

クラークス|スニーカー以上・ドレスシューズ未満の “ ちょうどいい靴 ”|知っておくべきブランド
いくら直幸
2025年に創業200周年、現存するシューズブランドでは最古級の<クラークス(Clarks)>は、決して色あせないスタンダードであると同時に、今また活況を迎えている稀有な存在です。時代を超えて輝き続け、老若男女に愛される理由を、歴史や代表作とともに深掘りします。
<クラークス>と<オリジナルズ>
革新性が生んだ、ほかにはない快適性

濡れない・蒸れないのゴアテックスと、軽量&滑りにくいビブラム社製のトレッドラバーソールの採用により、全天候対応へと進化した「ワラビーブーツゴアテックス」。
やがて工房は、ルームシューズだけにとどまらない靴メーカーへと発展。'56年にはアッパーとソールを縫い合わせる専用ミシンを世界で初めて開発。'62年には世界初となるソールカットマシンも発明し、いっそうの量産化と品質の安定化を実現します。また'83年、足の健康を第一とする企業理念のもと、足形に沿うよう設計されたシリーズを発表。これは史上初めて人間工学的な見地を取り入れた靴とも言われています。さらに1913年、独自の防水レザーを採用したファッショナブルなレインシューズ&ブーツを販売し、おしゃれな女性の必須アイテムに。これら後世の靴産業に大きく貢献する数々の技術や商品を生み出し、その革新性と快適性で着実に成長を遂げていったのです。
“ 履く ” ではなく “ 包む ” という哲学

70年以上も基本構造を変えていない、いや、変える必要がない完成された名作である「デザートブーツ」。デザートと言わず、足元のメインディッシュとして活躍する。
かくしてデザートブーツは、ドレスシューズでも作業靴でもなく、はたまたスポーツシューズでもない、それらの中間となる新カテゴリーを開拓。のちに確立されるカジュアルシューズの元祖となり、現在までに累計4,000万足以上が販売されてきました。
そしてデザートブーツと双璧をなす「ワラビー」の誕生は'66年のこと。お腹の袋で赤ちゃんを育てる有袋類のワラビーから命名されたモカシンシューズは、足のほとんどを一枚革でスッポリと覆い、甲に蓋をした袋状のアッパーが特徴です。足が優しく包み込まれる感覚があり、デザートブーツと同じく適度な弾力性と反りのいい天然ゴムのクレープソールが相まって、極上の履き心地が叶えられています。

「ワラビー」には紹介のローカットのほか、アンクル丈の「ワラビーブーツ」もあり。多彩なカラーと素材が用意されているなかでも、このメープルスエードが最も象徴的。
名門が特別にあつらえた上質スエード
また覚えておきたいのが、正しいサイズ選び。スニーカーなど一般的なシューズは靴の外側の全長に基づいた外寸表記が主流ですが、同社は内側から算出した内寸での表記です。そのため作りが少し大きいので、手持ちのスニーカーより0.5~1cm小さめを選ぶことが公式で推奨されています。オンラインストアでの購入など、試着ができない通販ではご注意を。
加えて気をつけたい点がもう1つ。世間では類似する他社製品もデザートブーツやワラビーと呼ばれがちですが、これらは<クラークス>固有の商品名です。一般名のように親しまれるほど広く知られている証ではあるものの、今後はお間違えなく。
200周年を目前に過去最高の売り上げ

ファッションライター いくら直幸
人気アパレルメーカーのPRを経て、1990~2000年代に絶大な影響力を誇ったストリートファッション誌『Boon』の編集者に。現在はメンズ雑誌&ウェブマガジンをはじめ、有名ブランドや大手セレクトショップのオウンドメディアにも寄稿。近年はYouTube番組への出演、テレビ番組のコーディネート対決コーナーで審査員を務めるなど活動の幅を広げている。