低いため羽毛を傷つけず、隅々まで浸透してアカやホコリなどの汚れをキレイに落とし、羽毛本来の機能を回復させます。さらに石鹸の使用も少なく済みます。

画像 河田フェザー提供

羽毛の洗浄に使われる現地の超軟水は、高い還元力を持ち、羽毛の損傷した酸化部分を新品同様に修復する効果も発揮します。

〈河田フェザー〉の高い技術が可能にする精製工程。

全国から集められた羽毛製品を解体し、羽毛が取り出されます。そして新しい羽毛と同じように〈河田フェザー〉独自の技術が詰まった国内工場のラインでしっかり洗浄します。洗浄の工程では、豊富な天然水を使い、“まるでお米を研ぐように”羽毛同士を複雑にぶつけ、傷つかないようにアカを落とす「研ぎ洗い」を実践しています。

次に高温で乾燥をかけ、羽毛の中の水分を一気に飛ばし、ふんわりとした仕上がりに。続いて、常温に冷ますと同時に、洗浄、乾燥で剥がれた細部のアカやホコリを取り除く独自の工程を設けることで、よりクリーンな羽毛を生み出します。
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河田フェザー提供
巨大な選別機の中では、大量の羽毛が風に舞っている。

そこからさらに、壊れていたり未熟であったり、再利用に適さない羽毛を選り抜く作業へ。ふわふわと舞う羽毛(ダウン)と羽根(フェザー)の特性を生かし、風の力を利用して選別。同時に羽毛を完全に開いた状態で、大量の空気に晒してにおいをより軽減し、選別後は、実際に人の鼻でにおいを確認する作業も工程に含まれています。

高品質な羽毛を安定して提供するために。

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河田フェザー提供
(右)洗浄・回復・乾燥が終わった羽毛は、人の目で定期的に分析、試験。(左)羽毛の透明度を測る透視度計は、業界基準の3倍の3mの長さを使っています。

〈河田フェザー〉が考える“高品質”の基準とは、キレイであり、つねに安定した品質であること。キレイであることの検査方法として、精製加工後の羽毛3gを300ccの純水に入れ、1分間に150回振とうさせる作業を45分間繰り返し、その水を細長い透視度計に入れ、水の透明度を計測する、という清浄度検査があります。

透視度計の長さは、新毛の業界基準で1000mmと定められていますが、〈河田フェザー〉は、新毛、およびダウン率50%以上80%未満のグリーンダウンは、この基準を2000mm、さらにダウン率80%以上のグリーンダウンはこの基準を3000mmとし、より厳しい基準で清浄度を確認しています。さらに、新毛は数百から数トンごとの品質検査ですが、リサイクル羽毛は200~250kgごとに品質検査を行なっています。

画像 河田フェザー提供
これまで培った経験をもとに、安定した品質を提供するため羽毛をブレンド。

画像 河田フェザー提供
左が回収したばかりの羽毛で、右が精製した「グリーンダウン」。キレイで、保温力も回復しています。

また、均一の製品を提供するために、羽毛をお客さまのオーダーに合わせてブレンドしています。専用の機械を使い、長年蓄積した膨大なデータベースに基づき、羽毛のブレンド内容を決め、工業規格のように安定した品質をキープ。羽毛を保管する袋の中でも品質が均一になるように排出され、最後まで高品質の羽毛加工を追求していると言えます。

ユナイテッドアローズが共感する新しい価値。

画像 どちらもメンズアイテム。(左)ゆとりを持たせた旬なサイジングをラグランスリーブで仕上げることで、すっきりとした印象に。高密度ナイロン「DICROS」を使用。 (右)トレンド感のあるミニマムなデザインと適度なボリューム。カジュアルなシルエットながら、マットな表情が大人の印象を演出します。

繊細なイメージのある羽毛は、実はとても丈夫で、適切な処理をすれば100年以上は繰り返し使用できる天然素材であると言われています。羽毛の提供源である水鳥は、ダウンジャケット1着あたり10羽から15羽ほど必要になるため、食肉の需要や生態環境によって大きな影響を受けてしまいます。しかし、「グリーンダウンプロジェクト」が羽毛のリサイクルを推し進めることで、ゴミを減らし、安定した供給を行うのです。

画像 どちらもウィメンズアイテム。肩まわりを華奢に仕上げ、フードや裾まわりのダウン分量を多く調整した立体的なパターンによりフェミニンな雰囲気に。着脱可能なフードを取り外すと印象が軽くなり、ラフなスタイルにもマッチします。

画像 ウィメンズアイテムには、長く使い続けるための洗い方のコツやステップを記載した「ウォッシュタグ」が付属。

それは、ゴミの焼却で発生する二酸化炭素の削減や、リサイクルを行う工場での雇用の拡大など、環境にも社会にもポジティブなインパクトを与えます。この良い循環は、ダウンアイテムを利用する消費者や企業が協力することで加速していきます。〈GLR〉もまた、賛同の輪を広げるために、多くの「グリーンダウン」のアイテムを取り揃えています。

PROFILE

Green Down Project

Green Down Project

https://www.gdp.or.jp/

河田フェザー株式会社

河田フェザー株式会社

創業130年を超える日本唯一の羽毛専業メーカー。安心安全で高品質な羽毛を精製するため、環境や技術、品質へのこだわりを追求し続けています。
http://kwd.jp/

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